僕らが子供のころの遊びといえば、男の子はチャンバラごっこだった。家の前か路地で大きな声を出して相手に対して 棒などでやっつける遊びだった。むろんゲームではない。あまりきつくたたくと泣き出す仲間もいた。みんなかわいかった。 今、そんな子供の姿は見たことがなく、何をして遊んでいるのか、さっぱりわからなくなった。
ところが最近の新聞にいい大人がチャンバラごっこをしているとのニュースが載っていた。しかもれっきとしたルールを持っていて、 スポーツに位置づけ得られているのだ。これを「スポチャン」いう。つまりスポーツ・チャンバラの略で、むろん日本が発祥だ。 武器を得物といい、ゴム性で空気を含ませ、小太刀(全長60cm)、長剣(100cm)、槍(210cm)などがあり、防具を被って闘う。
ゲームは相手の体のどこでもよいが、一撃したら決まり「一本」という。1分間一本勝負が基本。日本の武道の精神を取り入れ 「礼!」「はじめ!」で始まる。このサムライ文化は今や世界中に広がり、愛好者は日本を含めて65か国・地域におよび40万人が いるというのだ。
広がる愛好者が世界の場で戦えるようにと、「国際スポーツチャンバラ協会」まであり、目下普及に努めているようだ。 しかもこの協会は「日本体育協会」にも帰属し、全都道府県にも支部があっては活動しているとしった。私の住む札幌にも当然 あるのだろうが、どんな活動をしているのかは知らない。
まだ国体にはエントリーしていないようなので、おそらく日本チャンピオンが認定されていないのかもしれない。 11月6日、東京で世界選手権が開かれ、イタリヤ、インド、ロシアなど30か国・地域から約1300人が参加したようだが、大きな話題になっていない。
今、東京オリンピック・パラリンピックに向けて各界の思惑や疑念が錯綜して揺れているが、だれのための大会なのか、希望や期待よりも、 失望のほうが強くなる。そんなんにすっきりしないのなら、いっそ放棄してくれたほうがよほどすっきりする。アスリート・ファーストなら、 どんなに質素な施設であっても、プレーヤーが輝けるような環境であればよいのであって、施設の豪華さではない。 観衆も施設を見に行くのではなく、選手たちに注目したいのだ。
スポーツ・チャンバラはまだ市民権を得ていないようだが、もし20年オリンピック・パラリンピックが東京が開催されるのなら、 せめてエキシビチョンでもいいから世界から集まってゲームをやってくれると楽しいではないか。子どもも大人も大した力がなくても 楽しめるような気がする。スポーツこそ大衆文化の下支えをしているように思えるのだ。
やさしいタイガー