ことのはのはね~奈良町から

演劇、アート、短歌他、町家での出会いまで、日々を綴ります。

奈良町にぎわいの家~春日大社関連展 より

2020-11-20 | にぎわいの家・奈良関連
春日大社関連のイベント ほか 以下、三つ、ご案内します。

①奈良町にぎわいの家・町家美術館「春日大社ゆかりの品を身近に」 ~11/23まで 無料
 毎年、秋には、町家で伝統美術を間近に鑑賞できる企画を、地元の収集家の方のご協力のもと、3日間限定で開催します。今年は、2017年に続き、春日大社関連の展示、第二弾です。今年のみどころは、江戸初期の作「赤童子」。童子というので、子ども?!なんですが、中々、貫禄があり、まるで翁のようです。とにかく、良いお顔で、装身具もやたらとモダン。まるでロックバンドのギタリスト?!のように見えるのは私だけ?ぜひ、その素敵な姿をご覧ください。また、国宝の義経ゆかりの鎧兜を描いた、大正期の大和絵の和田貫水の作品は超エレガント!細かい模様を見ていると、え?ベルエポック?なんて思ってしまいます。三幅なので、迫力もすごいですよ。モダンな当館にぴったりの作です。チラシのデザインはそんな展示作品より、切り取って再構成して作ってみました。伝統美術展のチラシをデザインする時は、元々のフォルムがしっかりしているので、本当に意外な組み合わせなどが面白くて、デザインするのも楽しみです。



②春日大社国宝館 「芸能の美・杜園の心 ―奈良近代彫刻の名匠、森川杜園生誕200年にちなんで―」~12/13まで 一般500円
 毎年6月に、奈良町にぎわいの家で企画している、近代を代表する彫刻家、一刀彫の名人、森川杜園。その杜園の素晴らしい作品が堪能できる、貴重な機会が、この度の国宝館での展示です。とても見やすく、解説も親しみやすく、大きな会場ではないのですが、杜園ワールドがぎゅーーーっと詰まっていて、長い時間、見ておりました。中でも、高円宮妃久子樣所有の「根付」の素敵なこと…。色は鮮やか、表情は豊か…ずーっとそこにいたい感じでした。中でも能を題材にした「融」と「白蔵主」の空気はなんとも。それと奈良町の世界遺産、元興寺の古材から作った香合があり、その緑色の発色がよくて…などなど。今回は根付のような小さな作品の存在感がきわだっていました。当館の二軒隣が杜園の家でしたが、その能舞台から出た鏡板、たまたま、春日大社に運び出す時に立ち会わせてもらいましたが、この松の形がとても良いんです…。立派な額に入って、どーんと会場をまとめていました。奈良町のアーティスト、森川杜園の仕事を見られるこの機会、どうぞお見逃しなく!

③福音館書店発行 「たくさんのふしぎ おんまつり」
 福音館の本は子育て中、どれだけお世話になったことでしょう。読み聞かせのための絵本はかなり買いました。もう読まなくてもよくなってから、大人も楽しめる月刊絵本「たくさんのふしぎ」シリーズはとても好きで、数年にわたって購読していました。たまたま、書店に立ち寄ると、え?!「たくさんのふしぎ」が「おんまつり」を取り上げている!ということで、もちろん購入です。「おんまつり」は演劇という、芸能の一ジャンルに関わるものとしては、古い芸能の姿を残す祭りとして、とても興味のあるものです。絵本にも、「田楽」「神楽式」「猿楽」「大和舞」などが描かれていました。そして雅楽。当時の最先端のショーですよね。こうしたことが毎年、続いているのですから、奈良こそは、演劇の発祥の地といえるのではないでしょうか。



というわけで、春日大社関連、三つお知らせでした。近くに来られる機会あれば、コロナ対策しながらも、鑑賞いただけたらと思います。

「生物季節観測」のニュースから

2020-11-10 | その他
何気に深夜のニュースを聞いていると、「生物季節観測」が見直しされるとのこと。何のこと?と思って見ると、「生物季節観測」というのは、気象庁が各気象台で行っている、桜の開花した日や、つばめの初見などのことで、うち、動物に関しては全廃するという内容でした。
「生物季節観測」は昭和28年から始まったとのこと。動植物の初鳴きや開花などを、各気象台や測候所が観測、桜の開花や紅葉は天気予報とセットで知らされるので、ああ、春だな、秋だなと実感することも多いですね。こうしたポピュラーな植物の観測は残すが、動物に関しては全廃するというのです。現在、観測されている動物は、以下。(気象庁HPより)

あきあかね初見 あぶらぜみ初鳴   うぐいす初鳴    えんまこおろぎ初鳴  かっこう初鳴    きあげは初見
くさぜみ初鳴   くまぜみ初鳴     さしば南下初見   しおからとんぼ初見  つくつくほうし初鳴  つばめ初見
とかげ初見   とのさまがえる初見  にいにいぜみ初鳴  にほんあまがえる初鳴 にほんあまがえる初見  はるぜみ初鳴
ひぐらし初鳴   ひばり初鳴     ほたる初見    みんみんぜみ初鳴  もず初鳴      もんしろちょう初見

「初鳴」「初見」が動物の後につくと…人が見て、聞いているのだという実感がわき、なんだかその見聞きしていることに愛情を感じてしまいます。自分のことをふりかえっても、中々、季節の移り変わりに敏感でない暮らしですから、こうした生きとし生けるものの声や姿を見て、観測してくださる方がいるということに、感謝したくなります。ところが、こうしたことも本日のニュースが流れるまで、その実情も知らず、真剣に考えもしなかったのですから、本当に自分の意識の低さに唖然としてしまいました。
はっきり言って、このニュースは、かなりの大事件?!のはずです。それは、文化的な側面と科学的側面、どちらからもです。日本の文化は、自然と共に育まれたことは言うまでもありません。四季が訪れる美しい風土から生まれた、歌も絵画もデザインも…その創造の源泉に木木や動植物、鳥獣虫魚がいます。一方、戦後の経済発展以降、現代まで、初見や初鳴がズレたり、見られなかったりした動物もいることでしょう。その観測の変化こそが、自然の状態がおかしいぞ、というシグナルにもなり、地球温暖化による影響を語ることにもなるのでは、と思います。
このような大事な観測を、自然の一つである「人」が行うということの、美しさと意義。気象庁の予算は緊縮を迫られているとも言われているそうですが、気象災害が多い中、更に役割は重要となるでしょうし、それと同時に、こうした日本の気象台ならではの、目で見て耳で聞く観測の姿を、もっとも素晴らしいこととして、発信すべきではないかと思います。
といっても、今頃、その現状をニュースで知って大変だ!なんて言ってる自分に、なんとも…です。
このニュースが何気に流れ、「ふーん」で過ぎてしまう現代…。
最後に、短歌の師、前登志夫の歌集『鳥獣蟲魚』から。

けだものの歩める跡にくれなゐの紅葉散りけりこともなきかな