LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

CINEMA 100 SPECIAL(3)

2006-02-08 | TV APPEARANCES
1995年にN●K・BSで放送された特別番組
『シネマ100スペシャル~フランス映画は大人のテイスト』より

パリ北郊ヴァルドワーズ県にあるジャン・ギャバン記念館より
アラン・ドロンがギャバンとの思い出についてコメントするシーンより、
彼の言葉をそのままここに掲載いたします。

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(展示品に向かって)あれは『地下室のメロディー』です。
映画の中でジャン・ギャバンが着ていたレインコートです。
この写真は映画の中のワン・シーンです。
これはもちろん私の人生、私の仕事にとってとても大切なものです。
ギャバンと初めて仕事したときの物ですから。

彼とはじめてあった時の事は今でもありありと覚えています。
場所はプロデューサーの事務所で、約束の時間は11時でした。
時間通りに事務所について中に入っていくと、
そこにギャバンともう一人と、そして脚本家がいました。
私が入っていくと彼らは一斉に立ち上がりました。
ギャバンは帽子を取ってこう言ったのです。

“初めまして、ムッシュー。”

あぁ、何とあのギャバンがこの私に“初めまして、ムッシュー。”と挨拶してくれたんです。
私はそんな風に挨拶されるなんて予想をしていなかったし、とても嬉しくてとまどってしまい、
ただ“初めまして、ムッシュー・ギャバン!”と答えるだけで精一杯でした。

これが私とギャバンとの初めての出会い、私とギャバンの物語です。
1962年のことでした。

ジャン・ギャバン、彼は本当に特別な俳優でした。
でもそんなことは分かっているぞと言う皆さんの呟きが聞こえてくるようです。
私はそうした彼と共演するチャンスに恵まれた人間のうちの一人です。
しかも3回もその機会に恵まれたのです。

最初の作品は1963年の『地下室のメロディー』で、
次はリノ・バンチェラも共演した『シシリアン』で、
そして最後は『暗黒街のふたり』です。

ジャン・ギャバンと共演すること、
それはテニスのビッグ・タイトルを持つチャンピオンとテニスをするようなものでしたね。
あんなに強烈で、濃密で素晴らしい才能、
彼と演じるときは彼に耳を傾けて、彼に答える、それだけで十分でした。

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コメントの中身とは別にこのシーンでのアラン・ドロンの立ち居振る舞いに私は注目します。
番組の中でそれまではリラックスした態度で自分の作品について語っていた彼が、
ここでは姿勢を正し、腕を前に組んで故人であるギャバンに対して敬意を表しています。
きっとベルモンドや他の俳優ならもっとリラックスした物腰でこのシーンに登場する気がします。

このドロンが見せる諸先輩方への「敬いの態度」や「礼儀正しさ」が、
そのようなものを重んじてきた日本人の心の琴線に大いに触れて、
日本での人気が沸騰した大きな要因になったのではないかと思います。

そして外国人であるドロンのこういった「日本的」といえる姿勢を見ながら
当の日本人である私が無意識に見習わされていることに日々気づくのです。
こういうドロンの魅力というものが日本で再評価されれば、
少しでも今の日本人が置き去りにしてきたものを思い起こすいい機会になるのでは
と思う今日この頃です。

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