ドロンさんとの遭遇記録はまだ続いていきますが、
いったんここで、一休みし、
舞台『マディソン郡の橋』を今回はご紹介します。
(少しネタバレを含みますので、これから舞台をご覧になる方はご注意下さい。)
基本的な設定は原作、映画と同じで舞台もアメリカです。
フランスに舞台を置き変える脚色は施されていませんでした。
ミレイユ・ダルク演ずるフランチェスカの住む家の中が舞台の大半を占めており、
(添付の画像は舞台のパンフレットからのもので、そのセットです。)
屋根つき橋で二人が愛を育むという場面は出てきません。
ただし幕間に下りてくる緞帳にあの屋根付き橋が描かれており、
劇中の日時をその上にスポットで浮かべて、物語の進行がわかるよう工夫されています。
セットはこのフランチェスカの家の中以外に、
キンケイドがフランチェスカに町から電話を掛けるシーン(ここで大きな仕掛けがあります。)、
キンケイドとフランチェスカが別れていく家の外側のシーン、(ブランコが重要な小道具)
そしてもう一度二人が再会するも、キンケイドが彼女の元をあきらめて去っていく
“ADEL'S PHARMACY”の店内でのシーン、
と4通りあります。
これらは全てアメリカの牧歌的な風情を観客に感じさせてくれる美しいデザインで、
そこに昼夜の区別を付ける様々な角度からの照明による効果を組み合わせることにより、
まるでエドワード・ホッパーの絵画の上を主人公たちが生きているような、
一種独特な空間美を創造することに成功しています。
また映画でも印象に残った音響効果ですが、
舞台でも開巻より耳に響いてくる虫の声や犬の鳴き声など
映画版を忠実に踏襲しようとしているのが感じ取られ好感を持ちました。
さらに重要なファクターとなる音楽ですが、
ここでも映画版と同じくアメリカのスタンダード・ナンバーが数多く使用されています。
イーストウッドの選曲によるものと思われる映画版での音楽は
主にジョニー・ハートマンとダイナ・ワシントンの黒人ブルース曲中心でしたが、
舞台版では統一感は保ちながらも選曲の幅はバライティーに富んでいました。
さて俳優たちの演技ですが、
意外に感じたのがミレイユ・ダルクの熱演です。
映画版でのメリルのしっとりとした演技に比べ、
情熱的で感情を爆発させる独自のヒロイン像を彼女なりに創造しているように感じました。
あっと驚くサプライズ演出もあり、そのときは場内も騒然とします。(ヒントはOZMA)
さすがに彼女も連日の熱演で疲れていたのでしょう。
私たちが3回目に鑑賞したときは、
キンケイドが去って彼女が嗚咽するシーンではゴホゴホと咳き込んでいらっしゃいました。
最後にドロンさんの演技について。
出で立ちは“LE LION"での彼に近いものでした。
首元に巻いた赤いバンダナが正にあの作品と同じもので、
舞台では重要な小道具として使われています。
また後ろの髪を長く見せる為、部分的に付け毛をしています。
どちらかと言うとミレイユさんの情熱的、攻撃的な演技に対して、
ドロンさんのそれは受身の立場で終始一貫しており、
私が好きな『聞く演技』を十分堪能することが出来ます。
(これより下線部までネタバレありますのでご注意下さい。)
とは言っても物語の押さえどころはやはりドロンさんの独壇場で、
映画版には出てこないキンケイドのフランチェスカへの遺書を自ら朗読するシーン、
あるいは亡くなってから亡霊として(と思われます。)、フランチェスカの家を訪れて
思い出の家の中をさ迷い歩くシーンなどはさすがにこちらの胸が熱くなります。
そして舞台のエンディングは「橋」が描かれた緞帳の前に現れる、
この作品全体のナレーター的な立場で登場するドロンさん自身(と思われます)。
上手から歩きながら登場したドロンさんは観客たちに語りかけながら、
この物語の終わりを告げて静かに下手へ去っていきます。
以上のように、これまでの二人の共演作品では観られなかった
ミレイユさんの動の演技とドロンさんの静の演技の対比が
今回の舞台の大きな特徴であったように感じます。
-----------------------------------------------------------------
最後に、これからパリに観に行かれるご予定の皆様へ。
失礼ながら、もし私たちのようにフランス語のヒアリングができない方は、
ぜひ前もって映画版をじっくりとご覧になって行かれるこをお薦めします。
そうするとセリフの内容も予測がついてより理解が深まることと思います。
いったんここで、一休みし、
舞台『マディソン郡の橋』を今回はご紹介します。
(少しネタバレを含みますので、これから舞台をご覧になる方はご注意下さい。)
基本的な設定は原作、映画と同じで舞台もアメリカです。
フランスに舞台を置き変える脚色は施されていませんでした。
ミレイユ・ダルク演ずるフランチェスカの住む家の中が舞台の大半を占めており、
(添付の画像は舞台のパンフレットからのもので、そのセットです。)
屋根つき橋で二人が愛を育むという場面は出てきません。
ただし幕間に下りてくる緞帳にあの屋根付き橋が描かれており、
劇中の日時をその上にスポットで浮かべて、物語の進行がわかるよう工夫されています。
セットはこのフランチェスカの家の中以外に、
キンケイドがフランチェスカに町から電話を掛けるシーン(ここで大きな仕掛けがあります。)、
キンケイドとフランチェスカが別れていく家の外側のシーン、(ブランコが重要な小道具)
そしてもう一度二人が再会するも、キンケイドが彼女の元をあきらめて去っていく
“ADEL'S PHARMACY”の店内でのシーン、
と4通りあります。
これらは全てアメリカの牧歌的な風情を観客に感じさせてくれる美しいデザインで、
そこに昼夜の区別を付ける様々な角度からの照明による効果を組み合わせることにより、
まるでエドワード・ホッパーの絵画の上を主人公たちが生きているような、
一種独特な空間美を創造することに成功しています。
また映画でも印象に残った音響効果ですが、
舞台でも開巻より耳に響いてくる虫の声や犬の鳴き声など
映画版を忠実に踏襲しようとしているのが感じ取られ好感を持ちました。
さらに重要なファクターとなる音楽ですが、
ここでも映画版と同じくアメリカのスタンダード・ナンバーが数多く使用されています。
イーストウッドの選曲によるものと思われる映画版での音楽は
主にジョニー・ハートマンとダイナ・ワシントンの黒人ブルース曲中心でしたが、
舞台版では統一感は保ちながらも選曲の幅はバライティーに富んでいました。
さて俳優たちの演技ですが、
意外に感じたのがミレイユ・ダルクの熱演です。
映画版でのメリルのしっとりとした演技に比べ、
情熱的で感情を爆発させる独自のヒロイン像を彼女なりに創造しているように感じました。
あっと驚くサプライズ演出もあり、そのときは場内も騒然とします。(ヒントはOZMA)
さすがに彼女も連日の熱演で疲れていたのでしょう。
私たちが3回目に鑑賞したときは、
キンケイドが去って彼女が嗚咽するシーンではゴホゴホと咳き込んでいらっしゃいました。
最後にドロンさんの演技について。
出で立ちは“LE LION"での彼に近いものでした。
首元に巻いた赤いバンダナが正にあの作品と同じもので、
舞台では重要な小道具として使われています。
また後ろの髪を長く見せる為、部分的に付け毛をしています。
どちらかと言うとミレイユさんの情熱的、攻撃的な演技に対して、
ドロンさんのそれは受身の立場で終始一貫しており、
私が好きな『聞く演技』を十分堪能することが出来ます。
(これより下線部までネタバレありますのでご注意下さい。)
とは言っても物語の押さえどころはやはりドロンさんの独壇場で、
映画版には出てこないキンケイドのフランチェスカへの遺書を自ら朗読するシーン、
あるいは亡くなってから亡霊として(と思われます。)、フランチェスカの家を訪れて
思い出の家の中をさ迷い歩くシーンなどはさすがにこちらの胸が熱くなります。
そして舞台のエンディングは「橋」が描かれた緞帳の前に現れる、
この作品全体のナレーター的な立場で登場するドロンさん自身(と思われます)。
上手から歩きながら登場したドロンさんは観客たちに語りかけながら、
この物語の終わりを告げて静かに下手へ去っていきます。
以上のように、これまでの二人の共演作品では観られなかった
ミレイユさんの動の演技とドロンさんの静の演技の対比が
今回の舞台の大きな特徴であったように感じます。
-----------------------------------------------------------------
最後に、これからパリに観に行かれるご予定の皆様へ。
失礼ながら、もし私たちのようにフランス語のヒアリングができない方は、
ぜひ前もって映画版をじっくりとご覧になって行かれるこをお薦めします。
そうするとセリフの内容も予測がついてより理解が深まることと思います。
もう一度みたいなあ-!
ドロンさんには何回でも会いたい!!!
チエイサ-さんの解説で、10日前を思い出しています。
何かとても懐かしい感じと言いましょうか、
何とも知れない不思議な感覚でしたね。
シナトラとチェット・ベイカーの曲については判別できました。
初日のドロン様と会えた時のこと、楽屋のこと、舞台のこと、すごい記憶力ですね。
私も舞台を観ながら、メモを取っていたのですが、あまりに達筆すぎて読めませんでした…。
チェイサー様のこのブログのお陰で、また堪能できます。有難うございます。
皆様ほど英語も分からないので、なんとお話してくださっていたかも、今知ったような状態ですが、感動は一緒です。
ただただ、チェイサー様の日記を読むたびに、感動で胸が熱くなります。
私は本格的に舞台劇というものを鑑賞したのは今回が初めてで、
静まり返った劇場の中でドロンさんとミレイユさんの会話だけが鳴り響いている
その瞬間瞬間は大変神秘的なものに感じました。
果たしてあれは現実だったのだろうかと今でもふと思うことがあります。
また舞台の上で二人が動き回る時のキュッキュッと鳴る足音も
とても印象に残っています。
勝手ながらブックマークにfpd様のブログを加えさせていただきました。
よろしくご了承下さい。