LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

MORT D'UN POURRI チェイサー(4)

2007-10-08 | THE 70'S CINEMA
フランス盤DVDのライナーノーツに、
この作品の製作にまつわる裏話が書かれていましたのでご紹介します。

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ジョルジュ・ロートネル監督の証言。

“確かあれは『Le Crocodile』という題名であったと思うが、
ルイ・ド・フュネスが主演する新作映画の企画に、
脚本家のミシャル・オーディアールと共に参加して、
二人で脚本を書き始めたときから物事が悪い方向に向かいだしていた。
当初私たちはプロデューサーが破産の危機に瀕しているなどとは全く予期していなかったんだ。
ルイ・ド・フュネスは私たちが書いた脚本を気に入らないと拒否しつづけ、
挙句の果てに私たちを雇ったプロデューサーが仕事を放り出して逃げてしまったのだ。

製作スタッフの一員であったという理由から私は法廷に呼ばれ、
自分の行ってきた仕事について説明しなければならなくなった。
私が裁判官の前に出廷したちょうどそのときに、
何とアラン・ドロンの顧問弁護士であるモアチという人物が突然法廷に入ってきて、
裁判官の耳元で二言三言ささやいたんだ。
そして瞬く間に私はこの破産した会社との関係から開放されたのだった。

この突然のどんでん返しの出来事から数時間後、
私はアラン・ドロンの事務所に招かれ、
映画『チェイサー』の企画に携わるようになっていた。
オーディアールもこの作品のプレ・プロダクションの後半にだけ参加した。”

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“もしこの作品が成功しなかったら、
私は俳優の仕事も映画製作の仕事もこれを最後にやめるつもりだ。”
アラン・ドロンは親しい記者にこう漏らしていた。
現実にこの作品への出資は半分しか集まっておらず彼は深刻な事態にあった。
彼はこれまでのキャリアで初めて資金難に陥っていたのだ。
実際この直前に主演した4作品では30万人の観客さえ集めることはできなかった。
それゆえアラン・ドロンは製作資金を全て自らの力で調達しなければいけなかった。

“『パリの灯は遠く』は『友よ静かに死ね』程度の観客動員しか達成できず、
『アルマゲドン』や『プレステージ』にいたっては大失敗だった。”
ドロンはこう“France Soir”誌に説明している。
“今度の『チェイサー』では私は新しい役柄を演じている。
筋書きもよくできているし、
何よりもたくさんの素晴らしい俳優たちに囲まれて演技をするのは今回が初めてだ。
これは大変居心地のいい経験であるけれども、それにかかるコストも膨大さ。
この『チェイサー』が成功するか失敗するかは多くのことに左右されるだろう。”

ドロンはこの映画のテーマである「腐敗」に大きく心を動かされた。
“私たちは今世紀に起こった、政治の「腐敗」だけでなく
あらゆる出来事に関しての「腐敗」について議論を交し合ったんだ。
そして正直であること、勇気を持つことこそが
「腐敗」に対処する最も有効なものだという結論に至ったんだ。
もっともそれらは現代では失われようとしているけれどね。”
ドロンはこういう観点に立って考えてみると
この映画は万人に受け入れられるものにはならないであろうと認識していた。
だが一か八か彼はよりリスクの少ないこの企画に乗り出したのであった。

“撮影の間中ずっとアランは資金的な苦悩に心を蝕まれていた。”
ジョルジュ・ロートネルはこう述懐する。
“彼は問題に直面すると突然かんしゃくを起こすんだ。
そうなると私はその暗雲が消え去っていくのを待つしかなくなるんだ。”
“その苦悩と言うのは主にプロデューサー・ドロンにとってのものではあったが、
俳優ドロンというのも必ずしも扱いやすい俳優というわけではなかった。”
そしてドロンが現場に来たときには全ての準備が整っている必要があった。
ロートネルはこう語った。
“撮影の合間に長い待ち時間があったりすると彼はいらだってしまうんだ。
「これは何だ?準備ができていないなら私がここに来る必要なんかないじゃないか。
私には無駄に過ごす時間なんて無いんだ!」ってね。”
“確かにドロンは直感的な俳優で、全ての力を1回の演技に集中させるタイプなんだ。
なので共演する俳優たちの演技がまだ不十分だなと感じるときは
私は彼らとだけでリハーサルをし、
彼らの演技の熱が高まったときに初めてドロンを呼ぶようにしたんだ。”

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