LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

BEFORE THE DEBUT IN JAPAN

2007-10-10 | THE MAGAZINES
このブログを初めて2年半あまり、
たくさんのアラン・ドロン・ファンの方々とお知り合いになれたことは
私にとってお金にも換えがたいかけがえの無い財産です。

今年の春、NHK・BSのドロン特集放映前の特別番組用の資料として
ドロンさんの初来日時の情報をお持ちの方はいらっしゃいませんか?と
このブログで呼びかけをいたしましたところ、
私よりも年長で、ドロンさんのデビュー当時からのファンであるという方から、
大変丁重なメールとお手紙を頂戴しました。
ハンドル・ネームを「舞輪」様と仰るその方から、その時に素晴らしいプレゼントが送られてきました。
ご本人の許可も得ておりますので、
今回は舞輪様からいただいたその貴重な資料をここにご紹介します。

1959年の映画雑誌(恐らく「映画の友」か「スクリーン」)の中で
映画評論家の故荻昌弘氏が当時試写会で見た
日本デビュー直前のドロンさんについて書き綴った素晴らしい文章です。

ちょうど先日スマスマにご出演されたドロンさんが
自分の(アクターとしての)演技についてや、デビュー当時について語った内容が、
今から約50年前のこの荻氏の文章の中に既に予言のように書き記されていることに
ただただ恐れ入るばかりです。

舞輪様、貴重な資料をお送りただき改めて感謝申し上げます。
誠にありがとうございました。

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「ききしにまさるアラン・ドゥロン」  荻昌弘

ききしにまさる逸品である。
まさにこれなら、「フランスにジェームズ・ディーン誕生」と詣われても、
さほど大ゲサな大ウソとは言いきれまい。
エラい奴が釣上りやがった、というフランス映画界の欣び、
飛んでもねえ敵が出やがった、というハリウッドの口惜しがり、
そして世界中のハイティーン映画フアンの雀躍ぶり。
眼に見えるようである。

フランスの二枚目、といえは、若いファンは誰しもジェラール・フィリップを想う。
あれだけの上背もなければ、繊細微妙な紳士の〝はじらい"にも縁の遠いドゥロンだ。
しかしこの青年には、古典的なジェラール・フィリップがついに持てなかった、
考えるより走れの現代の率直さがある。
づけづけ女性に押入って行く甘味がある。
黒く長いまつ毛がしっとり濡れてるところなぞ、
とんだクラシック二枚目の伝統を守りながら、
しかもその美貌のどこにも十九世紀の古さを止めてないのが、
心憎っくき活力である。

ジャン・クロード・パスカルをオートバイに乗せても似合うまい。
アラン・ドゥロンは、一口に言って、これこそ"単車でとばす"スタアの代表だ。
つまりはまだ子供なのである。
素肌へじかにナイロンのワイシャツを着て、
その上半身の線が、無垢のかもしかの硬さを想わせる子供なのだ。
そしてこの子供、特に表情の反応の早さがすばらしい。
長いまつ毛と薄青い瞳で、しかももしお面がのっぺりこわばっていたとしたら、
誰が今更、そんなレディ・メイドの甘さを買うものか。
彼のいのちは、先ずそのエネルギイが、
打てば響く神経で表情を豊かに彩ってるところにあるのだろう。

パリに生まれて、しかも両半球を股にかけた青春遍歴。
多くの人に会って、多くのことを学んだと自ら言う。
その〝動いて掴んだ″人生体験が、この二十五歳の青年には、
学歴派スタアにない雰囲気を、つけ加えているようだ。
昔だったら、心のかげ、といったようなもの。
しかしそれが〝暗さ″にならず、
何よりも〝行動″の感覚になって溢れてる点が、
さすがは一九五九年のスタアである。
特に演技の勉強もなく映画入りわずか二年で第一線にのしあがったのも、
単に幸運と美貌のおかげばかりとはいえまい。

待たれるのは次回作。いや、「お嬢さんお手やわらかに!」の前の
「クリスチーネ」が、既に日本の土を踏んでる筈だ。
人気が爆発しなかったら、それこそどうかしてる近来の掘出しものである。

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6 Comments

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汗顔のいたり (舞輪)
2007-10-11 08:22:52
チェイサーさま、私の提供したささやかな資料をこのような形で多くのドロンファンにご紹介いただきましてお恥ずかしい次第です。改めて読み直してみるとさすがに荻昌弘さんの慧眼ぶりを感じます。しかし、先日のsmap smapでのドロンとデビュー当時の彼とを比較するといい意味でも悪い意味でもその間に流れた時の多さをつくづく思い、わが身にも照らし合わせています。
返信する
Unknown ()
2007-10-11 13:23:11
チェイサーさん、そして舞輪さん
ありがとうございました。

先日のSMAPとのやり取り-
私よりはるかに年上のドロンさんですが、
よくぞここまで“成長”してくれたと思いながら観てました。(~_~;)
返信する
とても貴重な資料 (A T)
2007-10-11 14:06:19
読ませていただき、ありがとうございます。
表記などにその時代が感じられ、大変興味深い内容でした。

チェイサー様、(オフ会)こちらこそお世話になります。
よろしくお願い致します。
返信する
舞輪様 (チェイサー)
2007-10-11 20:21:37
このたびは誠にありがとうございました。
どのタイミングでこの記事をアップしようかと
数ヶ月間流れを考えていたのですが、
先日のビストロSMAPを見て迷わずここでと決めました。
荻昌弘さんの批評文は私も昔から一番好きでしたので、
この文章を読ませていただいて大変感動いたしました。

私もとうとう『チェイサー』の時のドロンさんと同じ年齢になってしまい
わが身の未熟さに反省することの多い毎日です。

これからもよろしくお願いします。
返信する
桂様 (チェイサー)
2007-10-11 22:35:37
>よくぞここまで"成長”してくれた・・・

自分のことは棚に上げて思わずうなずいてしまいました。
今日もまた映像を見直していましたが
SMAPのメンバーのまじめで誠実な振る舞いに
ドロンさんも満足されていたように感じます。

我が家では家内がドロンさんのリクエストに答えれるような?
ブイヤベース作りに挑戦しておりました。
結果は合格でした。
返信する
AT様 (チェイサー)
2007-10-11 22:44:54
>表記などにその時代が感じられ

確かに仰る通りですね。
「雀躍ぶり」=「こおどりぶり」
など現代では死語に近い表現かもしれません。

いただいた資料には他にも植草甚一氏、南部圭之助氏
の文章がありましたが、
いずれも古きよき昭和の時代を感じさせる名文でした。
返信する

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