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大腸癌、セツキシマブ、パニツムマブ投与前の遺伝子検査

2008-11-13 | 大腸癌
セツキシマブおよびパニツムマブは、種々の癌に関わる因子である上皮増殖因子受容体(EGFR)を抑制するモノクローナル抗体である。

研究者が昨年報告したところによると、セツキシマブ群は対症療法のみを受けた群に比べ生存期間が平均6週間延長したという。しかし実際に生存期間が延長したのは一部の患者のみであり、(略)ASCOでの報告以降、NCIはセツキシマブの臨床試験においてはKRAS遺伝子変異の検査を含めるよう変更している。欧州では、パニツムマブによる治療はKRAS遺伝子が正常な患者に限定されている。

正常KRAS遺伝子を有する患者では、セツキシマブ群は対症療法群にくらべ生存期間が約2倍となった(9.5ヶ月対4.8ヶ月)。無進行生存期間についてもセツキシマブ群は優れていた(3.7ヶ月対1.9ヶ月)。)一方、変異したKRAS遺伝子を有する患者では両群の生存期間に差がなかったことが10月23日付けNEJM誌で発表された。KRAS変異は腫瘍の42%に存在した。

共著者でオタワ大学のDr. Derek Jonker氏は次のように記している。「この結果は癌治療における大きな変動を反映している。過去、特にCO.17臨床試験において、われわれは数多くの患者を治療しながら効果は限られたものであったが、今、最も治療の効果が得られる患者を判別し、患者個々の癌の遺伝子組成に基づいたオーダーメイド治療が可能となりつつある。」(略)

BRAFなど他の遺伝子における変異も抗EGFR薬治療の効果を損なう可能性があると論説では触れられている。大腸癌の約15%では、癌と関連して、MAPK経路の一部を担うBRAF遺伝子の変異が見られる。

NEJMの記事が掲載された翌日、イタリアの研究者らも、BRAF遺伝子変異のある転移性大腸腫瘍にはセツキシマブおよびパニツムマブが奏効しないという同様の臨床試験結果を得た。変異のある患者ではこれらの薬剤が奏効しなかった一方で、奏効したのはすべて正常BRAF遺伝子を有する患者であった。

この臨床試験は113人の患者を登録して行われ、治療が奏効しない症例の30%にKRAS遺伝子変異があった。そのほか14%がBRAF遺伝子変異によるものだったが、奏効しない症例の半数以上は理由が不明であった。

全文は・・ 
NCIキャンサーブレティン11月4日号特別レポート


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