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CTスキャン増加が癌リスクを上げるー特に小児に注意(NEJM)

2007-12-05 | スクリーニング
何百万のアメリカ人、特に子供たちが、不必要に受ける危険なスーパーX線(CT)検査被曝により癌リスクが増加、診断でのCT使用がさらに増加していることに対するコロンビア大学からの警告が、今週号のNew England Journal of Medicine誌(原文)に発表された。この20年間の米国における癌の2%もがCTスキャンによって引き起こされていると著者は述べている。特に小児は放射線の影響を受けやすく、癌を発症しやすいためこれらの検査は避けるべきである。「著者らは全国民の健康への重大な問題に対して注意を喚起している。」と、米国放射線医学会(American College of Radiology)総長は述べた。「1個人に対する1回のCTからのリスクは小さいが、長期にわたって形成される全国民に対するリスクに我々は大きな懸念を抱いている。」

現在、米国人が受ける被曝総量平均は、CTスキャンの出現によって1980年代のほぼ2倍となった。うち、かつては太陽光や土壌のラドンなど環境からの被曝が主で、医療被曝によるものは6分の1だったが、現在は過半数を占めるようになった。同研究者らが2001年にこの発表をし、FDAはCTスキャンに歯止めをかけ、小児のリスクを抑えるよう勧告したが、その後も増加し続け、昨年米国で6200万件のCTスキャンが行われ、小児に対しては400万件を数えた。しかしながら、その中で3分の1の診断検査は不必要であったとされている。超音波やMRI検査は被曝がなく、より安全な方法である。

CTスキャンは比較的安価に苦痛なく、即座に詳細な3D画像を提供することにより一般的になった。医師たちはあらゆる症状に対して、即座に容易に診断がつくことから、特に救急の場でCTスキャンを多用する。しかし、それはかなりの放射線を放出する。通常X線検査が0.01~0.15 mSv、マンモグラフィーが3、歯科レントゲンが0.005であるのに対し、肺CTでは10~15mSvである。その数値は機械や担当技師によって異なり、太った人はやせた人に比べて多くなる。そして、その被曝量は一生涯積算されていくのである。(*注:全身CTスキャンについて/FDA参照)

「この国の医療は断片化されている。一人の医師がある患者について過去に3、4回のCTを受けたという事実をほぼ認知することはない。」「慢性腎臓結石の患者はたくさんの検査を受けるが、30年間に18回行った人たちを見た。彼らは放射線による癌リスクに曝されている。研究は原爆で50~150mSvの被爆を受けた日本人の癌リスクを基に行われているが、CTスキャンを数回行えばそれに等しい被曝となるのである。
この問題に異論を唱える医療組織も多いが、他の団体ではこのデータを尊重している。
「これは我々がもつ最高のエビデンスである。」

アメリカ癌協会のスクリーニング長であるDr.Smith氏は、「将来の癌の2%はCTスキャンによるものであるだろう。高率である。しかし、癌は10~20年経って発症するため、その増加を見極めるのは難しい。」
「医師と患者双方は放射線リスクについてもっと認知すべきであり、オープンに話し合うべきである。」

「我々は、今回の調査の際、いかに医師ら、特に救急医らがCT検査の放射線被曝量やそのリスクについて把握していないかに驚愕した。」と、著者は述べる。
別の研究では、逆の観点からの問題を露呈している。10人のうち3人の親たちが、放射線リスクの話を聞いても、我が子に経過観察ではなくCTスキャンを受けさせると主張したという。即答を求めて、親たちが望んだのである。

我々がCT検査をオーダーするとき、大変なことだとは認識しないが、そう認識すべきである。これらの検査をオーダーすることは容易なことであり、回を重ねるごとにさらに容易になる。そしてそれが、見えないリスクをさらに押し上げていくのである。原文記事

参考:過去チップ「スクリーニング」Medscape「X線画像:患者・家族への警鐘2006」原文


4 コメント

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ちょっと待ってくださいね・・・ (くぅたろう)
2007-12-05 13:13:30
年間の自然被爆は2.4mSv
東京-サンフランシスコ間の被爆が0.038mSv
マンモグラフィーは、0.05mSv-0.15mSv
胃の集団検診が0.5mSvです
胸部の単純CTも0.5mSvと理解していました。

15mSvって、私が理解している被爆量の30倍なんですよね・・・。
う~む。
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はいー ()
2007-12-05 22:29:16
胸部単純CTと胃の検査が同じというのは・・・?
腹部CTが最も多くて通常の肺X線の300倍~500倍と認知しています。PETもCTと同じ程度の被曝だそうです。
歯科レントゲンが0.005というのはやはりその体積によるのでしょうね。腹部はかなり広いです。

http://users.rcn.com/jkimball.ma.ultranet/BiologyPages/R/Radiation.html

WebMDは号外の警告を出してました。
マンモを毎年受けると50年くらいは受けることになりますか・・・
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あ~わかった (ku_md_phd)
2007-12-06 00:44:47
私が見た資料が間違ってたみたい。
私が見てたのは、胎児がいた場合の胎児の被爆量が混ざってるみたいです。ごめんなさい。なんか混乱した。日本は特にCTが普及してるから気をつけないといけないってみんな言ってます。

でも、CTを撮らなかったから訴えられるという判例がどんどん増えていて、その辺りが難しいです。すごく難しい判断になりますね。

超音波やMRIは侵襲が少ないって簡単に結論つけるのは早すぎると思いますよ。

あとは放射線障害の防護のお薬なんかがもっと研究されれば良いかな~なんて思っています。
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日本では・・ ()
2007-12-06 13:36:19
数字に弱いので、どのくらいかの比較は提示できませんが、日本のほうがずっとCT普及率は高くて件数も多いはず。

>超音波やMRIは侵襲が少ないって簡単に結論つけるのは早すぎる

(私が書いたのではないわけですが)
そのような疑念ももちますが、放射線ほどは危機感はないので・・
最近目にする放射線防護の薬ーnuc pill、、、大変興味があります。
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