雑木帖

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「駐車違反」と「共謀罪」

2006-05-31 22:13:47 | 政治/社会
 明日から全国の270の警察署(全警察署の4分1の数。いずれは全国の他の警察署にも広げていくという)で1600人の民間人による駐車禁止違反取り締まり業務が始まる。この民間の委託によって、これまで200万件だった駐車禁止違反取り締まり件数が2倍の400万件になる予定だという。
 この「駐車禁止違反取り締まり」と「共謀罪」を一緒に考えてみると興味深い。

「都内では標識がなくても、何かしら違反になる場所がほとんどです」

 これは民間駐車監視員の資格者証を取得する講習で講師が言った台詞であることは前に書いたが、法律の条文というものをよく表している。
 これまで警察署員が駐禁の取り締まりで、チュークで印をつけてから10~30分ていどの”猶予”があったが、今度からは民間駐車監視員が駐禁の取り締まりに要する時間、5分ていどくらいしか時間がもらえない。しかも、民間駐車監視員は駐禁の取り締まりを本業とするので、次々と違反車両を問答無用的にアげていくはずだ。でなければ、仕事をサボるということになってしまうのだから。
 しかし、たとえば、宅配便が道路に車を停めて荷物を配達する数分間も許されない、引越しでトラックを家やマンションの前に停めることもあいまかりならん、なんていう常識は市民にはない。けれど、道交法の条文そのものからいけば、それは駐車違反であり、法律違反の犯罪なのである。
「共謀罪」だってそう。条文からいけば、居酒屋でのやりとりも犯罪を成立させる。しかも、冗談を言うたびに、「今俺は重い犯罪を犯している…」との認識を持たねばならなくなる(目配せ、まばたきも、アウトと衆院法務委員会において刑事局長が証言している)。冗談ではないが、これが法律が制定されるということの現実だ。

 次の記事は『SPA!』5月23日号の”「駐禁」取り締まりビジネス”という特集のなかの一節。たしかに、警察署員の退職後の仕事としてはうってつけのおいしい仕事かもしれない。

 なぜ警察業務を民間委託する必要があるのか。その背景とは?

 金銭的に、警察が駐車違反の取り締まりを強化するというのはわかった。
 だが、民間委託することで、違反は減るのか?今井氏は、「減らない」と断言する。
「ノルマはないことになっていますが、レッカー移動の委託業務が、年間の予定台数を決めて、それを基準に行われているように、駐禁の取り締まりも、予定台数を決めて取り締まると思います。そこで取り締まり件数を2倍にしたところで、たいした抑制効果は期待できない」
 ではなぜ警察は、業務を部分的に「民間委託」するのか?これも流行りの「官から民へ」の規制緩和の流れなのか?
 どうやら、問題はそんなに単純ではないらしい。警察事情に詳しいジャーナリストの寺澤有氏が、コトの本質を解説する。
「民間委託するのも、この時期に法改正したのも、ひとえに”警察職員の2006年問題”が理由です」
「警察職員の2006年問題」とは、高度経済成長期に警察が大量採用した団塊の世代などが、一斉に退職することから懸念される問題のこと。一般企業では、熟練社員の技術継承などが取り沙汰されているが、警察はちょっと事情が違うらしい。
「警察の場合は、OBの天下り先確保に必死。今後、約10年間は毎年約1万人の警察職員が辞めていくため、大量の受け皿が必要になるのです」
 ちなみに、警察OBの天下りは何も今に始まったことではない。パーキングメーターの管理や、違反車のレッカー移動などを担う「交通安全協会』は、幹部はもとより職員の大半が警察OBで構成されている。

 警察がOBの天下リ先確保に熱心な理由とは

 しかし、なぜ警察はこうも天下り先確保に熱心なのか?その真相を、寺澤氏は「警察の機密保持のため」だと言う。
「これまで警察は、表にできない違法行為をたくさんやってきた。その秘密を隠し通すために、OBを一人残らず、囲い込みたいのです」
 だが、囲い込もうにも既存の天下り先では、大量に退職していく「団塊の世代」を雇用しきれない。
 そこで、なかば無理やり「民間による駐車違反の取り締まり」という新たな天下り先をこしらえたのだと、寺澤氏は指摘する。
 しかし、警察の開示情報によれば、駐車違反の取り締まりを委託された民間業者は、正当なコンペによって入札をものにしているように見える。だが、寺澤氏はこれに異諭を唱える。
「落札した民間業者は警察OBが経営したり、天下ったりしている、いわば”警察ファミリー企業”ばかり」
 こうした”OBの受け皿”は、駐禁取り締まりの民間業者だけではない。今井氏は、「今後、警察は放置違反金督促状の発送や納付状況のデータ入カ業務なども”外注”できることが決まっています。おそらく、警察利権の温床である交通安全協会が受注することになるでしょう」と予想する。
 また寺澤氏は、「駐車違反はまだ”入り口”にすぎない。今後は、スピード違反など交通取り締まり全体を交通安全協会などに委託する可能性が高いでしょう」と付け加える。
 警察OBの天下り先をつくるため、そして天下り先にカネを回すために、民間委託という名のもと、警察業務が警察ファミリー企業に委託される。気づいたときには、さまざまな警察業務が、警察ファミリー企業で処理されているかもしれないのだ。
 そう考えると、今回の駐禁取り締まりの民間委託は、警察利権の拡大、警察ファミリー企業のビジネス拡大のための、新たな一歩と言えるのではないだろうか。

 共謀罪の今国会成立断念 (日刊スポーツ 2006/05/31)

 政府、与党は31日、「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法の改正案の今国会成立を断念した。小泉純一郎首相が自民党本部で武部勤幹事長らと会談し、会期延長しないことを確認、「次の国会できちんと仕上げるよう野党と段取りを付けるべきだ」と、同改正案を継続審議とし、秋の臨時国会で成立を期すよう指示した。

 政府、与党は既に教育基本法改正案と社会保険庁改革関連法案の成立を断念。重要法案は軒並み継続審議となり、衆院で3分の2以上の議席を持つ「巨大与党」も国会運営では主導権を握れなかった格好だ。

 組織犯罪処罰法などの改正案は、衆院法務委員会で実務者の修正協議を続けているが、野党の反発が強く、まとまる見通しは立っていない。

 共謀罪は、2000年に国連が採択し政府が署名した「国際組織犯罪防止条約」が参加国に創設を求めた。政府は03年の通常国会に関連法案を提出したが、野党の反対で継続審議や廃案を繰り返し、3回目の提出となった昨年の特別国会でも継続審議となっていた。

 与党は今国会で共謀罪の適用団体を明確にするなど2回にわたり修正案を提出、民主党と歩み寄りを図ってきた。衆院法務委員会で強行採決も検討されたが、政府が最重要法案と位置付けた行政改革推進法や医療制度改革関連法案の審議への影響を考慮し、修正協議を続けていた。

 政府、与党はこのほか北海道道州制特区推進法案も継続審議とすることを決めた。


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2 コメント

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Unknown (PhotoPierre)
2006-06-10 07:31:15
郵便集配車は郵便法に保護されているので、いつでも路駐オッケーです。

だから、エクスパック500だってゆうパックだって、郵便小包扱いなので、その集配に関わっているということならばいつでもどこでも路駐オッケーなわけです。

他の配達や集荷に関わるクルマは取締のねらい打ちにあっているわけですけれども、郵便ならば路駐放題。



いい世の中ですね。

郵便って。





もしかして、報道関係車両も道路使用許可無く路駐できるんでしたっけ。だれもそんな報道してくれませんので詳しく知らないことです。引越屋は路駐ダメですが。





ところで、自分の車で自分が駐禁切られてもしばらくすっとぼけていれば車検証上の「使用者」だか「所有者」に反則金の支払いが来るわけで、それまで待っていれば、同額の反則金を支払っても点数は引かれないということでちょっとお得感もありますね。

orz
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「適用除外」 (雑木帖@管理人)
2006-06-10 20:31:59
> 郵便集配車は郵便法に保護されているので、いつでも路駐オッケーです。



いわゆる「適用除外」ってやつで、『個人情報保護法』や『探偵業法』などでこの「適用除外」が話題になっても、いまいちよく感じがつかめないという人には、とてもわかりやすい例になると思っています。



郵便集配車の駐禁「適用除外」は、集配業務に駐禁を適用すると業務遂行がおこなえないことを証明しているようなもので、それでも郵便以外の配達業者は取り締まるという政府のサディスティックな恣意性を示しています。

もう一つ、「民間にできることは民間に」と言い、郵政公社を民間企業にした後、この「適用除外」がどうなるか。もし「適用除外」をそのまま持ち越すのなら、「民間にはできない」ことだったということを表明することにもなります。

とはいえ、ひどい法です。

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