読書録「バチカン奇跡調査官ゾンビ殺人事件」3
著者 藤木稟
出版 角川書店
p87より引用
“ 人間は、気を許した相手の前で大きなミ
スをしがちな生き物だ。二十一世紀になった
今でも、色仕掛けを使うスパイが一定の成果
を挙げているのがその証拠である。”
目次から抜粋引用
“チャイナタウン・ラプソディ
マギー・ウォーカーは眠らない
絵画の描き方
ゾンビ殺人事件(独房の探偵2)”
天才神父二人組を主人公とした、長編ミス
テリーシリーズの、他の登場人物たちが活躍
する短編集。全四編収録。
とある事件に関わった為、閑職に甘んずる
はめに陥った、FBI捜査官・ビル・サスキン
ス。部下とのやり取りの中、かつての忙しさ
を懐かしみ、髀肉の嘆に感じ入っているとき、
部下の携帯が鳴り響いた…。(チャイナタウ
ン・ラプソディ)
上記の引用は、自らの油断の危険性につい
て書かれた部分の一節。いわゆるハニート
ラップというやつでしょうか、金玉握られて
相手の言いなりになるくらいなら、立場のあ
る人は看板の上がっている所で遊んでほしい
ものです。
全四編の内、前半二編はこのシリーズと雰
囲気が違っているよな感じを受けました。
一見超自然現象と思われることでも、科学的
に最後に説明がつくのが好きなのですが…。
それに、映画の影響も強くあるような気がし
ます。
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読書録「バチカン奇跡調査官二十七頭の象」3
著者 藤木稟
出版 角川書店
p307より引用
“生まれて死ぬまで、冗漫な台詞が十もある
のは多すぎる。
私は、三つの簡潔な言葉で人生を理解してい
る。
生まれる。死に向かって歩き始める。そして
死ぬ。
人に定められた運命があるとすれば、たった
これだけだ。”
目次から抜粋引用
“伝説のはじまり
午前二時の聖母
交差点
象が一頭、二頭、三頭、四頭……
加速、加速、加速”
天才神父二人組を主人公とした、長編ミス
テリー小説。人気シリーズ長編第十三弾。
カンヌ国際映画祭最終日、にぎやかで華や
かな雰囲気とは裏腹に、賞の発表を待つ招待
客は社交用の表面を取り繕うことに心を砕い
ていた…。
上記の引用は、シェイクスピアの「真夏の
夜の夢」の一節。
本当は単純で簡単なことのはずなのに、無理
に複雑化することで、不当な利益を手に入れ
ようとしている人が多いのかも知れません。
ローレンを中心とした短編、「独房の探
偵」の面々が活躍します。ローレンの疾走に
ついても少し触れられていて、今後の大筋の
展開により含みを持たせる一冊ではないで
しょうか。
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読書録「バチカン奇跡調査官ジェヴォーダンの鐘」5
著者 藤木稟
出版 角川書店
p250より引用
“ 自分自身や親しい人の病苦や死、その悲
しみや未知なるものへの不安、そうした数々
の悩みや苦しみは、時代が変わってもさほど
変わらない。教会や聖職者に代わってそうし
た問題を解決する何かを、人々は求めたんだ。
”
目次から抜粋引用
“鐘は鳴る、奇跡の印として
鳥と聖母
謎多き道の始めに立ちて
悪しき霊らの為業
墓標と少女”
天才神父二人組を主人公とした、長編ミス
テリー小説。人気シリーズ長編第十四弾。
これから春を迎えようとしている、フラン
ス中央の小さな村。毎年恒例の山の祠での礼
拝で、決して鳴るはずのない祠の鐘が、高ら
かに鳴り響いた…。
上記の引用は、産業革命後の心霊学ブーム
に対する、主人公・ロベルトの台詞。
自分でどうしようもない時に、何かに縋りた
くなるのはよくあることなのでしょう。気を
つけたいのは、そういう人が弱っている時に、
つけ込もうとする人たちなのではないでしょ
うか。
オカルトと宗教と科学が上手く噛み合った、
私がシリーズ本来の面白さだと思っている部
分が強く戻った一冊。悲しくて切ない結末は、
ここ最近では一番だと思う作品です。
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