ある先生からこんな話を聞きました。
70代の女性。
歯が残り少なくなっていて、
入れ歯を作りましょう・・という話をしたところ、
入れ歯は絶対に嫌だと。
理由を聞くと、
知人のお通夜に出た時、亡くなったその方の顔が、
入れ歯を外されていたために口元がくしゃっとなっており、
それを見て、自分は死ぬ時も自分の顔のままでいたいから・・
死ぬ間際に病院でチューブとか入れるのに入れ歯が邪魔だから
とられちゃうでしょ。そのまま歯のない顔のままで死にたくない。
そういう理由で「入れ歯はいやだ」とのことです。
その方は最後にこうおっしゃったそうです。
「先生のように若い人にはわからないでしょうけど、あたしたちは死ぬ時のことを考えているのよ。」
亡くなった時にもちゃんと入れ歯があるようにすること。
そこに医学的な意味もなにもないかもしれない。
でも、そうしたちょっとした気持ちに応えていきたい。
せめて病院で入れ歯を外さなければいけなくなったとしても、
「最後はこの入れ歯を入れますから」の一言で気持ちが楽になる方もいらっしゃるかもしれない。
当社のサービスは「入れ歯」であるが、
我々自身が入れ歯を利用しているわけではない。
また、入れ歯をご利用の方が高齢の方が多いという現状の中、
我々がそのご高齢の方々と同じ時代を生きたわけではない。
そういう意味においても、我々は本当にお客様である入れ歯利用者のことを知っているのか?わかっているのか?と問われると辛い。
が、当社のコンフォートを利用して、元気になったと声を寄せていただいた皆様がいらっしゃるからには、一人でも多くの方にその元気を提供していきたい。
顧客の立場になれないサービス・・
正直辛いところはあるけれども、
こうしたちょっとした気持ち、ちょっとした言葉、ちょっとした望みに敏感に対応をし続けていくしか答えは出ない。そう思いました。