巣窟日誌

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「コロンビア人に豆」「黒人にスイカ」

2004-05-27 12:33:38 | 映画・小説etc.
昨日、ガルバンゾーの記事を書いていたら、突然、ある映画の1シーンを思い出してしまった。

リーアム・ニーソン主演の脱力映画『ガンシャイ』 "Gun Shy" (2000)の中で、コロンビア・マフィアが資金洗浄用の自分の金を「”豆”の先物投資に使われた」と、激怒するシーンがある。

この金を先物投資に使った自称ウォール街のブローカーは、「大豆だ。豆腐を作る豆なんだぞ。」といって、豆の高級感を説明し必死になだめようとするのだが、豆はコロンビアでは、赤貧のシンボル。資金洗浄用とはいえ、こんなものに投資してもらっては、誇り高いコロンビア・マフィアのメンツ丸つぶれで、周囲にも説得しようがない。何で彼らが怒り狂っているのか分からない周囲に対し、別の登場人物は、「コロンビア人にとっての豆」は「黒人にとってのスイカと同じらしい」と、説明していた。

本当にコロンビア人が豆に対してそのような感情を持っているかどうかはわからないが、アメリカ文化の中における、黒人とスイカの関係については、この映画の通りだ。

アメリカ文化の中には、「黒人はスイカが大好き」という、ステレオタイプ的な見方が伝統的に存在する。安いスイカに目がなくて、黒人をスイカを目の前に出せば、どんなに重要な仕事でも投げ出してスイカに食らいついてしまう… そんなマンガが、アメリカでは過去においては結構描かれてきたのだ。

映画 "Bamboozled" (2000) のポスターのまずい点の一つは、スイカを一緒に書いてしまったことだ。スイカそのものに罪はないが、アメリカではスイカと黒人の人種差別的結びつきがあまりにも強すぎるために、黒人とスイカを一緒に描いたり写したり、あるいは人種の異なる人間が黒人にスイカを出すことは、いまもってタブーらしい。(詳細はhttp://en.wikipedia.org/wiki/Watermelonの後半に書かれている "Watermelon Imagery" を参照のこと。)

「ニューズウィーク 日本版」は、日本人がアフリカン・アメリカンに対して差別的(あるいは、差別に対してあまりにも無知)であることを示すために、次のような記事を書いたことがある。

 4年前、人気バラエティー番組「SMAP×SMAP」に黒人女優のウーピー・ゴールドバーグがゲスト出演したときのこと。食べたいものを聞かれたゴールドバーグが「ソウルフード(伝統的な黒人料理)」と答えると、煮た野菜とフライド・チキン、そしてスイカが出てきた(アメリカ人なら、スイカが貧しい黒人を連想させる食べ物であり、タブーとされていることを知っている)。

「ニッポンは黒人が好き?嫌い?」 (ニューズウィーク 日本版2002年3月6日号 P.52より)


この記事を読んだアメリカ人や、アメリカ文化を知る他の国(もちろん日本も含む)の人間は感じてしまったのである。日本の「黒人差別に対する無知」という罪の存在を。

ちなみに、本当にゴールドバーグにスイカが出されたかは知らない。SMAPファンのわたしの友人がニューズウィーク日本版の件の記事を読んで、TV局に電話をかけて聞いてみたが詳細は不明だった。

さて、下の画像はマイクロソフトのOffice XPのクリップアートからいくつかを取り出したもの。黒人とスイカの組み合わせは存在しない。(右下は、「日に焼けた日本人の子供」でしかない。)次に黒人とスイカの組み合わせが出てくるときは、真の意味で差別がなくなったときだろうか。

なお、スイカといえば西洋では、左下側のような丸いスイカではなく、下真ん中のようなラグビーボールのような形が、パッと頭の中に浮かぶのが普通だ。
watermelons.gif