日伊文化交流協会

イタリアに関する色々なこと(旅行、料理、語学、本、映画など)を書いています。ブログをお持ちでない方のコメントも大歓迎!

DVD:『ローマ法王の休日』

2013年03月05日 16時05分11秒 | おすすめの映画
今年に入って、ブログが映画の話ばっかりになってますけど、去年、観に行かなくちゃと思ってて、見逃した『ローマ法王の休日』がDVDになってたので、早速購入。
配給会社の人って、映画賞の受賞作品にめっちゃ力を入れる傾向があるのと、(まぁ書籍でも同じかもね。直木賞受賞した瞬間、平積みになるし、帯もつくから)あと、一度でも大きな賞を受賞した監督作品は、日本でも公開されやすいと思います。
ってことで、ナンニ・モレッティの映画・・・


■映画:ローマ法王の休日(原題/Habemus Papam)
■監督/脚本/製作:ナンニ・モレッティ
■脚本:フランチェスコ・ピッコロ
■撮影:アレッサンドロ・ペシ
■音楽:フランコ・ピエルサンティ
■出演:ミシェル・ピッコリ/ナンニ・モレッティ/イエルジー・スチュエル/レナート・スカルパ/マルゲリータ・ブイ、他
■製作:2011年/イタリア・フランス合作映画/104分


ローマ法王の休日公式HP


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

《あらすじ》HPから抜粋

ローマ法王の逝去に伴い、バチカンでは、即座に新しい法王を選出するための教皇選挙(コンクラーヴェ)が開催される。新しい法王が選出されるまで、枢機卿たちは、システィーナ礼拝堂に閉じ込められ、3分の2+1票と言う得票数に達するまで、何度も投票が繰り返される。
野心あふれる枢機卿たちが、我に投票せよとばかり、圧力をかけたり、根回しするのかと思いきや、どの枢機卿も「どうか自分は法王に選ばれませんように」と必死に祈るのである。
その結果、下馬評ではまったく名前の挙がっていなかったメルヴィルが新しい教皇として選出される。
しかし、その就任演説を前に、サン・ピエトロ大聖堂に集まる群衆を見たとたん、メルヴィルは、その重責の重さに耐えかねて逃げ出してしまう・・・


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/



ってことでですね(ここからはネタバレあり)
なかなか出だしから、引き込まれる感じで、スタートしたんですが、すいません。またもやがっちゃん、どうもいつも評価が低くて申しわけないんですが、映画全体として考えたら、10段階のうち5かなぁ~
こないだの、刑務所の映画よりは格段によかったけど、正直ちょっと3000円も出してDVD買ったのはもったいなかった。

イタリア映画の特徴として、ハリウッドの超大作作品に比べ、回答を用意しない。と言うのがあります。
つまり、

あんたたち、自分で考えなさいよっ

みたいなね。どんだけ上から目線やねんっ。

いやまぁそれはいいとしてですね。
でも、考えるには要素がいるんですが、それが根本的に欠けてるんですよねぇ~

たとえば、

最初の投票では、まったく名前の挙がらなかったメルヴィルに、突然票が集まったのには、何か政治的な駆け引きがあったのかについての説明がない。

メルヴィルを落ち着かせるために、精神科医(ナンニ・モレッティ)が呼ばれるが、その後、彼が枢機卿を集めてバレーボールをするが、ものすごく唐突。

途中、劇団員のグループにメルヴィルが加わり、そのうちの一人が急遽入院し、メルヴィルが代役を申し出るシーンがあるが、その後突然シーンが変わり、観客は置いてけぼりに。


まぁとにかく、メルヴィルはローマの休日のように、一人の人間として、市井の人と交わるわけですが、ようやく戻ってきた結論は、


「できない・・・」


って・・・

いやまぁ、オードリー・ヘップバーンの「ローマの休日」みたいに、その日の出来事を一生の思い出として、あとは王女として、生きていきます。って言うような覚悟が持てなかったんだと思いますが、聖職者として、結婚をせず、家庭を持たず、バチカンと言う閉鎖空間のようなところで、過ごしていた人が、そういう覚悟が持てないとしたら、今まであなたは毎日何を祈ってたの?
って思うんですけどね~。

そのあたりの部分が掘り下げられることなく、モレッティ演じる異常にテンションの高い精神科医が、バチカンを引っ掻き回すシーンばかりが目立って、なんだかなぁ~
いっつも思うんだけど、ナンニ・モレッティと言う人は、監督と言うより俳優なんだと思う。
で、自分のやりたい役がないから、映画を自分で撮るっていうのかな。

で、バレーボールをした理由は、枢機卿たちが、毎日不眠に悩まされているのは、運動不足だから。と言う医者としての判断もさることながら、教皇の報道官が新教皇が逃げ出したのをごまかすため、部屋に中に人を入れて、カーテンを揺らしたりして、中にいるように見せかけていたので、一応周りは教皇が部屋に閉じこもってると感じている中、『天の岩戸』のように、中庭で枢機卿が騒ぐことで、教皇を引っ張り出そうと言う試みあるわけです。

でも、なぜバレーボール?!って感じだし(たんに、モレッティがバレーボール好きだから・・・?)そのシーンと、メルヴィルが実際はバチカンの外に出て、自分を見つめ直すシーンが交互で、かなりしつこい。(その割にルールと言うか、チーム分けが雑だし)
いやもうバレーボールはいいからさ。それより、メルヴィルが何を感じ、彼の中の意志がどのように固まったのかについてもっと掘り下げてほしかったです。


以前、モレッティ映画が大好きていうイタリア人と話していて、私はモレッティ作品は全般的にあまり好きじゃないけど、『息子の部屋』だけはすごく良かった。って言うと、そのイタリア人は、あれだけはモレッティ作品の中で超駄作だ。あの作品以外はすべていい。って言って、その価値観の違いに茫然となったことがありますが、これもどっちかと言うと、私の中では、合わない作品でした。
なんだろ、モレッティは俳優だ。と最初に書いたけれど、『息子の部屋』(この時も精神科医の役だった)はその役柄にはまっていたし、もう少し落ち着いていたけれど、この映画の中ではちょっと躁病の精神科医って感じで、この役が本当に必要だったのか?と思いました。

映画通の批評を読むと、この映画がわからないのはシロウトだ。みたいな意見もありましたけど、映画を見るのはほとんどがシロウト。わかる人がわかればいい。まぁ芸術作品と言うのはそういうものでしょうけれど、本当に力のある作品は、シロウトまでも飲み込むような気がするんですけどねぇーーー
映像と言うか、バチカン内では撮影できないのでそれをどうカバーするか?と言う意味においては、違和感なく楽しめました。



こちらはバルベリーニ宮殿内


現在フランス大使館として使用されている、ファルネーゼ宮の中庭。



こちらは、ローマとオルヴィエートの間に位置する、バニャイアと言う町にある庭園ヴィラ・ランテ。


まぁでも、2月11日にローマ法王ベネディクト16世が退位を発表したニュースは衝撃的だったし、その理由が、高齢で法王の職務の重責を果たせなくなった。ってことだから、やっぱり精神的なプレッシャーは凄まじいんだろうなと思います。
既に、新教皇の選出を巡っては、最大数の信者がいるといわれるの中南米、新興著しいアフリカ勢、歴史を伝統を誇る欧州勢の三つ巴だそうですね。また保守派とリベラル勢力の台頭もあって、すんなりとは決まりそうにないかも。
その意味で、この映画は(公開は2011年)なので未来を予言した内容であったと思うと、ちょっとすごいですね。
ちなみに、この映画の原題Habemus Papamはラテン語で『教皇決定』の意味だそうです。

でも、少なくとも、「僕やらない」って言う人はいなさそうな気がします・・・。

久しぶりに、ランキングに参加してみることにしました。

にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ  


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
結論は? (pallina)
2013-03-05 20:31:27
この映画飛行機の中で見ました。最後ご飯食べながらで私の集中力も欠けちゃったんですけど、確かに結論がわからないって感じでしたね。出だしは面白かったけど。

今回のベネディクト16世の辞任の時に随分この映画引き合いに出されましたが、根本的に最初から逃げ出すのと途中で辞めるのは違うのではない?と私は思いました。
次の教皇?またイタリア人じゃ無さそうですね。
pallinaさまへ (がっちゃん)
2013-03-05 21:27:27
>今回のベネディクト16世の辞任の時
>に随分この映画引き合いに出されま
>したが、根本的に最初から逃げ出す
>のと途中で辞めるのは違うのではな
>い?と私は思いました。

まさにおっしゃる通り。
たとえば、歩くのもままならなくなって尚、教皇であり続けるのを疑問視される前に、自分の意思で辞めるのはありなんだと思うのです。
だけど、この映画みたいに、最初から投げ出すのはちょっと理解に苦しみますし、権力闘争の象徴として、教皇の地位はずっと争われていたわけですし、そんなに誰もやりたくない。って状況ではないような気がします。
レポーターのとぼけた感じとか、笑いもあって、最初は面白かったのに残念です。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。