環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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東日本大震災:首相、出荷停止を指示(朝日新聞 朝刊)、電源復旧作業を再開(朝日新聞 夕刊)

2011-03-22 18:56:39 | 自然災害
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                              第6章の目次


誤解・曲解等の生ずる主な理由

 スウェーデン政府が国会に上程していたエネルギー政策案が1988年6月に国会で承認され、国のエネルギー政策ガイドラインが決まって以来、わが国の新聞、雑誌、テレビなどのマスコミでスウェーデンのエネルギー政策が取り上げられる機会が増えてきました。

 1988年6月から1989年10月までのおよそ1年半の間に、私の目に触れたものだけでもおよそ70点を越える記事や番組がありました。巻末にこれらの記事や番組のリストを掲げておきました。これらはいずれも一般紙、市販の雑誌、単行本、テレビ、企業の広報資料などが取り上げたものですから、エネルギー問題に関心を持つ方ならば一般の方でも容易に入手可能なものばかりです。この中には業界の専門誌、報告書の類いは含まれていません。データ・ベースの力を借りて調べれば、さらに多くの記事が見つかると思います。

 これらのマスコミに登場する記事の書き手の多くはジャーナリスト、フリーライター、技術評論家、エネルギー分野の専門家、経済評論家として積極的に発言している方々、原子力分野の専門家や技術者・研究者、関係省庁の担当者、企業や関連団体の原子力担当の技術者や原子力広報の担当者などで、一般の方々から見ればその道の専門家ということになるのでしょうが、残念なことに、彼等が書くスウェーデンのエネルギー政策(多くの場合、原子力の動向に関するものに限られていますが)に関する断片的な解説記事には、私の理解からするとさまざまな誤解、曲解、希望的観測、思惑、なかには意図的に一般の読者をある方向へ誘導させようとする試みではないかと思うようなものまであります。 

 その一例として、1989年2月14日付け毎日新聞の「提言」欄に掲載された国際原子力機関(IAEA)の前広報部長吉田康彦さんの投稿記事「原発推進は世界の大勢」があります。この記事のスウェーデンの記述に明らかな誤りと読者の誤解を誘いそうな箇所がありましたので、私は同年3月13日付け毎日新聞の同欄に反論を書きました。吉田さんの投稿記事と私の反論を図19に載せておきましたので、比較しながらお読みください。
 
吉田さんはスウェーデンに関する部分で、「1991年に再度国民投票を実施する予定である」と述べています。私は「吉田さんの1991年国民投票再開催説」が誤りであることを指摘しておきました。問題の1991年はすでに過去となりましたが、スウェーデンでこの年に国民投票が開催された事実もなければ、はっきりした予定も組まれておりませんでした。吉田さんの記述は明らかに誤っていたのです。吉田さんの問題の記事の中でスウェーデンに関する記述は17行ありますが、この記述は読者の誤解を誘うようなことばかりです。スウェーデンの原子力問題という共通のテーマに対して、私の理解と吉田さんの理解にはかなりの相違があることがおわかりいただけると思います。 

 また、吉田さんの投稿記事の中に「最近の世論調査では46%が2010年以降も原発継続を希望しており……」とありますが、この数字にもコメントしておく必要があります。後述する「原発に関する国民投票」の結果にも示されていますように、58%は「原発容認」に票を投じているのです。国民投票には「2010年まで」という原発の使用制限は付けられておりませんでしたので、58%の原発容認に投票した人々は2010年を超えて原発の寿命が来るまで使用するという考えに立っているはずです。ですから、この46%という数字は原発容認の58%と比較しても小さい数字であると言えます。さらに、図20-1・2に示しました「大事故を起こさずに原発を運転できる可能性」、「原発運転の是非」を見ても、チェルノブイリ原発事故の直後に一時的に不安は増すものの、常に、60~70%の人々は原発を“是”としているのです。




 したがって、「46%が2010年以降も原発継続を希望しており……」などという表現は初めてこの数字を見せられた読者には一見もっともらしく思われるかも知れませんが、ほとんど意味のない数字だといわざるをえません。

 意図的な誘導は別ですが、誤解・曲解などの生ずる理由は簡単です。わが国の関心事である「スウェーデンの脱原発」に焦点を合わせて、エネルギー政策の「原発の部分」だけを抜き出して報じたり、あるいは、わが国とスウェーデンでは社会システムや価値観にさまざまな相違があるという事実にもかかわらず、それらを考慮せずにスウェーデンから入手した情報を、全体像を見ずにその関心のある一部分のみを「ある種の先入観あるいは期待感」と「わが国の視点」あるいは「書き手自身の狭い視点」で分析しているからです。

 そして、多くの場合、それらの記事の執筆者がその道の専門家であるために、その解説記事がそのまま他の人の記事に引用されていくからだと思います。外国の代表的なジャーナリズムの解説記事も同様で、しばしば誤りが認められます。その理由はわが国と大同小異です。ですから、スウェーデンのエネルギー政策を分析する際にはエネルギー全体を広くとらえると共に、エネルギー政策が国の他の重要な政策と連動していることを理解し、その上で、「わが国とスウェーデンは異なった価値観の上に立つ工業国である」という認識を持つことが必要なのです。

 




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