中学校教師 生き残り術

平凡な中学校教師が、中学校現場の「小技」「知恵」「うまくいったエピソード」「失敗例」を紹介します。

(179)破損発生!落語「厩火事(うまやかじ)」から学ぶ

2009年11月11日 | 生徒指導
 生徒から窓を割ってしまったとの報告がありました。
 あなたは、次のうちのどの用に対応しますか?

  A: 割ってしまった理由を聞く。
  B: 破片などを片付け、応急処置をする。
  C: その他

 つい先日、窓を割ってしまった生徒が私のところに来ました。
 私は、破片を一緒に片付けながら、割ってしまった理由を尋ねていました。
 すると、私の学年のセンスのいいM先生が来ました。
 そして、こう言ったのです。

 「けがはなかったですか。」

 私は頭が下がる思いでした。

 表題の落語「厩(うまや)火事」はこういうお話です。
 夫に家を追い出された妻が、実の兄から2つのエピソードを聞きます。
 
 1つめのエピソード。
 孔子が留守中に、馬小屋が火事になりました。その火事で、孔子が大切にしていた白馬が死んでしまいました。弟子たちは、孔子に叱られることを覚悟で、馬小屋の火事と白馬の死を伝えました。すると孔子は弟子たちに、「けがは無かったか。」と尋ねたのでした。そして白馬のことをとがめなかったのです。
 
 2つめのエピソード。
 ある殿様が、一枚のお皿を大切にしていました。ある日、殿様の妻がその皿を持っているときに、足を滑らせて転んでしまいました。殿様は「皿は大丈夫か。割れていないか。」と尋ねました。皿は無事でしたが、その後奥さんの姿が見えなくなりました。奥さんは、殿様と離縁したのです。

 この落語では、兄は追い出された妻に入れ知恵をします。家に帰って、夫の大切にしているどんぶりを割ってしまいなさい。夫がどんぶりを心配したら、離縁しなさい。妻を心配したら、夫の愛情が分かります。さてその結果は・・・。落語CDなので、お楽しみください。(先日、公立図書館に故三遊亭圓楽師匠のCDがあり、「厩火事」の味わいある一席を楽しみました。落語もいい物ですよ。)

 話は戻ります。

 破損などがあった場合、まず「けがは無かったか。」と尋ねられる教師でありたいと思いました。
 次回、同じような場面があったとき、自分が生徒をいかに大切にしているか、問われるような気がします。
 
 もう一言。
 教師が人として自然にわき上がる感情を表出することも大切だと思います。
 私は「けがは?」と言えるようになりたいと思っていますが、破損を見てその不快感や腹立ちを生徒に対して表す人も必要だと思います。
 物わかりのいい教師だけでも、きっとよくないような気がします。
   

【中学校生徒会顧問 6】推薦責任者の責任 今回は厳しく指導中

2009年11月09日 | 中学校生徒会顧問
 いよいよ選挙運動が始まります。
 ポスター作りなどの活動が始まります。
 ある日、教室へ行くと、選挙ポスター作成で残った用紙が散乱していました。
 ポスター作りは、責任者、立候補者、そして応援グループのメンバーで書いたと思います。しかし私は、責任者だけを呼びました。
 責任者を私の前に立たせて、選挙運動のマネジメントの悪さを叱りました。実は、用紙の整頓だけではなく、別件で学級担任への相談もなく勧めていたこともあり、厳しい口調でしかりました。
 今回私は、責任者に名前の通り責任を負わせています。
 責任者に任命されたときに、選挙運動の推進、選挙のきまりの熟読、日程の確認、応援者の統率など、その任務について話しました。苦労も多いが、やりがいがあることも、そして立候補者者、学級、学校のためになる仕事であることも話しました。それだけの任務に耐えられる人材であるとの私の思いもありました。
 このようなスタートを切っているので、そしてそれだけの人材なので、責任者の責任を厳しく問うたのでした。
 
 責任者に責任を負わせる。
 当たり前のようですが、以前の私はここまで考えていなかったので、今日のトピックとして、書かせていただきました。

(178)忘れものをした生徒に報告させる

2009年11月08日 | 学級経営
 私の授業で、宿題や教科書の忘れ物をした生徒は、「○○を忘れてしまいました。」と報告させています。
 授業前に報告した生徒は、褒めます。
 教科書を忘れた生徒には予備の教科書を貸します。これは向山洋一氏の著書で読んだ方法です。(ごめんなさい、出典までは定かでありません。)予備の教科書は、神田S堂書店で購入しています。授業後、生徒が教科書を返却するとき「ありがとうございます。」と言える機会もあり、よい方法です。
 宿題を忘れた生徒には、依然使ったワークシートの残りの一枚を渡して、その場で学習させ提出させます。
 宿題を忘れたことを叱りません。
 しかし、宿題忘れが2回続けば、「どうした?」と尋ねます。
 3回続いたり、度重なれば毅然と叱ります。

 授業以外の提出物でも、忘れた場合は方向させています。
 報告の際、「どうしますか?」と尋ねます。
 生徒は「明日、持ってきます。」など、自分で次の行動を決めます。
 その生徒の言葉を、メモをしておきます。
 「明日持ってきます。」と言いながら、持って来なかった生徒に対しては、自分の言葉、決断に対する無責任さについて叱ります。

 この提出物を忘れた場合に報告する行為については、4月の生徒との出会いのうちに指導します。4月の段階で、初めて忘れ物が出たときに、忘れた生徒と全員に生徒に指導します。

 これで、私のクラスの提出物の状況がとてもよくなったというほどの方法ではありません。
 忘れ物をした生徒への指導で、指導する側が指導の仕方を思案したり、腹を立てたりして、余計なエネルギーを使わなくてすむ方法だと思います。
 ミスがあったら、報告、相談する行為は、子どもの社会化になると思います。
 報告をしなかった生徒に対しては、報告をしなかったことを叱ります。

 私自身、子どもの頃から提出物忘れが多かったです。だから、忘れ物に対して寛容なのでしょうか?

 今、この記事を書きながら気付いたのですが、地道にきちんと提出している生徒へを褒めることがたりないです。来週は、当たり前のことを地道にやっている生徒を褒めたいと思います。
  

【中学校生徒会顧問 5】学級から候補者を出す その2

2009年11月03日 | 中学校生徒会顧問

「【中学校生徒会顧問 4】学級から候補者を出す」の続きです。

(4)学級会
 学級担任主導で決めます。
 はじめに、生徒会長候補から選出します。
 副会長候補選出を同時にすすめませんでした。
 副会長候補だけが決まり、会長候補が空席の場合、私にはその局面のすすめ方が考えられないからです。
 また、「会長立候補は遠慮したいが、副会長なら立候補する。」という考え方が生徒間にある場合、またその考え方が広まった場合、会長候補を検討している生徒に対しては、マイナスになると思ったからです。

 まず、生徒会長立候補を待ちます。
 私の学級はこれまで学級長、宿泊行事の係長など、立候補者が出てくれる学級でした。
 私は「立候補したから、本人がやりたいから会長候補をお願いします。というわけにはいきません。」と話しました。
 ここ数年、能力や人望など自分を客観的に評価できていない生徒が、やるやると手を挙げることが増えているように思います。立候補を検討している生徒をさらに悩ませることになっても、言いました。
 立候補者は出ません。
 教室内はしーんとします。
 10分くらい、しーんとさせました。
 この時間が、立候補を検討している人にも、誰を推薦するか検討している生徒にとっても、ことの重大さを理解するうえで大切だと思います。
 「きっと、立候補をしようとする人は悩んでいる。自分は立候補できないけどと思っている人も、学級の大事な時間です。いっしょに悩もう。」と言いました。

 満を持して、次の活動をします。
 「今、考えていたことを一人一人言いなさい。
  『立候補を考えているが、自信が無い。』
  『○○さんがよいと思う。○○だからです。』
  本当に考えて考え抜いて、考えがまとまらなかったら、その気持ちを言いなさい。」
 教室の角の生徒から順に立たせて、一言ずつ言わせました。
 ここも真剣モードで言わせる雰囲気作りをします。
  
 影響力の大きい生徒の発言を受け、「私も○○さんがいいと思います」と多くの生徒が考えを流されることを心配していました。
 私は「私も・・・」と言った生徒に、「『私は・・・』と言いなさい」と言い直させました。
 今回は、多くの生徒が自分の言いたいことを言えたようです。
 「○○君が立候補してくれるなら、僕は推薦責任者になります」との力強い発言もありました。

 この段階で、推薦された生徒は3名に絞られました。
 3名の中でも、A君への推薦者数が多いように思います。
 しかし、この段階では、投票をしていたわけではないのです。
 一人ひとりの気持ちを分かち合っただけなのです。

 ここで、一度この会をとめます。
 生徒たちは自習や読書をして待ってもらいます。
 その間に名前の挙がった3人と面談をします。

 気持ちは個別に聞きます。
 そして3人を並べて、こう言いました。
 「大役なので、自信のないことはわかります。
  誰でも自信はない。
  でも、誰かがやらなければならない。
  このあと、学級内投票で決めたいと思う。
  私はこの3人なら、誰に決まってもこのクラスの代表として立派にできると思う。
  クラスの仲間が、あなたたちにやってほしいと願っています。
  自信がなくても、投票によって多くの生徒が後押ししてれた結果であれば、それを受けとめる覚悟をしてくれないか。」
  生徒たちは「はい」と返事をします。
  うなずくだけでは、ダメです。
  「○○さんはどうですか。」と問い、「はい」と言わせます。大事な瞬間です。
  私の話を続けます。
  「このあと、投票を行います。
   投票の前に、あなたたちに一言ずつ言ってもらいます。
   あなたたちの気持ちを言いなさい。
   自信がないのであれば、正直に言えばいい。
   くれぐれも、本気で推薦してくれた人たちを失望させるような言葉がないよう考えてください。」

  「○○委員長になりかいから、生徒会長にはなりません。」と言う考えを持っている生徒は少なくありません。文化祭や放送の委員長希望者に多いようです。気持ちは分かりますが、私はこのような考え方は好みません。このような考えの生徒を委員長にするつもりはありません。「誰かがやらねばならない。学校のために、仲間のために、全体のために、第一希望ではないけれど引き受ける。」このような気持ちになって欲しいと思います。
 この旨は、以前からの面談で話してきました。

 教室に戻り、名前のあがった3名が悩んでいることを語りました。
 そして彼らに一言ずつ言わせました。
 3人が「自信はありませんが、もし応援してくれるなら、立候補したい」といった旨の話をしてくれました。

 次に投票です。
 開票では、一人の生徒に立ち会ってもらいました。
 「先生に決められた」との疑惑をもたれないためです。

 そして結果発表は学級担任から。
 学級内選挙ではあるは、一人は当選し、2人は落選します。
 学級内選挙であっても、落選者は気を落とします。
 発表前にこう言いました。
 「この結果によって選ばれなかった2人もよく覚悟を決めてくれた。
  結果発表後に、選ばれた人に対し拍手を送ってくれるでしょうが、残りの2人にも温かい拍手を送ってください。」

 発表後に、3名の生徒を個別で呼び、悩んで決断してくれたことを褒めました。

 後日副会長も同じように決めました。

 学級長を決めるときにこれほど丁寧には行いません。
 生徒会長候補選出は特別です。

 読者の皆様の教室でも、候補者選出では様々なドラマがあったことと思います。

【中学校生徒会顧問 4】学級から候補者を出す

2009年11月03日 | 中学校生徒会顧問
 本日は、顧問の立場ではなく、学級担任の立場で書かせていただきます。
 学級から、立候補者を出す場面です。
 これは、学級担任、立候補を検討している生徒、周囲の生徒のいずれもエネルギーを使うことです。

 立候補者選出は、学級担任主導の指導であると思います。
 私はこのようにしました。

(1)生徒会選挙ガイダンス
 まず、10月初旬に学年集会会で生徒会係から選挙に向けてのガイダンスをしていただきました。ここで生徒たちは、各学級から立候補者を出すことを知ります。
 私は1年前から、学年集会や生徒会活動の折に、「○ヵ月後は、この中から生徒会のリーダーが選出される」「君たちが生徒会のリーダーになる」「自分が生徒会をリードする覚悟があるなら、今、学年生徒会をリードしなさい」などの言葉を生徒たちに投げかけていました。

(2)生徒会アンケート
 次のような項目のアンケート用紙を配布し、生徒に書かせます。

 ①平成○○年度(次年度)は、どんな生徒会にしたいか。
  (例)挨拶が響く○○中学校、地域に貢献する生徒会、歌声の響く○○中学校

 ②平成○○年度(今)の生徒会で、次年度も続けたい活動を書きなさい。

 ③平成○○年度(次年度)にあなたはどのような役職で生徒会に貢献したいですか。
  第一希望
   ○○○委員会・本部会(正副会長、書記)
   委員長、副委員長、委員  ○で囲みなさい。
  第二希望
   ○○○委員会・本部会(正副会長、書記)
   委員長、副委員長、委員  ○で囲みなさい。

 ④このクラスの中で、次の役職にふさわしいと思う人の名前を書きなさい。
   生徒会長
   副会長
   ○○委員長
   ○○委員長
   学級長

 このアンケートの記入は、真剣モードで書いてほしい。
 学級担任として、落ちついた口調で話し、相談なしとし、しーんとした中で書かせました。

(3)個別懇談
 上記アンケートで、立候補した生徒、推薦で上がっている生徒と懇談します。
 私のほうから立候補しなさいとは、言いません、
 「多くの級友が○○さんの名前をあげているが、(気持ちは)どう?」
 と問います。
 「学級担任から立候補するように言われた。」と生徒に受け取られたり、そのような噂が生徒間に流れると学級担任不信につながります。
 そのため、懇談の時、場所、内容には配慮します。
 実際、私の学級では、アンケートで立候補の意思を書いた生徒はいませんでした。

 長くなってしまいました。次号に続きます。