せっつんさんへのリコメで言及したものです。
「ア~ アァ~ あ~ あ~ あぁ~」
遠くまで聞こえてくる声の主はNさんという女性。
一度声を上げ始めると10分ではおさまらない。
その元気のよさ? に驚いてしまう。
発声に合わせて、両腕をバタバタさせる。
まるで、駄々っ子が暴れてでもいるかのように。
けれども、肩関節はすでに拘縮しているので、
動かせるのは肘関節だけ。
閉じた瞼には、いっそう力が入る。
初めて訪床したのは1年半前ころだったか。
仙骨部にできた褥創を診るためだった。
ナースがNさんに声をかけて触れたとたん
静寂が支配していた個室内に響き渡る声。
「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
こちらから何を言っても、まったく変化なし。
両腕のバタバタを抑えながら、身体を横向きにし
仙骨部にできた褥創に処置をした。
「ほら、終わったよ!」とナースが声をかけても
答えは同じ 「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
遠く離れた部屋で褥創の処置をしていても
ずっと聴こえ続けるNさんの声? 悲鳴?
「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
仙骨部の褥創があと少しになったころ、
鋭角に曲がったままに拘縮した左膝の血色が悪くなった。
どんどん悪化して膝頭全体の皮膚が剥離してしまった。
直ぐ下の骨が露出しそうな勢い。
さすがにこれにはラップではなく軟膏を使用。
今は上皮化してきたが、まだ本来の皮膚ではない。
右膝はといえば、Nさんには右膝がない。
右脚は、太もも中ほどで切断されているから。
カルテによれば
ASO(閉塞性動脈硬化症)にて別の病院で切断との記載。
一度、その断端部から膿が出たことがあったが、
ひどいことにならずに軽快した。
今は、毎週の回診はしていないNさんだが、
なにかがきっかけで上がる声はいつも聞こえる。
「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
バタバタだけはできる両肘。
動かない両肩。
太ももで切断された右脚。
鋭角に曲がったままの左膝。
当然、ベッド上での身返りさえ自分ではできない。
当然、自分では食べることも飲むこともできない。
だから当然、胃ろうが作られている。
カルテ1号用紙(表紙)の年齢欄には
二重線を引かれた数字が
82 83 84 85 86 と並び、
今、87歳だと示されている。
そうなんや・・・・・、
もう5年もここに居るんやなぁ・・・・・。
しっかり眼をつむったまま、Nさんの発する
「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
という、叫びに近い発声と
すべてを拒否するような両腕のバタバタは、
いったい 何を訴えている のだろうか?
そんなことを少しでも考えようものなら
無力感 と やるせなさが
こみ上げてくるばかりなのです。
「ア~ アァ~ あ~ あ~ あぁ~」
遠くまで聞こえてくる声の主はNさんという女性。
一度声を上げ始めると10分ではおさまらない。
その元気のよさ? に驚いてしまう。
発声に合わせて、両腕をバタバタさせる。
まるで、駄々っ子が暴れてでもいるかのように。
けれども、肩関節はすでに拘縮しているので、
動かせるのは肘関節だけ。
閉じた瞼には、いっそう力が入る。
初めて訪床したのは1年半前ころだったか。
仙骨部にできた褥創を診るためだった。
ナースがNさんに声をかけて触れたとたん
静寂が支配していた個室内に響き渡る声。
「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
こちらから何を言っても、まったく変化なし。
両腕のバタバタを抑えながら、身体を横向きにし
仙骨部にできた褥創に処置をした。
「ほら、終わったよ!」とナースが声をかけても
答えは同じ 「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
遠く離れた部屋で褥創の処置をしていても
ずっと聴こえ続けるNさんの声? 悲鳴?
「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
仙骨部の褥創があと少しになったころ、
鋭角に曲がったままに拘縮した左膝の血色が悪くなった。
どんどん悪化して膝頭全体の皮膚が剥離してしまった。
直ぐ下の骨が露出しそうな勢い。
さすがにこれにはラップではなく軟膏を使用。
今は上皮化してきたが、まだ本来の皮膚ではない。
右膝はといえば、Nさんには右膝がない。
右脚は、太もも中ほどで切断されているから。
カルテによれば
ASO(閉塞性動脈硬化症)にて別の病院で切断との記載。
一度、その断端部から膿が出たことがあったが、
ひどいことにならずに軽快した。
今は、毎週の回診はしていないNさんだが、
なにかがきっかけで上がる声はいつも聞こえる。
「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
バタバタだけはできる両肘。
動かない両肩。
太ももで切断された右脚。
鋭角に曲がったままの左膝。
当然、ベッド上での身返りさえ自分ではできない。
当然、自分では食べることも飲むこともできない。
だから当然、胃ろうが作られている。
カルテ1号用紙(表紙)の年齢欄には
二重線を引かれた数字が
82 83 84 85 86 と並び、
今、87歳だと示されている。
そうなんや・・・・・、
もう5年もここに居るんやなぁ・・・・・。
しっかり眼をつむったまま、Nさんの発する
「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」
という、叫びに近い発声と
すべてを拒否するような両腕のバタバタは、
いったい 何を訴えている のだろうか?
そんなことを少しでも考えようものなら
無力感 と やるせなさが
こみ上げてくるばかりなのです。