外科医 アンチエイジングに目覚める!?

目指そう サクセスフル・エイジング !

抗糖化 で 減らせAGEs 

炭水化物も要注意    

もしかしたら 悲鳴・・・・・

2010-12-08 13:50:03 | ひとりごと 医療系
せっつんさんへのリコメで言及したものです。




「ア~ アァ~ あ~ あ~ あぁ~」

遠くまで聞こえてくる声の主はNさんという女性。


一度声を上げ始めると10分ではおさまらない。

その元気のよさ? に驚いてしまう。



発声に合わせて、両腕をバタバタさせる。

まるで、駄々っ子が暴れてでもいるかのように。


けれども、肩関節はすでに拘縮しているので、

動かせるのは肘関節だけ。

閉じた瞼には、いっそう力が入る。



初めて訪床したのは1年半前ころだったか。

仙骨部にできた褥創を診るためだった。


ナースがNさんに声をかけて触れたとたん

静寂が支配していた個室内に響き渡る声。


「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」


こちらから何を言っても、まったく変化なし。

両腕のバタバタを抑えながら、身体を横向きにし

仙骨部にできた褥創に処置をした。


「ほら、終わったよ!」とナースが声をかけても

答えは同じ 「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」



遠く離れた部屋で褥創の処置をしていても

ずっと聴こえ続けるNさんの声? 悲鳴?


「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」




仙骨部の褥創があと少しになったころ、

鋭角に曲がったままに拘縮した左膝の血色が悪くなった。

どんどん悪化して膝頭全体の皮膚が剥離してしまった。

直ぐ下の骨が露出しそうな勢い。

さすがにこれにはラップではなく軟膏を使用。

今は上皮化してきたが、まだ本来の皮膚ではない。



右膝はといえば、Nさんには右膝がない。


右脚は、太もも中ほどで切断されているから。

カルテによれば

ASO(閉塞性動脈硬化症)にて別の病院で切断との記載。


一度、その断端部から膿が出たことがあったが、

ひどいことにならずに軽快した。



今は、毎週の回診はしていないNさんだが、

なにかがきっかけで上がる声はいつも聞こえる。



「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」

バタバタだけはできる両肘。

動かない両肩。

太ももで切断された右脚。

鋭角に曲がったままの左膝。



当然、ベッド上での身返りさえ自分ではできない。

当然、自分では食べることも飲むこともできない。

だから当然、胃ろうが作られている。



カルテ1号用紙(表紙)の年齢欄には

二重線を引かれた数字が

82 83 84 85 86 と並び、

今、87歳だと示されている。


そうなんや・・・・・、

もう5年もここに居るんやなぁ・・・・・。



しっかり眼をつむったまま、Nさんの発する

「ア~ あぁ~ ア~ あ~ アァ~」

という、叫びに近い発声と

すべてを拒否するような両腕のバタバタは、

いったい 何を訴えている のだろうか?



そんなことを少しでも考えようものなら

無力感 と やるせなさが

こみ上げてくるばかりなのです。




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1 コメント

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Unknown (せっつん)
2010-12-08 21:00:26
やるせないです それを目の当たりにする先生はどんなにか言うにいえないお気持ちか…言い方は悪いですが そうなると〔物〕ですね
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