外科医 アンチエイジングに目覚める!?

目指そう サクセスフル・エイジング !

抗糖化 で 減らせAGEs 

炭水化物も要注意    

抗加齢医学会の研修講習会 その5 最終回

2010-10-28 23:39:37 | アンチエイジング・ミニ講座

関連記事 :抗加齢医学会の研修講習会 その1

       :抗加齢医学会の研修講習会 その2

       :抗加齢医学会の研修講習会 その3

       :抗加齢医学会の研修講習会 その4




開始から5時間経過した講習会は、

京都府立医科大学消化器内科・内藤裕二先生の

 「活性酸素でみえてきた抗加齢医学の新展開

という講義で、いよいよ最後です。



わが国の死亡率の変化を考慮すれば、

健康寿命延伸対策で必要なことは、

悪性新生物と動脈硬化性疾患の予防対策
であること。


癌と動脈硬化性疾患には

共通の基盤病態が存在する可能性がある
こと。


肥満・脂質異常・糖尿病が その基盤病態だということ。


以上を基本認識として、

生活習慣病・加齢の原因としての

活性酸素・フリーラジカルの関与
に話題は移ります。



京都府立医科大学の消化器内科というのは

診療科目の再編成でそういう名前になったわけで

そもそもは第1内科でして、

「活性酸素」で有名な近藤元治教授が主宰されておりました。



「フリーラジカル・・・スーパーオキシド・・・」

そんな単語を授業中に幾度も耳にした記憶があります。

もっとしっかり聴いておけばよかったのですが、

もはや四半世紀も前の話です。




そのあとを継いだのが

日本抗加齢医学会理事長でもある現・吉川敏一教授であり、

「活性酸素・フリーラジカル」はまさに教室のお家芸ですから

内藤先生がこの話題を講じるのはしごく当然の話なのでした。


 



この図で示されるように

さまざまな原因から体内にフリーラジカルが発生します。


そのフリーラジカル


      脂質に過酸化反応

      DNA・核酸に酸化的損傷

      タンパク質に凝集・変性・不活化


もたらし、生活習慣病・加齢を引き起こす というわけです。



この流れを断ち切るための方策、

すなわちアンチエイジング対策が7つ紹介されました。




1つ目は、外因性のフリーラジカルを避けるということ。


 




このなかでも最大・最強のフリーラジカル発生剤は

 タバコ だといいます。


 

 


内藤先生、語気を強めてこう言いました。


ここまでアンチエイジングの話を聞きに来て

 タバコを吸っているようでは、話にならないですよ!




「そうだ!そのとおり!」と 遅まきながらも

昨年末に止めた筆者も、心の中で呟いたのでした。




2つ目は、カロリー制限

例によって、有名なアカゲザルの写真が示されました。



 


 




3つ目は、適度な運動

エビデンスとして確実に関連があるのは、

身体活動(運動)が結腸癌のリスクを下げるということ。


 



4つ目は、鉄の制御

インスリン抵抗性に関連があるといい

何事も過ぎたるは及ばざるが如しで、

血清フェリチン、トランスフェリン高値は

3年後の糖尿病発症の予測因子である とのこと。


 




5つ目は、食事性ファイトケミカル

果物や野菜に含まれる栄養素以外の機能性成分を

積極的に食事で摂取しましょう ということです。


 




6つ目は、抗酸化物質

積極的な摂取が推奨されます。


 




7つ目は、遺伝的体質を知る ということ。


これは 敵を知り己を知らば百戦危うからず 4
    http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/d1964b0987cbaa0becd36843a31fdbd5

 に書いた、飢餓遺伝子に関わる話題です。


 



おまけに示されたのは、

解体新書(1774年)で有名な杉田玄白の「養生七不可

現代においてこそ、重要な警句ではないかと思います。


 





抗加齢医学会の研修講習会 その4

2010-10-22 13:50:58 | アンチエイジング・ミニ講座

関連記事 :抗加齢医学会の研修講習会 その1

       :抗加齢医学会の研修講習会 その2

       :抗加齢医学会の研修講習会 その3




午後2番目は、

筑波大学大学院人間総合科学研究科運動生化学の

征矢 英昭先生による


 「運動による脳機能の活性化とホルモン作用


という講義。



運動によって高次脳機能が向上するということ。


これまで永らく、

神経細胞は死滅する一方だと考えられていたが

成熟した脳内でも

海馬・嗅皮質・新皮質で神経新生が確認されたこと。


それらを促進するのが、運動であること。


運動は、人生を通じて神経細胞を新しくさせ、

学習・記憶能力を高めるということ。


好んで行う運動や遊びは

アルツハイマー病の症状を軽減させること。


低強度運動のほうがより一層、海馬神経新生を促すこと。


などなどを示していただきました。


で、

問題は、楽しく続けることができる運動ということで、


そこで引き合いに出されたのが

好きな曲に合わせて身体を動かせばよいだけの


 フリフリグッパー体操


というものでした。



まず、足を肩幅にひらく。

左右の膝を、交互に、内側に。

そのとき、踵を浮かせます。

同時に、腰を振る。


これに合わせて、両腕の開閉運動を。


もう少し詳しい説明は、こちら → フリフリグッパー体操(解説)
                 http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1224738333807/files/furifuri.pdf


さらに、ちょっと、踵の上がるのが見えにくいですが

動画も見つけました。  フリフリグッパー体操!



征矢先生がおっしゃるには、

この体操に一番リズムの合うのが、

 藤山一郎さんの歌う 青い山脈 だとのことです。


これもYouTubeにありました。 こちらです。
               ↓ 
 懐メロカラオケ019 「青い山脈」お手本バージョン ♪ 藤山一郎

 http://www.youtube.com/watch?v=B2VGUEqmDnE


ちなみに、歌を歌いながらの場合には、

2番の歌詞中ごろで、息があがってきてしまいます。



抗加齢医学会の研修講習会 その3

2010-10-15 08:02:38 | アンチエイジング・ミニ講座

関連記事 :抗加齢医学会の研修講習会 その1

       :抗加齢医学会の研修講習会 その2




昼食の後に3つの講義がおこなわれました。

「見た目のアンチエイジング最前線」

これはお馴染み、近畿大学医学部奈良病院皮膚科の山田先生。


たとえば、

70歳以上の双生児1826名を追跡調査し、

外見的な年齢と寿命および加齢の表現型との関係を

検討したコホート研究の紹介(BMJ. 2009;339:b5262)。
Perceived age as clinically useful biomarker of ageing: cohort study

遺伝的に同じはずの一卵性双生児でも、

生まれてからの環境(過食・喫煙・運動の有無・紫外線など)で

年取って見えるほうが寿命が短いと。


ここでこれまたお馴染みのアカゲザルの写真。

 霊長類カロリー制限『Science』誌の掲載論文 アンチエイジング・ミニ講座 4





まぁ、彼らは双生児ではないですが

CRを行った左側と普通食の右側では

その差は一目瞭然というものです。



これ以外にも、いくつかのファクターについて話されましたが

ヘ~ッ!と思ったのが、顔のたるみの原因


なんと、骨粗鬆症が大きく関係するとのこと。


男性のレントゲン写真を示されたのですが、

80歳時点と83歳時点での下顎骨の幅が減少しています。


そう、頭蓋・顔面骨の骨粗鬆症によって

顔が骨ごと小さくなり、皮膚が弛んでくるのです



やはり女性は、骨粗鬆症への備えを怠ってはいけません!



そのほかにも

ビタミンD・ω3系不飽和脂肪酸・運動などにおける

見た目のアンチエイジングに関わる最近情報も取り上げられました。




HDL-C値が高いと発ガンリスク減少、LDL-Cが低いと発ガンリスク上昇

2010-10-08 08:35:28 | アンチエイジング・ミニ講座

一つ前のエントリーに関連する話題です。



高雄病院の江部先生のブログに


HDL-C値が高いと発ガンリスク減少、

LDL-Cが低いと発ガンリスク上昇



という記事が昨日アップされておりました。



リンクさせていただきます。


HDL-C値が高いと発ガンリスク減少、
LDL-Cが低いと発ガンリスク上昇


http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-1382.html




抗加齢医学会の研修講習会 その2

2010-10-07 21:16:56 | アンチエイジング・ミニ講座
2つ目の講義は、

東海大学医学部基礎医学の大櫛陽一先生による

メタボリックシンドロームへの考察」。


たいへんインパクトのある内容です。



今年2月に東京で行われた別のセミナーでも

日本の脂質異常症の内服治療開始基準は

製薬業界の思惑の成果だと聞いてきていたので、

やはりそうなんだ! との思いが募りました。



そもそも、

メタボリックシンドロームは薬物治療の対象ではないという

米国高脂血症治療ガイドラインATPⅢ(NCEP ATP Ⅲ)が

2002年、雑誌 Circulation に発表されました。

(NCEP ATP Ⅲ:Circulation,2002;106,3143-3421)


そこでは、

メタボリックシンドロームの好ましい改善は

生活習慣を変えることによると強調されています




さて、日本のメタボリックシンドロームの診断基準は、

2005年春に公開されたのですが、


同年秋にはメタボ先進国である欧米の糖尿病学会からは

メタボリックシンドロームに対する批判的評価の時期が

やってきているという見解が発表されました。



翌2006年秋には、日本のメタボ基準の必須項目である

腹囲(男≧85cm・女≧90cm)の数値に対して

国際糖尿病連盟が疑問を投げかけたのでした。

(Diabet.Med.23,469-480 (2006))


- - - - - - - - - - - - - - - - - -

と、ここまで午前中に書いていたのですが、

インターネットというものは、凄いものです!


なんと、今回の講習会での講義内容にほぼ等しい

2009年10月20日に行われたプレスセミナー(東京)での講演が、


 「脂質栄養WEBセミナー」


として閲覧することができるのですねぇ!!



ということで、


以下、それぞれ 約21分と約26分の


日本人にとってLDLコレステロールと中性脂肪は善玉である


という、なんとも刺激的な演題の講演を


写真をクリックして、じっくりと勉強してみませんか?


特に女性の方は必見ですよ !



なお、その前に、

臨床研究適正評価教育機構(J―CLEAR)
(理事長=桑島巌・東京都健康長寿医療センター副院長)

が、先ごろ公表した見解も、まずご一読下さい。
        ↓
コレステロール論争に対する当機構としての見解
―個々の危険因子や性差を考慮した基準づくりが必要―



では、下の写真をクリックして大櫛陽一先生の講義をどうぞ!
         ↓






抗加齢医学会の研修講習会 その1

2010-10-06 16:41:44 | アンチエイジング・ミニ講座
先の日曜日、大阪中ノ島の大阪国際会議場で開催された

日本抗加齢医学会の研修講習会に参加してきました。



開始5分ほど前に着いたので

大慌てで空いている席(授業と同じでたいがい前のほう)

を探して、座ってから周りを見渡し

200名くらいかなぁと思っていると

なんと、6月の学会でも出会った大学医局の先輩
抗加齢医学会総会から1週間 に書いた先輩)

が、左側の一列後方に座って居られるのを発見。



各1時間の講義が5つ 行われました。



まず最初の講義。


宝塚第一病院眼科 川崎佳巳先生による

眼疾患へのサプリメントアプローチ」。



はじめに、


患者からサプリメントのアドバイスを求められた時に、

 的確に回答できる基礎知識と考え方



と題した導入では、まず何よりも


サプリメントに対する評価力を鍛えることが必要

であり、


サプリメントに含まれる機能成分の有効性は

サプリメント製品そのものの有効性ではないこと



を、力説されました。



サプリメント製品自身にエビデンスがあるかが重要


なのだ、と強調されました。



このことは、国立健康・栄養研究所のHPにも

記載されていることですよ、と紹介されていました




これは、ここでも以前の記事で紹介しています。
           ↓
 抗糖化サプリ服用法が異なる2例の記事掲載予定に関して
http://blog.goo.ne.jp/avin-hmp/e/625c619b06488d9ea0677dfd0d17c07a



また、サプリメントに含まれる機能成分の量に関して、

BCAA(分枝鎖アミノ酸:イソロイシン・バリン・ロイシン)

を含んだスポーツドリンクの栄養成分表示を示されました。



有名なこの商品では、100mlあたり


     イソロイシン 1mg
     バリン    1mg
     ロイシン   0.5mg



という含有量だと表示されています。


ところが、血中濃度を上げるためには

少なくともBCAA 2000mg必要
だとされています。


なんと、2Lボトルのその商品なら40本も飲まないといけません


BCAA含有! などと書かれていても、

この商品のように微量しか含有していないのなら、

ほとんど意味がない
ということになってしまいます。


このような例が多く存在するのだといいます。



さて、

眼科領域でのエビデンスサプリメントとしては、

加齢黄斑変性(AMD)に対するものとして

全米の多施設で3640例の症例を対象に行われた

AREDSの結果、喫煙などがない場合には

抗酸化剤と亜鉛の組み合わせが考慮されるとのこと。

それ以外には、ルテイン・アスタキサンチン・DHA・EPA。

もちろん、それらを多く含む食品の摂取も有効です。



いずれにしても、

サプリメント使用の基本中の基本として、

もっとも留意すべき点は



 1:バランスのよい食生活&生活習慣

 2:マルチな物をバランス良く(特にミネラル)

 3:単剤の場合はエビデンスに基づいて使用

 4:脂溶性は食後、水溶性はこまめに摂取

 5:薬剤や他の食成分との総合作用に留意


だと言われ、


特に に関しては

抗血栓療法として最近処方例が増加している

ワーファリンの服用者の場合には

以前からよく知られている納豆以外にも

クロレラ・CoQ10・青汁


ワーファリンの作用を減少させるので

思わぬ血栓形成の危険が存在することを

患者に知らせることも必要であると話されました。




霊長類カロリー制限『Science』誌の掲載論文 アンチエイジング・ミニ講座 4

2010-01-18 22:20:47 | アンチエイジング・ミニ講座

昨日のつづき。


まずは、ほぼ同年齢(約27歳)の2匹のアカゲザル


カラー写真をごらんいただきましょう。









昨日は、白黒写真でしたが、

どちらがカロリー制限 (CR) を行なった方かは

一目瞭然ですよね?



顔面のアップと側面からの全身像も、どうぞ。





     CR餌             通常餌



サルの種類が違うのかと思うほど

まったく毛並みが違うではありませんか!?


とても、同じ年齢とは思えません。



これが、アカゲザルで示された「腹七分目」の効果です。





さて、では、2009年7月10日付けの『Science』誌に掲載された

「Caloric restriction delays disease onset and mortality in rhesus monkeys.」

「アカゲザルでのカロリー制限は、疾患発症と死亡を遅らせる。」


という論文の要点を、紹介しましょう。

(注・・・)は、筆者による追加説明です。


栄養不足とならないカロリー制限(Calorie Restriction:CR)は、

多くの生物種で加齢の進行を遅らせ、寿命を延長させることが知られている。

(注:最初の研究発表は1935年、コーネル大学のマッケイらが

   ラットを低カロリーの餌で飼育することによって、

   寿命を33%延長することに成功したというもの。
 
   それ以後、CRを行なうと、原生動物、ミジンコ、サラグモ、

   グッピー、マウスと、幅広く、いろいろな種類の動物で

   平均寿命、最大寿命ともに大幅に延びることが確かめられた。)



しかしこれまで、霊長類でのCRが、疾患発症を抑え、

死亡率を改善するかどうかは、明らかにされていなかった。


この研究では、霊長類のアカゲザルに対してCRを行い、

その効果を検討した。


1989年に、オスのアカゲザル30匹を15匹づつ、

CR餌群(CR群)と通常餌群(コントロール群)とに振り分け、実験を開始。

1994年には、メスのアカゲザル30匹、

オスのアカゲザル16匹を同じく2群に振り分け、実験を継続。


CR群・コントロール群ともに38匹づつのアカゲザルを

平均20年間飼育し、経過を観察している。



CR群では、30%カロリー制限した餌を投与している。


その結果、CR群においては加齢に伴う死亡率の低下が認められた。



すなわち、本研究発表の時点で、


                生存率

   コントロール群    50%

        CR群     80


と、いう結果が得られた。



また、死亡例においては、その死亡原因について、

糖尿病・癌・心血管疾患など、

加齢による病理変化による死亡なのか、

それ以外の急性の病理変化による死亡なのかを

病理解剖で判定したところ、


             加齢による病理的変化による死亡

   コントロール群    37% (38匹中14匹)

       CR餌群    13% (38匹中 5匹)



という結果となった。

(注:コントロール群での加齢による病気での死亡は、CR群の3倍である。)



結論として、

CRはアカゲザルにおいて、年齢に伴う病理学的変化を遅延させた。

すなわち、

CRは、糖尿病・癌・心血管疾患・脳萎縮の発症率を低下させた。






A:縦のラインは死亡を示す
B:コントロール群(通常餌)とCR群の加齢に伴う死亡の比較
C:コントロール群(通常餌)とCR群のあらゆる理由による死亡の比較



カラーでBとCのグラフを再掲しました。






アンチエイジング・ミニ講座 1  ヒトは血管とともに老いる

アンチエイジング・ミニ講座 2  AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する

アンチエイジング・ミニ講座 3  寿命決定は環境因子が75%


創立2周年記念、AGE Readerによる皮膚AGEs測定の実際は こちらから

当ブログの重要点『抗糖化』等に関してはこちらにまとめてあります。
なお、図表および内容の引用は固くお断りいたします。

寿命決定は環境因子が75% アンチエイジング・ミニ講座 3

2010-01-17 21:13:59 | アンチエイジング・ミニ講座

長生きの記録としてギネスに認定されているのは、

1875年に生まれ、1997年に亡くなった

フランス人女性ジャンヌ・カルマンさんの122歳164日。


なんと、85歳でフェンシングを始めたそうだ。


長生きの秘訣を訊ねられて、

健康なこと、病気にならないことよ

と答えたといいます。



若々しくエイジングした結果。

それが、サクセスフル・エイジング。


生命ある者には『生老病死』は必定だが、

カルマンさんは『生老死』というプロセスで

122年を生きたわけだ。




一卵性双生児と二卵性双生児の研究から、

寿命の決定に遺伝要因が関わる割合は25%。


つまり寿命の75%は後天的な環境要因で決まる。


一方が喫煙者、他方が非喫煙者の一卵性双生児では、

皮膚老化の具合は全く異なるし、寿命も全く違ってくる。


寿命決定に関わる環境要因は、3つ。


 食事 運動 生きがい


食事に関しては、

アメリカのウィスコンシン大学が

1989年から行っているアカゲザルに対する

『カロリーリストリクション』

つまり『カロリー制限』の結果が興味深い。


栄養素は確保し、

カロリーだけを70%に制限した食事を

17年前から与えたアカゲザルは、

普通の餌を与えたアカゲザルに比べ、

明らかに髪の毛に艶があり、皮膚も若々しい。


  

 つづく




アンチエイジング・ミニ講座 1  ヒトは血管とともに老いる

アンチエイジング・ミニ講座 2  AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する



創立2周年記念、AGE Readerによる皮膚AGEs測定の実際は こちらから

当ブログの重要点『抗糖化』等に関してはこちらにまとめてあります。
なお、図表および内容の引用は固くお断りいたします。

AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する アンチエイジング・ミニ講座 2

2009-12-27 03:22:59 | アンチエイジング・ミニ講座

アンチエイジング・ミニ講座 2
 
AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する




前回は、「ヒトは血管とともに老いる」ということを書きました。


今回は、実際の画像で「血管の老化」を直視して戴くとともに、

その発生にAGEsが関与するメカニズムを、ごく簡単に書きます。



まず、血管は歳とともに弾力を失っていくわけですが、

その原因としてよく知られているのは 「動脈硬化」 です。


この 「動脈硬化」 はさらに 「石灰化」 を引き起こします。



動脈硬化」 によって引き起こされるのが、血管内膜の石灰化です。

この血管内膜の石灰化は、「アテローム硬化型」と呼ばれます。



これとは別に、血管中膜の石灰化は「メンケベルグ型」と呼ばれ、

糖尿病や重症腎不全で認められます。



  動脈硬化   →  内膜の石灰化  「アテローム硬化型



  糖尿病     →  中膜の石灰化  「メンケベルグ型」     
  重症腎不全  →  中膜の石灰化  「メンケベルグ型




このメンケベルグ型石灰化の発生が見られる糖尿病患者を

7年間追跡調査し、検討した結果、

心臓血管疾患・冠動脈性心疾患・脳卒中などの発生が有意に増加していて、

生命予後の悪化が認められることがわかりました。






ちょっと横道に逸れますが、


ASOという名前の病気、聞いたことはないでしょうか?

 あッ、そうそう、読み方はエー・エス・オーです。

 決して、アソーではありませんので、念のため。
 


漢字で書くと、 閉塞性動脈硬化症 となります。


通常、下腿の動脈が動脈硬化のために詰まってきて、

長く歩くと、ふくらはぎなどに痛みが出てくる。


しばらく休憩すると痛みが治まるものの、しばらく歩くと

また痛みが出てくる・・・なんていうのが教科書的な症状。

間欠性跛行というのですがね。



で、このASOのために血管が詰まってしまうと

人工血管を使ったバイパス術を行うことが必要となります。


この手術のとき、動脈硬化のある血管を触るわけですが、

(つまり人工血管をつなぐ場所を探すためにですね)

詰まっている辺りの血管は、とっても硬いんです。


それこそ、カチカチ と言っていいくらいなのです。

それは、動脈硬化によって石灰化も発生しているからです。


そのような所は、血管鉗子で挟むと、なんと!

バリバリと音をたてて壊れてしまいます。

血管なのに、「破れる」のではなく、まさに「壊れる」のです。




さてさて、


たまたま撮影したお年寄りのレントゲン写真では、

あちこちに石灰化の見られることが、よくあります。


たとえば、
     
     胸部のレントゲンで大動脈弓の辺りにとか、

     腹部のレントゲンで分岐部辺りにとか。




次のレントゲン写真をご覧戴きましょう。

側面像でして、向かって左が体の前面になります。



腰椎の前面に、石灰化した腹部大動脈(指差し)が写っていますね。



 






この腹部大動脈の剖検時の画像が、次の写真になります。


血管を開けて見たところなのですが、

内膜は著しく石灰化しているのがわかります。

また、剖検所見によれば、腎動脈は高度に閉塞していました。





 






さらに、この方の心臓の冠動脈の断面では、

中膜の石灰化が著明に認められます。




 



以上の画像は、30年にわたり透析を続けられた方のものです。
日腎会誌2003;45(2):65-75.より

メンケベルグ型石灰化 の症例であったわけです。


このメンケベルグ型石灰化による生命予後の悪化は上でも述べましたが、

これは増加傾向にあるわが国の透析患者に直結する問題です。

わが国で透析患者数が増加していることに関しては、

 抗糖化を認識することが必要なわけ

で、ぜひその事実を確認してみて下さい。




さて、ここまでが前置きでした。 


このような血管石灰化のメカニズムに、

AGEsが関与しているというのです




しかも、産業医科大学第1内科学講座の岡田洋右先生によると、

AGEsの濃度が高いほど石灰化が進むというのです。



まずは、骨を作る細胞である骨芽細胞の話です。



骨芽細胞というものは、間葉系幹細胞から分化してきます。


この骨芽細胞の分化を決定づけるのが

Runx2(runt-related gene 2)という遺伝子であることは、

1997年に、わが国の研究者が米国科学雑誌「Cell」に発表しました。




ここで、AGEsです。


まず

AGEsは、その濃度にしたがってRunx2の発現を誘導する

ということが判ってきました。



それに加えて

AGEsは、血管平滑筋細胞において

骨芽細胞分化マーカー(Runx2、アルカリホスファターゼ;AP

オステオポンチン;OP、オステオカルシン;OC)を誘導することで

血管平滑筋細胞を骨芽様細胞に形質転換させて石灰化を起こす

ということも判ってきました。



 
    
   コントロールおよびBSA(ウシ血清アルブミン)を加えたものに比べ、

   加えるAGEの濃度が濃いほど石灰沈着が増加することが判ります。




結論 : AGEsは、濃度依存的に血管石灰化を進行させる


AGEsを体内に貯めないに越したことはない、というわけです。




アンチエイジング・ミニ講座 1  ヒトは血管とともに老いる


創立2周年記念、AGE Readerによる皮膚AGEs測定の実際は こちらから


当ブログの重要点『抗糖化』等に関してはこちらにまとめてあります。
なお、図表および内容の引用は固くお断りいたします。

ヒトは血管とともに老いる アンチエイジング・ミニ講座 1

2009-12-20 16:46:20 | アンチエイジング・ミニ講座

アンチエイジング・ミニ講座 1 

ヒトは血管とともに老いる




「医学はサイエンスに基づいたアート」であるという

全人医療の考え方を提唱されたウィリアム・オスラー博士の有名な言葉に、


「ヒトは血管とともに老いる」があります。



ヒトは年齢を重ねるとともに、血管が硬くなり老化していきます。

ヒトの老化現象とは、血管壁が硬くなり弾力性を失うことで現れる。

すなわち、「動脈硬化」と言うわけです。

逆に言うならば、若々しく健康を保つには、

血管を柔らかく保つことが重要ということになります。



現在のサイエンスにおいては、


血管の老化は、その内皮細胞に始まり、血管のしなやかさを低下させ、

 それは次第に臓器の器質的変化に置き換わっていく



と考えられています。



血管老化の引き金を引く部位は、


    血管内皮細胞です。



すなわち、われわれの血管の一番内側を覆っている細胞のことです。



これは血管の内壁となる一層の扁平な細胞ですが、

単に血管の内張りとして存在しているだけではなく、

プロスタグランディンI2 (PGI2) を産生し放出することによって、

血小板の凝集を抑制し、血管を拡張させ、血管に血栓ができにくくします。



また、トロンボモジュリン(TM)という物質を産生することによって、

トロンビンを血液凝集酵素から抗凝集酵素に変換することが判りました。


さらに、一酸化窒素(NO)を産生放出して、

血小板の凝集抑制と血管拡張の作用を行っていることも判ってきました。



つまり血管内皮細胞は、


血小板の凝集を抑制し、血液凝固をも抑制することで、


積極的に血管内での血栓形成を防いでいる細胞であることが判ってきたのです。



血液凝固以外にも、循環制御、炎症・免疫制御、血管新生制御など、

われわれの身体の機能に重要な役割を果たす諸々のシステムを制御して、

刻々と変動するわれわれの身体を一定の状態に維持するために、

血管内皮細胞は重要な役割を果たしていることが

次々と明らかになってきたのです。



血管内皮細胞は、常に血液と接しています。

血液の変化を時々刻々に感知し、反応することで、

これらの働きが可能となります。



たとえば、血管の中を流れる血液が増加すれば、

血管の壁面に加わるズリ応力が変化します。

その物理的なストレス変化を生化学的なシグナルに置き換えることで、

血管内皮細胞からのNOの産生が高まります。

NOは血管の平滑筋細胞を弛緩させ、血管は拡張し、

増加した血液の流れに対応できるというわけです。



血管内皮細胞は、常にさまざまなストレスに曝されていることになります。

ストレスが一定レベル以下であれば、血管内皮細胞は活性化し、反応します。

しかし、ストレスが強過ぎると、血管内皮細胞は障害を受けてしまいます



現代の日本において血管内皮細胞を障害する因子として重要なのは


酸化変化低比重リポタンパク (酸化されて変化したLDL-コレステロール)


あるいは、糖化タンパク質 (AGEs) などです。



これらの因子は、TM(トロンボモジュリン)の発現を低下させ、

TMと正反対の働きをするトロンビン受容体(PAR-1)の発現を

促進してしまいます。


また、これらの因子は、NOの活性を妨げてしまいます。


つまり、血液の流れが障害されてしまうということです。




ところで、

わたしたちの身体の中に、血管内皮細胞とはどれくらいあるのでしょうか?


70Kgの成人男性では、

総重量約1Kg、表面積としては70㎡にもなるといわれています。

(推定内皮細胞総面積 Wolinsky,1980による)



その表面には、LDL受容体AGE受容体 (RAGE) が存在します。



血液内のAGEsがAGE受容体 (RAGE) に結合すると、


細胞内にシグナルが伝達されて転写因子であるNF-κBが活性化し


血栓形成傾向炎症悪玉アディポサイトカイン増加させ


血管障害から動脈硬化へと病的状態の進行が始まってしまいます



たしかに、

「ヒトは血管とともに老いる」のです。



 アンチエイジング・ミニ講座 2  AGEsは血管平滑筋細胞に石灰化を誘導する



創立2周年記念、AGE Readerによる皮膚AGEs測定の実際は こちらから


当ブログの重要点『抗糖化』等に関してはこちらにまとめてあります。
なお、図表および内容の引用は固くお断りいたします。