読書と映画をめぐるプロムナード

読書、映画に関する感想、啓示を受けたこと、派生して考えたことなどを、勉強しながら綴っています。

映画と音楽の蜜月と離反を描く、「ユングのサウンドトラック」(菊地成孔著/2010年)

2010-03-06 06:22:27 | 本;エッセイ・評論
~女優と衣装と音楽と夢の、美しい記憶。タブーに抵触するため、これまでどこにも発表できなかった松本人志『大日本人』論。ジャン=リュック・ゴダールの作品を、「音楽」と「恋」から読み解く超絶の集中講義。古典から最新作に至るまで、ハリウッド映画を貫くフェティッシュな魅力。そして脳内で撮影中の「妄想の監督作品」―映画をめぐる、壮大な愛のメモワール。~

<目次>
Ⅰ映画は何故、音楽を必要としなくなったか?―ジャン=リュック・ゴダールを中心にした、映像と音を巡る小論考
(Our Music of Godard;J/L/G1 67年までのゴダールを、音楽と共に考える。―アテネフランセにおける講義;ドキュメンタリーとフィクションのはざまで鳴る「音」―対談・蓮實重彦 ほか)

Ⅱ“脳内映画”と“映画”―いくつかの作品論と作家論、そして楽しい計画
(記憶喪失学;最もわかりやすく、最も面白くなってしまった“実験”―北野武『TAKESHIS’』;「日本が世界に誇る唯一の文化」という名の個人。という、信じがたい現象が定着するまで我々はどうしていたのか?―宮崎駿『ハウルの動く城』 ほか)

Ⅲ甘い悪夢の日々―2006~2009
(『2046』のサントラ;お盆は映画三昧;『ゲルマニウムの夜』と音の不感症 ほか)


図書館の最新刊コーナーで見つけた一冊。映画に関するエッセイということで手に取りました。著者の菊地成孔さんは、昨年の今頃に茂木健一郎さんの「芸術脳」での対談者の一人として取り上げていましたが、このミュージシャンの菊地さんと本書の菊地さんが同一人物であると気づくのに時間がかかりました。

そんな訳で、本書は映画と音楽の関係について豊富な映画体験と深い洞察で綴られたエッセイ集となっています。取り上げられる主な映画は、ジャン=リュック・ゴダールを中心に次のような作品群です。

「はなればなれに」、「女は女である」、「コロッサル・ユース」、「アワーミュージック」、「男性・女性」、「彼女について私が知っている二、三の事柄」、「アルファヴィル」「死刑台のエレベーター」、「シャーリー・テンプル・ジャポン」、「パビリオン山椒魚」、「インランド・エンパイア」、「さよなら、さよならハリウッド」、「SEX AND THE CITY」、「デス・プルーフ」、「8 1/2」、「気狂いピエロ」、「ゲルマニウムの夜」、「エコール」、「マリー・アントワネット」、「甘い生活」、「ボルベール(帰郷)」

取り上げられた作品群の中で私が観た映画は、ルイ・マル監督の「死刑台のエレベーター」(1957)、ジャン=リュック・ゴダール監督の「アルファヴィル」(1965)、デヴィッド・リンチ監督の「インランド・エンパイア」(2006)、マイケル・パトリック・キング監督の「SEX AND THE CITY」(2008)位で、観るべき映画がまだまだ多く残されているなと実感したところです。

菊地さんはジャズミュージシャン(サキソフォニスト)ですが、生粋のゴダーディアン(ゴダールファン)であり、マイルス・デイヴィスの研究者でもあります。そして、フロイトとユングの「リビドー」をこよなく愛するフロイディアンであり、ユンギアンです。本書のタイトルはそんなところからつけられたのでしょうね。

*リビドー(羅: Libido)とは、日常的には性的欲望または性衝動と同義に用いられることが多々ある。これはジークムント・フロイトが「性的衝動を発動させる力」とする解釈を当時心理学で使用されていた用語Libidoにあてたことを継承したものである。一方で、カール・グスタフ・ユングは、すべての本能のエネルギーのことをLibidoとした。

本書は図書館で借りた本で、次に予約が入っているということで、いつものような、本書からの引用をコピペしたり、ノー天気な能書きを書く時間がないので、本書に登場する人物と本書で知った言葉を記しておきます。


<蓮實重彦 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%93%AE%E5%AF%A6%E9%87%8D%E5%BD%A6


<冨永昌敬 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%A8%E6%B0%B8%E6%98%8C%E6%95%AC


<川勝正幸 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%9D%E5%8B%9D%E6%AD%A3%E5%B9%B8


<湯山玲子 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B9%AF%E5%B1%B1%E7%8E%B2%E5%AD%90


・シネフィル(cinéfil-本来はcinéphile)とは映画通、映画狂を意味するフランス語。「cinéma」(映画)と「phil」(「愛する」という意味の接尾辞)をもとにした造語

・シミュラクラ(simulacra)/模造
シミュラクラ現象(類像現象/錯覚現象)、<シミュラークル【(仏)simulacre】>1 影。面影。2 にせもの。まがいもの。模造品。

・<バーレスク - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%82%AF


(関連記事)
<ちょっとだけ日本が登場する洋画(4)、巨匠ゴダール監督の「アルファヴィル」(仏・伊/1965年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/5423b64503936989370d3613da78fb54

<マイルスのモダンジャズと映像の歴史的融合、「死刑台のエレベーター」(フランス/1957年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/dd702a3fbbe9985fe71b792cfd424f0d

<じっと我慢の三時間、「Inland Empire」(アメリカ・ポーランド/2006年)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/38d0e915b1ca3937b2d4b2bfc1fa7cf6

<アラフォーの原点。赤裸々なる女性たちの本音、「セックス・アンド・ザ・シティ」(米/2008)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/1836f894457dcb1ba87f211f326a0da5

<即興と恍惚~茂木健一郎と菊地成孔の対談から~>
http://blogs.yahoo.co.jp/asongotoh/56931270.html

<日本を刺激する10人のクリエーターの脳を探る、「芸術脳」(茂木健一郎著)>
http://blog.goo.ne.jp/asongotoh/e/3557d593942a9cfd6603cf0f235a1d1c


<備忘録>
ソニマージュ(P38)、ミッキーマウシング(P39)、ルサンチマン(P62)、オブセッション(P63)、トートロジー(P68)、マリアージュ(P68)、ジョルジュ・ドリュー(P76)、インターテクスチュアリティ、パリンプカスト(P91)、クロノスとカイロス、イーオン(発生時間) (P99)、ハイバジェット(P159)、ミソジニー(女性嫌悪、憎悪、恐怖)(P167)、ミスティフィカシオン(P169)



<菊地成孔 - Wikipedia>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8F%8A%E5%9C%B0%E6%88%90%E5%AD%94

<菊地成孔 映画と音楽の関係を語る>
http://www.pia.co.jp/feature/11/index.php


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