あすかパパの色んな話

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【プロ野球】楽天・釜田佳直、投手人生のきっかけは斎藤佑樹

2012年06月02日 04時16分00秒 | コラム

先発2戦目にしてプロ初勝利を挙げた釜田佳直

最後のバッター森岡良介がセカンドゴロに倒れると、楽天の三塁側ベンチに笑顔の列が続いた。小山伸一郎、ハウザーから祝福の握手を受け、ベンチ前では抑えの青山浩二からウイニングボールを手渡された。5月27日、神宮球場で行われたヤクルト戦で釜田佳直が高卒ルーキーでは今シーズン一番乗りとなる白星を挙げ、プロ初勝利を飾った。

 この試合、釜田はプロ初登板となった20日の阪神戦(甲子園)の時と違うグラブの色でマウンドに上がった。前回は楽天の背番号21の先輩である岩隈久志を思い出させるブルーのグラブだったが、この日はイエロー。実はこれ、金沢高校のエースとして昨年の甲子園で活躍していた時と同じもので、憧れの田中将大と同じ色でもある。

 試合では高卒ルーキーらしからぬ投球で再び田中を思い出させた。この試合はストレートが高めに浮き、変化球の制球にも苦しんだ。明らかに前回の阪神戦より内容は悪かったが、「(調子が)悪いときにどれだけ抑えられるかが、その投手の評価」と田中がアマチュア時代から口癖のように言い続けてきた言葉を思い出し、勝負どころで粘った。

 2回、味方のミスから招いた一死満塁のピンチで、8番の田中浩康をスライダーで、続く館山昌平には真っすぐで連続三振に仕留めた。6回にも無死二塁のピンチを背負ったが、バレンティン、畠山和洋を連続三振のあと、宮本慎也もセカンドフライに打ち取った。

7回に1点を失いマウンドを降りたが、被安打4、四死球4、奪三振4、失点1と先発の役目を十分に果たし、チームとしては2007年の田中以来となる高卒1年目でのプロ初勝利を挙げた。釜田の野球人生を振り返ると、節目、節目で田中に影響を受けてきた。

釜田は石川県の御幸中学の野球部で、1年の時はキャッチャーをしていた。夏休みのある日、テレビをつけると、駒大苫小牧のエース・田中と早稲田実業のエース・斎藤佑樹が投げ合う”あの決勝戦”が流れていた。延長15回、引き分けに終わった試合に魅せられた釜田は翌日、特急列車に飛び乗り大阪へ向かうと、甲子園で再試合を観戦した。この時、釜田の心を奪ったのは、田中ではなく熱狂の舞台で淡々と投げ込む斎藤のピッチングだった。そして石川に戻ると、監督にピッチャー転向を直訴。ここから、釜田の投手人生がスタートした。

「最初に惹かれたのは、斎藤投手だったんです。淡々とクールに投げている姿がカッコよくて。あの試合は本当に感動しましたし、この場所でプレイしたいと強く思いました」

 いざマウンドに上がると、豪速球がうなった。中学3年時に軟式で135キロを記録すると、金沢高校の1年春には143キロを記録。そんなスピードキングに転機が訪れたのが高校2年の秋だった。北信越大会を制して挑んだ神宮大会で自慢のストレートを東北高校打線に弾き返され、11安打を浴びて初戦敗退を喫した。この時、「大事なのは球速よりも球質。そのためにフォームも作り直さないといけない」と切り替わった。

 以来、プロの一流投手の連続写真を繰り返し見ながら、「これは!」と思うものがあれば、翌日の練習で取り入れた。股関節の柔軟性もアップさせながら、上体中心から下半身主導のフォームへ修正していくと、翌春、甲子園のマウンドには別人の釜田がいた。

 初戦の加古川北戦での釜田は、上体の力みは消え、ストレートの伸び、スライダーもキレも格段にアップ。ただ、5回二死までパーフェクトの快投を演じたが、試合は0対4で敗れた。ペース配分や配球も含め、大きな課題をまた持ち帰った。

 のちにこの一戦を「勝てるピッチャーになっていくための原点」と語ったが、加古川北のエース・井上真伊人(現・京都産業大)の打者をじっくり観察して投げ分ける投球を見習い、また井上の武器であるカットボールもここで覚えた。本人も「負け試合が自分を大きくしてくれた」と話していたが、経験を力に変えられることが、釜田の最大の長所だ。

最後に、田中と斎藤にまつわるエピソードをもうひとつ。夏の甲子園のあと、釜田は進学かプロ志望かで最後まで進路を決めかねていた。「僕らの世代ではナンバーワン」と認めていた日大三高の吉永健太朗が早々に進学の意志を表明したこともあり、「あの吉永でも進学するのなら……」と進学に傾いていた。しかし、大学で過ごす4年間と、プロで過ごす4年間のメリット、デメリットを考えたとき、頭に浮かんだのは中学1年の夏に見た、ふたりのその後だった。

「ちょうど決断に迷っていた時、田中投手と斎藤投手がプロの世界ではじめて投げ合ったんです。田中投手が勝ったんですけど、その試合から、ぼんやりながら答えが見えた気がして……。斎藤投手は今も変わらず好きですけど、その後の活躍やプロでの実績を見たら、田中投手に惹かれますね。1試合で18三振を取ったり……凄すぎます」

 これはプロ志望届けを出した直後に聞いた言葉だが、今やその田中と同じユニフォームを着てマウンドに立つ。初勝利の試合後、星野仙一監督は「(田中)将大みたいに成長してほしい」と期待を込めたあと、四球の走者を残しての降板に「7回までしっかり抑えないといけない」と注文も忘れなかった。これも課題を与える程に成長できる釜田の資質を見抜いてのことだろう。まだ半分以上も残るシーズンを終えた時、経験を力に変えられる男はどこまで大きくなっているのか。そして近い将来を思えば、憧れの田中のライバルになっているかも――そこまで想像させる何とも楽しみなルーキーの登場だ。(スポルディーバ Web)



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