
“チェコのメッシ”ことバツラフ・ピラー(チェコ代表MF)は小柄なドリブラー。レンタル移籍先のピルゼンでは、昨冬に欧州CLでバルセロナとあたり、憧れのメッシとも対戦した。
グループBが“死のグループ”なら、優勝候補が存在しないグループAはその対極に位置する楽なグループと言えるだろう。
しかし、有望な若手がひしめく開催国のポーランドを筆頭に、ユーロ2004の覇者であるギリシャ、ユーロ2008で4強進出を果たした大国ロシア、さらにユーロ1996から5大会連続の本大会出場となるチェコと、居並ぶ4カ国は“曲者”ばかり。決勝トーナメント進出の2枠を争う6試合は、いずれも予想の難しい拮抗した展開となりそうだ。
“ドルトムント・トリオ”に期待がかかる開催国ポーランド代表。
開催国のポーランドは、地の利を活かしてこの戦いを有利に進められるはずだ。
FWレバンドフスキ、MFブラシュチコフスキ、DFピシュチェクの“ドルトムント・トリオ”を始め、U-21ドイツ代表経験のあるMFポランスキ、アーセナルの守護神シュチェスニとタレントは充実。予選を免除されたことによる調整不足を懸念する声もあるが、キャプテンのブラシュチコフスキは「落ち着いてチームを作ることができた」とこれを否定する。
前回大会では1勝も挙げることなくグループステージで敗退したが、スムダ監督の就任以降は積極的に世代交代を推し進め、着実な強化を図ってきた。2011年の戦績は14戦でわずか2敗と好調を維持しており、さらに昨年9月に行われたドイツとの親善試合をドローで終えたことで自信を深めている。“恵まれたグループ”を勝ち抜き、まずはグループステージ突破のノルマを果たしたいところだ。
揺れる国状をよそに初のベスト8入りを狙うギリシャ。
ポルトガル人のサントス監督が率いるギリシャにとって、ポーランドとの開幕戦はチームの行方を左右する大一番となりそうだ。
ギリシャはユーロ2004で“奇跡の欧州制覇”を成し遂げて以来、国際舞台では特筆すべき結果を残していない。しかし、ユーロ2008や南アフリカW杯でも本大会出場を果たしており、中堅国にしてその安定感は群を抜いている。今大会予選では強豪クロアチアを退け、無敗で本大会出場権を獲得。サントス監督はピッチに送り込んだ32人のうち9人に代表デビューのチャンスを与えるなど、着実な世代交代にも着手してきた。
「生まれ変わったギリシャ」を実証できるか?
ギリシャのスタイルは、代名詞でもある堅守速攻。
シャルケで頭角を現しているK・パパドプーロスを中心に、伝統の堅守は新世代にも受け継がれている。
もっとも、現在のチームはかつてのような“守備偏重型”ではなく、中盤で繰り広げるパスワークやそこから生まれるサイド攻撃も多彩。「ギリシャのメッシ」と称されるフェトファツィディスや数々の最年少記録を持つニニスなど、今後の成長が楽しみなテクニシャンも台頭してきた。
今大会は、司令塔カラグーニスが口にする「生まれ変わったギリシャ」の力を世界に示す大きなチャンスだ。大声援の後押しを受けるポーランドとの開幕戦を制することができれば、目標とする準々決勝進出が一気に現実味を帯びてくるだろう。
南アW杯予選敗退の汚名をそそいだロシアが1位通過か?
ただし、近年における実績と戦力を単純比較すれば、ロシアはポーランドやギリシャを上回る1位通過の筆頭候補である。
予選で喫した黒星はわずか「1」。「4」に抑えた失点の少なさはイタリアに次ぐ2位の成績である。
チームにはアルシャビンやジルコフ、ケルジャコフやパブリュチェンコといったユーロ2008のベスト4メンバーが多く残っており、さらにザゴエフら気鋭の若手も台頭。エースのアルシャビンはベテランと若手が融合する現在のチームを「4年前よりも充実している」と評し、確かな手応えをつかんでいる。
'10年南アフリカW杯の予選敗退はロシアにとって大きな試練だったが、'07-'08シーズンにゼニトを率いてUEFAカップ(現ヨーロッパ・リーグ)を制したアドフォカート監督の就任を機に、チームは見事に再建された。
国内事情を知り尽くす指揮官は、ゼニトとCSKAモスクワの選手を中心にチームを構成。守備の中核を担ってきたV・ベレズツキやシシュキンの離脱は大きな誤算だが、35歳のベテランDFシャロノフ、さらにチャンピオンズリーグで活躍した25歳の右SBナバブキンを招集し、その穴を埋めた。グループBの勝者と対戦する準々決勝を見据えて、まずは危なげなくグループステージを突破したいところだ。
チェコの主将は「素晴らしいチーム」と手応え十分。
初戦でロシアと対戦するチェコは、ユーロ1996以来5大会連続でユーロ本大会への出場権を勝ち取った。
ネドベドやポボルスキを擁した'90年代黄金期ほどの派手さはないが、GKチェフ、MFロシツキーを筆頭に、DFカドレツ、MFプラシル、さらにベテランFWバロシュなど各ポジションに核となるタレントがいる。
さらにチェコリーグの得点王に輝いたFWラファタ、「チェコのメッシ」と称されるMFピラーらが急成長を遂げつつあり、近年においては最高と言える陣容が整ったことは間違いない。キャプテンを務めるチェフも「チェコ代表は柔軟性のある素晴らしいチームに成長した」と語り、その仕上がり具合に確かな自信を得ている。
ビレク監督が抱える懸念は故障を抱えるロシツキーの状態だが、本番までには万全の状態に回復するだろう。チームとしての前評判は決して高くないが、過小評価すると危険な存在になりかねない。(Number Web)