Are Core Hire Hare ~アレコレヒレハレ~

自作のweb漫画、長編小説、音楽、随想、米ラジオ番組『Coast to Coast AM』の紹介など

029-刻印

2012-10-15 21:02:07 | 伝承軌道上の恋の歌

-僕は夢を見ていた。宇宙船の中で周りに生えている花や木と一緒に水浴びをしている女の子を、僕は曇りガラスの向こうに眺めている。その子は歌を歌っていた。ヤエコの歌だ。僕はその女の子が誰だか知りたいと思った。
…うっすらと目が覚めた。きっとここは手を伸ばした先にある夢の延長だ。歌が聞こえてくる。僕はベッドのすぐ横に立てかけてある衝立につまづきながら声のする方へ歩いて行く。そうだ。顔も洗わなきゃ。朝だし出かけなきゃいけない。そうして僕は曇りガラスでできたスライド式のドアを開けて洗面所に入ろうとした。その時。


「…え?」
 女の子の声がした。それは案外近く…いや、目と鼻の先だった。見ると濡れた髪をタオルでぬぐっている裸の女の子が目の前に立っている。あいにく後ろ姿だけど、鏡には寝ぼけ眼の僕の顔に並んでアノンの顔が覗いている。程よく引き締まったおしりはまだ少女らしさを留めていて、背中越しに斜めから覗くのは思った通り小ぶりで形の良い胸がその稜線だけを柔らかくなぞっている。そしてタオルで描き上げた首筋は色っぽく…
だが、そこまでで僕の目は留まる。首筋から肩にかけた辺りに少し青みの入った黒色で模様のようなものが入っている。今までも気づかないはずだ。丸首のシャツでもぎりぎり隠れるくらいの位置だ。さらに観察すると何か識別番号と言うかバーコードのように見える。身体を洗っても流れないんだから、タトゥーか何かだろうか?確かマキーナにもあの位置に識別番号『001』が描かれていた。が、それを真似たにしてもアノンのそれはデザインが大分違う。
「アノン、お前…」
「…な、何?」
 呆然と立ち尽くす僕を前にしてアノンはさっとタオルで身体を隠す。
「お前、やっぱり…」
「何?やっぱりって…なんかおかしい?」
 本来なら怒りたいところだろうけど、僕の様子に調子を狂わされて普通の反応ができずに困ってるようだ。
「いや、随分…その…なんだ…なかなか」
 思わず視線を下に向かわせてしまう僕の本能。
「いいから、もう、早く出て行って!!」
 アノンはようやく僕を追い出した。

…つづき

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