Are Core Hire Hare ~アレコレヒレハレ~

自作のweb漫画、長編小説、音楽、随想、米ラジオ番組『Coast to Coast AM』の紹介など

自転車おじさんのあいまいな怒りとあいまいな対象

2016-09-06 22:58:58 | コラム

白色カッターシャツに紺ブレザーの男、登校中の女子生徒に「お邪魔します。」と声をかけ、手を差し出した後いずれかに立ち去る(ひょうご防犯ネット)

もうずいぶん前からですが、家にいると真夜中に男の叫び声が聞こえることがあります。
ほとんど怒号に近く、近所に酒ぐせの悪い人でもいるんだろうと思っていました。

ある夜のことです。
家に帰る道すがら、あたりにまた例の声が響き渡りました。
どこの家か突き止めてやろうと思ってきょろきょろしていると、あろうことか、向こうからこっちに近づいてきてるのです。

しかも、だんだんと大きくなるその声を聞き取ろうとしても、内容が全く分かりません。
しゃべりたての赤ん坊みたいな言葉にならない言葉を、とにかく怒りに任せて叫んでいます。

そして、だいぶ近くなってから、その犯人はまっすぐの道の向こうから自転車に乗ってこちらに向かってくるおじさんだと、ようやく気付きました。
土木作業員のような格好で、顔には無精ひげを生やし痩せこけていて、片手に缶ビールをもって、とにかくあたりかまわずわめき散らしています。

そんな狂犬が狭い一本道を前からやってくるのです。
思わず身構えて、もしもの時は応戦する覚悟までして距離を縮めていきました。

ところが、そんな心配はいりませんでした。
というのも、そのおじさんは人とすれ違う時だけ、急におとなしくなるのです。
そして、相手と十分な距離を取ってから、またわめきだすのです。
それから何度か出くわしているのですが、例外なくそうでした。

多分ですが、このおじさんはもともとは気の弱い優しい人だったんじゃないでしょうか。
ですから、心の底から湧き上がる怒りや憎しみに対して、明確な言葉や対象を持てないのです。
あまりに孤独で思いを伝える言葉も相手も持てないのです。
なので、夜中に酔った勢いで、言葉にならない言葉で誰でもない誰かに向かって、とにかくあたりで叫んでまわっているんじゃないでしょうか。

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