士師記9:56 このように神はアビメレクがその兄弟七十人を殺して、自分の父に対して犯した悪に報いられた。
エルバアルと呼ばれたギデオンには70人の子供の他に、女奴隷の子アビメレクがいました。
先のミデアン人との戦いに勝利した以後、ギデオンの生き様はどのようなものであったのでしょうか。子供の数からしても分かるように、多くの妻をめとり、その生活にはおごりが感じられます。
彼が作った「金のエポデ」に象徴されるように、ミデアン人との戦いの勝利が、神への礼拝と謙遜にいたるのではなく、次なる支配者を巡って権力争いへと展開して行きました。
アビメレクは異母兄弟の69人を殺害し、実母の出身地であるシケムの人々の支持を得て王となりました。さらに、ギデオンの子で生き残りのヨタムが反対したので、その同調者1千人を焼き殺しました。
イスラエルは神の民であるはずなのに、このような悪が入り込むとは何ということでしょうか。
偶像礼拝という罪の根が抜かれないまま、それが苦い根となって人々を汚します。イスラエルはそのような根を抜ききれないまま、これから進んで行きます。
士師記は、罪の根を残したままの人間の混沌とした姿を描いています。それは、旧約聖書のテーマでもあります。
人間の根本的な罪……それは、神を認めない罪です。神への礼拝を捨て、偶像を拝む人間の罪です。裏をかえせば自らを神とする罪です。これが〝根っ子の罪〟です。神学用語では原罪と呼びます。
でも、主はそれをいつまでも放っておかれません。
悪を重ねたアビメレクが名もない女が落としたひき臼の石で殺されたのは、神がアビメレクの罪に報われたのだと記されているように、神は罪を放っておかれません。
そのように、神は人類の根っ子の罪を放っておかれません。それを、完全に引き抜いてくださる時が来ます。御子イエスの十字架の死による解決です。
御子イエスの十字架の死によって罪が滅ぼされるまで、なお時を待たなければなりませんでしたが、士師記の著者は、神による報いにる解決に希望を託しながら、アビメレクの記録を残したのです。(Ω)