前回の間坂の坂上から南平坂を目指す(現代地図)。ここから先、この坂上からどんな道筋が南平坂まで延びているのかと想うとわくわくした。こんなふうに感じながら街歩きをするのも久しぶりである。
いきなり坂上からほぼまっすぐに中程度の勾配で下る坂になっている。やがて左に曲がるが、やや大きいカーブでその先も下りながら曲がっているようでその先が見えない。くねくねと曲がっていて楽しい。
左に曲がり次に右に曲がって下っていくと、やがて坂下が見えてくるが、驚いたことにここが鞍部で、おまけに四叉路になっている。つまり、間坂上から下ってきた道が直進方向(西側)の南平坂に向かってふたたび上り坂になっていて、左右の道は左(南)から右(北)へ緩やかであるが上り坂になっている。間坂上から南平坂上までの途上には二つの無名の坂とその間に鞍部が存在し、そこを緩やかな勾配の坂道が横切っている。この坂も無名である。
上五枚目の写真は四叉路を右折し、坂上側から坂下を、下一枚目は左折し坂下側から坂上を撮ったもので(今年になってから撮影)、坂上を進むと246号線である。
この鞍部に直交する坂は、道玄坂の坂上周辺に広がる台地からちょっと傾斜した南緩斜面にあり、ここに間坂上からと南平坂上から二つの坂が下ってきて合流している。ここはかつて南へと延びていた谷筋であったように思われてくる。
四叉路を通り過ぎるとふたたび上り坂で、まっすぐに緩やかに上っている。南平台町5番と6番との間を西へ上る(現代地図)。
途中、ふり返ると、さきほどの間坂上から下ってきた坂下と四叉路が見える。
戦前の地図(昭和16年)や戦後の地図(昭和31年)には、間坂上から南平坂上までの道があり、渋谷駅近くの間坂下から南平坂上まで戦前から続く道筋であったことがわかる。
やがてかなり緩やかになって、ちょっと右へ左へとカーブすると、坂上で、正面に聖ヶ丘教会が見える(現代地図)。ここで南平坂の坂上と合流し、四枚目の写真はその坂上を、五枚目はその中腹を撮ったものである。
岡崎が南平坂の項で『南平台町四、五の間をカーブしながら下る無名坂がある。坂上に溢れる木の繁みが美しい。』と記述しているが、その無名坂がこの坂と思われる。
渋谷駅近くの246号線わきから間坂を上り、その坂上からいったん下り、ふたたび上って南平坂上にいたったが、期待にたがわずはなはだ興味深い道筋であった。
前回、道玄坂経由で南平坂を訪れたが、今回の道筋でアクセスすると、かなり静かな坂道散歩となる。賑やかで騒々しい道玄坂を避けたいときにはこちらがよく、しかも凹凸の変化に富んだコースである。
参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「古地図・現代図で歩く戦前昭和東京散歩」(人文社)
「古地図・現代図で歩く昭和三十年代東京散歩」(人文社)