東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

稲荷坂(駒込)

2012年08月23日 | 坂道

稲荷坂下 稲荷坂下 稲荷坂下 稲荷坂下 前回の神明坂下を東へ進み、次の信号を右折すると、稲荷坂の坂下である。一枚目の写真は右折してすぐ進行方向(南)を撮り、二枚目はその先をちょっと右に曲がってから撮ったもので、このあたりはまだ平坦である。

二枚目の先をちょっと左に曲がると、ようやく前方に稲荷坂が見えてくる。三枚目はそのあたりから坂を撮ったもので、四枚目はさらに進んで坂上側を撮ったものである。緩やかに上っている。

不忍通りから入ったからそう感じるのか、静かな雰囲気のするところで、住宅街のちょっと大きな通りにできた坂と云った感じである。

この坂は、神明坂下の根津谷の北端近くから本郷台地の東端部分へ上る坂である。

稲荷坂下 稲荷坂下 稲荷坂中腹 稲荷坂中腹 さらに進んで坂下から坂上側を撮ったのが一枚目の写真で、その先からふり返って坂下側を撮ったのが二枚目である。

三枚目は上りかかったところから坂上を撮ったもので、この直前でちょっと左に曲がってから中程度の勾配でほぼまっすぐに南へ上っている。四枚目はそのちょっと先から坂下側を撮ったものである。

三枚目の中央左の公園そばに小さく赤いポストが写っているが、その左わきに坂の標識が立っていて、次の説明がある。

「稲荷坂(いなりざか)
 稲荷信仰は農業神であるウガノミタマノカミに対する信仰で「稲なり」の転訛といわれる。狐は古来、田の神の使いと考えられたので狐尊信の風が稲なり信仰と結合して、特に江戸時代になると盛んになった。
 これが、農村のみにとどまらず都市にも普及して商業繁栄を招来する神、そして家屋敷の守り神(地守神)となって武家屋敷内をも含めて小規模な稲荷社を祀る風習を生むようになる。これを「屋敷稲荷」といった。
 こうした風習から来る生活感情と付近の稲荷社とのかかわりの中で拱らばれた坂名として特色があるが、ここの場合は坂上にある江戸初期から続く駒込村開拓名主・高木家の「宗十郎稲荷」に起因する。」

現代地図を見ると、坂上の先に駒込名主屋敷跡があるので、ここにあった稲荷に由来すると云うことらしい。

稲荷坂中腹 稲荷坂中腹 稲荷坂中腹 東都駒込辺絵図(安政四年(1857)) 一、三枚目の写真は、坂上左側(東)にある神明公園わきの交差点下から撮ったもので、このあたりがこの坂でもっとも勾配がある。二枚目はそのあたりから坂下側を撮ったものである。

四枚目の尾張屋板江戸切絵図 東都駒込辺絵図(安政四年(1857))の部分図を見ると、富士神社前と動坂上の四差路とを結ぶ道筋があるが、ここが、現在の坂上の突き当たりの左右に延びる道と思われる。そうだとすると、そのほぼ中間の、百姓地とあるところのわきの道からわかれた図の上へ左へ緩やかにカーブしている道が稲荷坂と考えられる。

ところが、明治実測地図(明治十一年)、明治地図(明治四十年)、戦前の昭和地図(昭和十六年)を見ると、いずれも違った道筋が示されており、現在の坂と対応するような道筋がない。かつての稲荷坂の一部が現在の坂のどこかに残っているだけかもしれず、あるいは、まったく新しい坂で坂名だけを受け継いだのかもしれない。このためか、横関、石川にはないが、岡崎、山野、「東京23区の坂道」に紹介されている。

稲荷坂上 稲荷坂上 稲荷坂上 稲荷坂上 一枚目の写真は、公園わきの交差点のちょっと上から坂下を、二枚目はそのあたりから坂上を撮ったものである。三枚目は公園上から坂下を、四枚目はそのあたりから坂上を撮ったものである。四枚目の突き当たりの裏側あたりに名主屋敷跡があり、右折すると富士神社方面で、左折すると動坂方面である。

同名の坂は、都内に多数あり、たとえば、港区赤坂、六本木一丁目(我善坊谷坂の別名)、豊島区高田など。
(続く)

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
「嘉永・慶応 江戸切絵図(尾張屋清七板)」(人文社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図集 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
デジタル古地図シリーズ第一集【復刻】江戸切絵図(人文社)
「東京人 特集 東京は坂の町」④april 2007 no.238(都市出版)
「古地図・現代図で歩く明治大正東京散歩」(人文社)

「古地図・現代図で歩く戦前昭和東京散歩」(人文社)
「江戸から東京へ明治の東京」(人文社)
「東京23区市街図」(東京地図出版)

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