歌わない時間

言葉と音楽について、思うところをだらだらと。お暇な方はおつきあいを。

ケイレブ・バーンズ

2007年11月25日 | 音楽について
■それからそれへと、トリニティ・クワイヤの歌手たちをインターネットで検索してみると、オペラの歌い手として活躍している人とか現代音楽でキャリアを積んでいる人とか、あるいは他の古楽アンサンブルでも活躍している人とか、彼らの只者でない様子がしだいしだいに見えてきます。それらをとおして、ニューヨークのミュージシャンたちのこともすこしづつ分かってきて面白いです。

■今回のパーセルで大活躍していたMartha Cluver(マーサ・クルーバー?)は、古楽にぴったりの声質なので、それ専門の人かと思っていたんですが、実は現代音楽のスペシャリストのようですよ。この人はビオラも弾く人で、トリニティ・クワイヤの仲間とTrinity Quartetというのを結成して、そっちでも活動しているそうです。

■そのTrinity Quartetでバイオリンを弾いているのはCaleb Burhansという人で、彼のサイトのbioに書いてあるんですが、マーサ・クルーバーの夫だそうです。ケイレブ・バーンズは今年の『アーサー王』には出ていませんでしたが、昨シーズンのトリニティ・クワイヤのコンサートの多くにカウンターテナーとして出演して、『メサイア』では第3部のデュエットでゾリに出ていました。ケイレブ・バーンズもやっぱり古楽のみならず現代音楽、ポップスやロックまでやる人なんだそうで、バイオリン、ビオラ、ギター、ピアノと弾いて、そのうえカウンターテナー。彼は『アーサー王』は欠席でしたが12月の『メサイア』には出てくるそうです。

ジェフリーとキルステン

2007年11月23日 | 音楽について
■2006年のトリニティ・クワイヤ『ダイオクリージャン』に出ていたアジア系?のお兄ちゃんの名前が分かりました。ジェフリー・シルバー(Geoffrey Silver)というイギリス生まれの人だそうですよ。どうみてもアジア系に見えるんですけどねえ。で、ジェフリー・シルバーはまさにその2006年に、他の三人の男声歌手といっしょにNew York Polyphonyというア・カペラ・グループを結成しました。サイトのトップページに張ってある写真でいうと、右下の、からだ半分こちらに向けて座っているのが彼ですね。この4人組は、つい最近、今年の10月に《I Sing the Birth》(AV2141)というクリスマス・アルバムでCDデビューしました。上にリンクしているNew York Polyphonyのサイトに跳んでもらって、トップページの下のほうのRECENT PRESSのところをクリックしてさらに跳ぶと、彼らがラジオ番組にゲストで出たときの録音が置いてあって、何曲かライブで歌ってるのを聴くことができます。なかなかのものですよ。わたしはCD買っちゃうかもしれません。

■それからこれも去年の『ダイオクリージャン』に出ていた人なのですが、アルトの、ソロはなかった女声。キルステン・ゾレク-アベラ(KIRSTEN SOLLEK-AVELLA)。この人はしかしもっと以前のハイドンのミサではしっかり美声でソロを取っていて、ほんとはちゃんと歌える人なんです。というかバッハ・コレギウム・ジャパンと共演してバッハのカンタータの録音もある人なのね。わたしは、BCJのCDはカンタータの始めのころのをたしか3枚買って、そのあとは関心もあまりなくて買ってないので知りませんでした。BCJでゾレク-アベラの顔を知ってる人がいきなりトリニティ・クワイヤのライブを見たらびっくりしたでしょうなあ。

パソコンを売る

2007年11月13日 | MacとPC
■ここに書きにこなかった一年間の間に、使っているパソコンも様変わりしました。家で使っていたPowerMacG4の、OS9でも起動できる最終版を今年の2月に売り払い、かわりにMacBookを買いました。そしてそのMacBookは勤め先に持っていって、それまで勤め先で使っていた私物のiBookG4を入れ替りに家に持ち帰りました。パソコンの中身の引越しがたいへんでしたけど、それはまあなんとかなったんです。

■PowerMacG4はソフマップに買い取ってもらったんですが、今年2月の時点で本体だけで11万にもなったのでちょっと驚きました。わたしのはそれにメモリを増設してあったので、あわせて13万円とナンボにまでなったんですよ。MacBookの本体分はそのお金をあてがって買うことができたわけです。中古のパソコンを買い取ってもらったのははじめてだったんですが、まさか、買ったときの半額で売れるとは思いませんでした。ほんとに、ダブルブートってのは人気があったんですねえ。

■それからしばらくの間、家ではiBookG4、勤め先ではMacBook(+たまに東芝のWindows機)という状況だったんですが、職場でMacBookを使い慣れると、どうしても家のiBookG4の使い勝手の悪さ──というか厳密にいうと表示領域の狭さですね。機能面ではそう大したことはやらないんで、さほどの不満はありませんでした──に物足りなさを感じるようになりまして、ひと月前のことなんですが、AppleStoreで「整備済み」MacBookのいちばん安いのを、ポチッとクリックしてしまったのですよ。そのあとすぐにLeopardが出るのは分かっていたわけですが。

『図書』11月号

2007年11月06日 | 本とか雑誌とか
■『図書』11月号を読む。冒頭に鹿島茂「いきなり「書く人」」。むかしは「書く人」になる前段階として「読む人」になるというプロセスがあった。しかし今の日本人は本なんて読まずにいきなり「書く人」になろうとする──という主旨で、大筋は同感だ。しかしその原因を、核家族化、地域コミュニティーの崩壊としている点は疑問。青柳いづみこ「カストラート事情(前編)」はカストラートについて語りつつ、カストラート歌手が登場するケイト・ロスの探偵小説『マルヴェッツィ館の殺人』を紹介する。ケイト・ロスもこの小説も知らなかったが、すでに品切れ状態のようだ。残念。『マルヴェッツィ館の殺人』からの引用文によると、去勢手術は、「七つか八つにもならないうちに、熱い風呂に入れて酒を飲ませ、もうろうとなったところでやる」のだそうだ。この前YouTubeにクリップしてあった映画『カストラート』の一シーンを思い出す。男の子が白い風呂に入っていたのだ。あれはつまり手術前だったのだろう。ほかに赤瀬川原平/川本三郎「《対談》三丁目の夕日の頃」など。

トリニティ・クワイヤ『アーサー王』続

2007年11月04日 | 音楽について
■今回のトリニティ・クワイヤの『アーサー王』では、トリニティ・チャーチのサイト上にプログラムがpdfファイルとしてアップしてあって、メンバー表も歌詞もそこにあり、どのソロを歌っているのがなんて名前の人なのかということも明記してあるので、ほんとうに至れり尽せりという感じ。去年からこれやってくれていたら、とは思いますが。

■イギリスの団体にしたって録音ごとにメンバーの出入りがあるのはふつうのことなんだから、トリニティ・クワイヤの新シーズンのメンバーが去年と入れ替わっているのもまあ当然っちゃあ当然なんですが、去年ずっと出ていた人がいなくなってると何だか心配になりますね。12月にはまた『メサイア』があるので、10月のパーセルには出てなかった人も、12月にはまた顔が見られるかもしれないと期待しておきましょう。

■この『アーサー王』での合唱の編成は上から6・4・3・6です。テナー3は少なすぎますよ。ひとりソロで前に出ると、合唱はふたりになっちゃいますからね。ただし聴いててもテナーが埋もれてしまう感じはありません。それにしてもこのクワイヤはレベルが高い。ソリスト集団でありながら、パートの声がけっしてバラケず、メンバーがかなり入れ替わっても一定の水準をきっちり保った演奏を聴かせる。

■アルトの女声でひとり合唱だけの人がいますが、あとの人は全員、どこかしらでソロやゾリを担当しています。ソリストとして貫録のある人もいれば、そうでない人もいますが、これまでと同じく、じゅうぶん聴き手を満足させるレベルの独唱・重唱だと思います。

■ソプラノではすでに書いたようにMartha CluverとそしてNacole Palmerが、テナーではスキンヘッドのDaniel Mutluの出番が多いです。バスは去年もいたRichard Lippoldが凍える神などで出番が多いものの、ニューフェイスのアフリカ系、Charles Wesley Evansという人もわりとよく出てきてソロを取ってます。凍える神は、去年の長髪の兄ちゃんのキャラだと思ってたんですけどねえ。あの兄ちゃんとPalmerで凍える神のシーン聴いてみたかったです。

■"Fairest isle, all isles excelling"を歌っているのはMolly Quinnというソプラノで、この人はNacole Palmerと並んで昨年のコンサートでもしょっちゅうソロを取っていた。華やかなNacole PalmerとくらべるとQuinnさんは甘く蠱惑的な雰囲気をただよわせる声です。例の酒盛りシーンのあと、Quinnさんが"Fairet isle"を歌いに前に出てくると、なんか「真打ち登場!」って感じがします。

■ルベル・バロック・オーケストラも微妙にメンツが入れ替わってます。去年はリコーダーの人がふたりいたんですが、ことしはオーボエの人が持ち替えでリコーダーも担当しています。ちょっと自信がないけど第1トランペットも去年と別の人のようだし、打楽器も違う人です。

『アーサー王』のパッサカリア

2007年11月01日 | 音楽について
■トリニティ・クワイヤの『アーサー王』のライブをみて思ったんですが、この曲はSとBの二重唱がほんとに多いのね。『ダイオクリージャン』よりもさらに多いよ。

■見て、聴いて、面白いのは"Your hay, it is mow'd and your corn is reap'd"ですけど、『アーサー王』で音楽的に充実していてもっとも聴きごたえがあるのは、第4幕のPassacaglia、"How happy the lover"だと思いますね。流れるような3拍子の、6分かかる大曲。じつにいい感じの前奏から始まって、テナーのソロがあり、合唱が引き継いで、間奏があって、つぎがソプラノとバスのデュエット。(さっきNovelloのボーカルスコアを見てみたら、ここのソプラノは上のB(べー)まで出てくるんですよ。そりゃこの音をスパッと出すのはなかなかきびしいわなあ。)そのあとさらに6重唱になって、最後は4部合唱でしっとりと締めくくられます。あー、この曲、歌ってみたいです。