『春になったら苺を摘みに』を思い出したら、連鎖的に蓉子を思い出し、『からくりからくさ』、『りかさん』のことが書きたくなった。
からくりからくさ
著者:梨木香歩
発行:新潮社
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縁あって一緒に暮らすようになる4人の若い女性たち。
蓉子。与希子(よきこ)。紀久(きく)。マーガレット。
蓉子は染色、与希子と紀久は織物を勉強している。
マーガレットは鍼灸の勉強をしに、日本へきているアメリカ人だ。
彼女たちが暮らす古びた一軒家は、蓉子の祖母が遺した家である。
長い年月、愛され、手入れをされてきた家は、主である彼女が亡くなった後も、その気配を濃厚に漂わせている。
その気配に守られた、一風変わった共同生活が、ゆったりと丹念に描かれていく。
両の手を使ってものをつくり、季節を感じ、自ら育ち生きる植物に眼を向けるような日々。
その共同生活の中心に位置するのが、魂を宿した市松人形、りかさんだ。
通常であれば受け入れがたい存在であるりかさん。
だがそれを受け入れて、彼女たちは暮らしている。
やがて、縁の糸が織りなす、複雑な命と想いの連鎖が次第に解き明かされていく。
この『からくりからくさ』は『りかさん』を受けて描かれた物語だ。
りかさん
著者:梨木香歩
発行:新潮社
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家主となり、それぞれ際立った個性を持つ女性たちを鷹揚に受け容れる蓉子は、幼い頃にこの不思議な人形を祖母から譲り受け、その特異な感受性を伸ばしている。
その頃の蓉子(このときは”ようこ”となっている)とりかさん、祖母、麻子さんの交流が描かれているのが『りかさん』である。
『西の魔女が死んだ』のまいのおばあさんが西の魔女なら、麻子さんは間違いなく東の魔女である。
魔女番付がもしあるなら、横綱格ではないだろうか。
正直にいうと、私は人形が苦手だ。
『裏庭』を読んだとき、すでに『りかさん』は出版されていたのだが、敬遠したのはそれが理由だった。
だが、『からくりからくさ』はすんなりと手に取ることができた。
『りかさん』の続編だとはわかっていたのだが。
いろいろな読み方のできる作品だと思う。
誰に自分を投影するかによって、この物語の痛さ、胸に届く言葉は異なってくるかもしれない。
私自身は(上記の理由もあって)マーガレットを意識していたが、知人には「紀久さんにだぶる」と言われた。
連綿と繋がっていく命。
織りあわされる願いの糸。
浮かび上がる複雑な紋様。
その途切れることのない営みの中に人は生まれる。
新しい紋様が生まれ、願いと想いを好む好まざるに関わらず伝えていく。
(名前すらその紋様の一部だと思う。そうでなければよきこ、と、きくにはならないだろう。)
次の命へ、次の紋様へと。
血によって、あるいは血よりも濃い縁によって。
『からくりからくさ』を読んだ後、文庫で『りかさん』を読んだ。
長い時をかけて果たされた願いに涙が零れた。
一面のイチゴ畑の広がりが静かにきらきらと目の前にひろがりました
まいのお父さんの言葉の通じなさ、現実的というか・・・ああ、男の人だ、こういう上司いるのよね・・・って感じて(悪人ではけっしてない)
西の魔女が「死」について語る所は思わず友人に電話で読み聞かせをしてしまいました。
自分でも「生きるって・・・修行でもありチャンスなのか」「確かにこたつに蜜柑のしあわせも身体がないとむりだわな。」と感動・・・年頭によいものを読んだという感じです
ではこんどは「りかさん」でしょうか「からくり・・」とどっちが先がよいのかなあ・・・。
私も年頭に再読を決意です。
>ではこんどは「りかさん」でしょうか「からくり・・」とどっちが先がよいのかなあ・・・。
発行順でいうと、『りかさん』なのですが、私としては『からくりからくさ』をおススメします。
私自身がその順番だったのですが、『からくりからくさ』を読んだ後『りかさん』を読むと『りかさん』を書いていた時点で『からくりからくさ』を含めての構想がきちんとできていたことが実感できて、『りかさん』が味わい深くなると思います。