『時間封鎖〈上・下〉』の続編です。
無限記憶
著者:ロバート・チャールズ・ウィルスン
発行:東京創元社
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スピンの終わり、突如インド洋上に現れた、それはそれは巨大なアーチ型の物体の向こう側に人類が初めて渡った前作の終わりから30年後の世界。
「仮定体」がアーチの向こうに準備していたのは、人類が適応できる範囲の環境にある別の惑星でした。
地球とこの星がつながれた意図も、そもそも地球を時間的に封鎖していた「仮定体」の正体すらも、わからないままだというのに、多くの人が入植し、都市を形成しています。
地球ではありませんから植生や気候、1日の時間などは多少違いますが、人類の持っている技術がSFっぽく進んでいるという設定ではないので、今のこの世界からそのまま地続きな感じ。
登場するのは、まず少年アイザック。
街から遠く離れた辺境に、数人の大人たちと暮らしています。
子供は彼ひとりだけ。
彼は、自分が何かを期待されている存在であることを知っていますが、それに応えることができていないこともわかっています。
ある日、彼らが静かに暮らす土地に、1人の老女がやってきます。
名前はスリーン。
アイザックは彼女の存在に不安感と安心感の両方を覚えます。
物語はもう1人、若い女性リーサを追います。
リーサの父親は「仮定体」と「第4期」に興味を持って研究していた学者でしたが、リーサがまだ幼い頃に突如失踪。
成長した彼女は父親の失踪の真相を調べようとしていましたが、その手がかりとして1人の老女が浮かび上がります。
それもまたスリーンでした。
父の事件を発端にして、彼女はスリーンの過去、アイザックの秘密、ひいては「仮定体」の謎の一端を知ることになります。
突如として起きた、降灰にも似た現象はいったい何の前触れなのか。
街をすっかり覆いつくした灰状のものの中から生まれ出た不気味なものたちは何なのか。
「仮定体」とはどのような存在なのか。
花びらの真ん中にぎょろりとした眼を持つバラに睨まれるなどということを体験したくはありませんが、降りしきる灰の中から生まれた異形の森は映像でみてみたい気がします。
前作は上下巻の大作で、今回は1巻で完結。
作中で描かれる時間がさほど長くないので、ぎゅぎゅっと詰まった読み応えとおもしろさがありました。
植民開始から30年。
スピンとスピン後を一般市民として体験した人間たちのなかでも、得体の知れないアーチの先を自分の生きる土地として選んだ人がいる反面、けっして、それを受け入れられない人も描かれます。
それを受け入れたのがリーサと、リーサの恋人・ターク。
受け入れない人の代表は、リーサの母親とリーサの元・夫ブライアン。
これは、決定的な違いのような気がします。
ただ、ブライアンはつまらないダンナのままで終わるのかと思ったら意外と心境の変化が大きく、タークのほうも、ちょっと突っ込んだ進路になったので、ふたりともに意表をつかれました。
これは次作へのつながりになるのかしら。
第3部の予定があるのだそうです。
今回の『無限記憶』は前作からの登場人物の流れがはっきりあって、それがさらに先へ続くとなれば、最後まで読まないと気がすまないという気がしてきます。
『仮定体』とはいったいいかなるものか。
著者が準備している答えはどういうものか。
『時間封鎖』で読むのをやめていたら、こんなふうには思わなかったと思うのですが、読んでしまったのでもう手遅れ。
時折思い出してはじりじりすることを続けなければならないようです。
先は長そう・・・。
言ってみれば、『スター・ウォーズ』のエピソード2とか5の気分で、
まさに、
》著者が準備している答えはどういうものか
が気になって、これ自体では「何とも言えない」という気分です。
ただ、なんというか、、、
「肉体って、邪魔のね・・・」
というのが、もどかしいですよね(笑)
・・・最近、重いし(爆)
このエピソードなしに最後にいくのはいきなりすぎるんだけど、まとめてしまうと上下巻でも収まらないことになりそうだからと分けてだしたら、「時間封鎖」の続きとしか言えない、物語の途中の本になってしまったという感じですよね。
もうできてるんだから、早く読ませてほしいものです。最後。
「Vortex」、どんな書名になるのでしょうね。
興味深い作品を紹介していただき、ありがとうございました。改めて。