横浜の司法書士安西雅史のブログ

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相続放棄と代襲相続(控訴審判決)

2010-07-17 | 実務ノート

山形地裁平16(レ)第17号 貯金債権支払請求控訴事件
平成17.3.15判決
参照条文 民法882条、887条、939条


1 事案の概要(一部省略)


本件は、亡Aの相続人である控訴人〔原審原告〕が、亡Aが被控訴人〔原審被告/郵政公社〕に対し預けた原判決別紙貯金債権目録記載の通常郵便貯金の払戻請求権を控訴人が単独で相続したと主張して、被控訴人に対し、内金100万円の払戻し・・・・・・の支払いを求めている事案である〔関係図参照〕。



2 当事者の主張

争点(1)親の相続を放棄した子は、親を代襲して祖父母の相続人となるのか。



ア)被控訴人の主張

代襲相続における代襲者は被代襲者の子であればよく、その相続人であることを要しないから、代襲者である子は、被代襲者である親の相続を放棄したときでも、親を代襲して祖父母の相続人となる。



イ)控訴人の主張

昭和63年6月21日最高裁判決は、いわゆる再転相続の場合、親の相続を放棄した子は、もはや祖父母の相続につき承認又は放棄することはできないとした。・・(中略)・・したがって、親の相続を放棄した子は、代襲相続においても、親を代襲して祖父母を相続する余地はない。



3 当裁判所の判断

争点(1)親の相続を放棄した子は、親を代襲して祖父母の相続人となるのかについて。

民法887条二項は、代襲相続について、・・(中略)・・・・と規定している。また、親の相続を放棄した子が、放棄された親を代襲することを否定する規定は、民法に存在しない。そして、民法939条は、相続放棄の効力を、「相続放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」と規定しているのであり、これによれば、相続放棄は当該被相続人の相続に関しての相対的な効力を有するにすぎないから、親を被相続人とする相続に関して子が相続を放棄したところで、その効力が、親を被代襲者、子の直系尊属を被相続人とする相続に関して及ぶものではないと解される。・・・・以上によれば、・・・・子は、被代襲者である親の相続を放棄した場合であっても、被代襲者の子で、被相続人の直系尊属で、かつ被相続人の相続開始時に存在するとの三つの要件を満たせば、相続放棄された親を代襲して祖父母の相続人となることができると解すべきである。以下、省略。



参照条文民法

(子及びその代襲者等の相続権)
第887条  被相続人の子は、相続人となる。
2  被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3  前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第981条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。


参照文献 

月報司法書士2005.5「講座 家族法研究ノート 相続放棄と代襲相続」
著:本山敦先生



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