横浜の司法書士安西雅史のブログ

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増改築した建物の同一性について

2011-11-18 | 業務日誌


建物の所有権移転登記を申請する際に、対象の建物の登記記録の内容が評価証明書の内容と大きく食い違っていることがたまにあります。先日扱ったある登記手続では、登記の対象となる建物(以下「A建物」。)の登記記録には<木造瓦葺平家建 床面積○○平米 昭和 年 月 日新築>とあり、依頼者が用意したA建物(と考えられる)評価証明書には<木造スレート葺2階建て 当初建築年 平成 年 月>と記録されており、また、摘要欄に増築等の記録はありませんでした。

さて。悩ましい

これはホントに同一の建物なんだろうか、疑問が沸きました。。

たとえば、A建物は既に取り壊しており、滅失登記がされておらず、平成 年に新しい建物(ex:A’建物)を建て替えたというケース。もしそうだとすれば、存在しない建物について所有権移転登記をしてしまうことになり、しかも登記の原因となる法律行為が、現在のA’建物でなく、滅失しているA建物に関して行われたとあれば、非常にマズイことになります

依頼者に確認しても、相続などのケースで当時の資料がなく詳しい事情はわからないといった場合は、要注意だと思います。


因みに、登記された建物の一部を取り壊し、その部分に増築した場合、建物の同一性が認められるなら「増築による建物表題変更登記」をすることになりますが、同一性が認められない場合は、増築部分について新たに「表題登記」をすることになります。ただこれらに関しては、登記手続上の明確な基準はなく、判例等を参考にして、個々の事案ごとに慎重に判断していく必要があります。



~参考判例~

<事件名>
家屋明渡請求
<裁判年月日>
昭和50年07月14日
<判示事項>
建物の改造によるその物理的変化と新旧建物の同一性の有無
<裁判要旨>
建物につき改造がされ、物理的変化が生じた場合における建物の同一性の有無については、新旧の建物の材料、構造、規模等の異同に基づき社会観念に照らして判断すべきであり、右建物の物理的変化の程度によつては、新旧の建物の同一性が失われることもありうる。

サイト
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319130403562444.pdf

以上。



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