お雛祭り

 実家には、母方の祖父母が買ってくれたお雛様があって、子供の頃には、桃の節句のたびに、お座敷に華やかな姿を見せたものであった。
 雛人形を飾る作業は楽しい。父や母に雛壇を組み立ててもらい、赤い毛氈を敷いてもらったあとで、納屋から幾つもの人形の入った白い紙箱を運んで、お座敷で開ける。同じような箱であるから、中がなんであるかは開けるまでわからない。ふたを取って、人形を包んである柔らかな薄い紙をそうっとはがして、それがお雛様であったら、大当たりで、得意でうれしいのである。雛壇の一番上に置いて、胸元に掲げられた白いたおやかな手の上に、長い房のついたきれいなお扇子を持たせてあげる。ほかには、黄色い実のついた橘の木や、ガラス玉の目が本物そっくりな、黒毛の牛がひく牛車などが好きであった。
 もうお雛様が飾られなくなって久しいけれど、今でも、桃の節句の頃に実家へ帰ると、母がちらし寿司を作ってくれるのが、気恥ずかしくもありながら、うれしいことである。
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コメント
 
 
 
Unknown (さつき)
2007-03-02 15:51:58
家のお雛様はお内裏様と道具の他は、ガラスケースに入った藤娘とかのお人形なんです。
子供の頃に親戚からお祝いにもらったものを飾っています。
だから、そういうのが普通だと思ってました。
普通と違うと気付いてからは、三人官女とか、五人囃子とかあこがれだったな…

古くなりましたが、今年もなんとか月曜日に出しましたが、そろそろしんどいので、今年が最後かもね…と母と話しながら飾りました。
雰囲気だけでもいいですよね、やはり桃の節句とちらし寿司。(^^)
 
 
 
苦い思い出 (のり)
2007-03-03 21:34:23
子どもの頃、外置きの物置の中に仕舞われていた妹の雛人形。
母が一体一体手作りした雛人形。
弟とその物置の屋根に上がり遊んでいました。
その所為で屋根に目に見えない穴が空き、
漏れた雨に濡れてカビが生え、黒く汚れてしまった雛人形。
悪気があってやったのではない私と弟の前で叱りもせずただ涙を流していた母を思い出します。
妹が結婚して娘が誕生したらプレゼントしなくては・・・。
 
 
 
さつきさんへ (チナツ)
2007-03-05 15:16:48
いくつになっても、お雛様を飾ったり、ちらし寿司を食べたり、いいですよね。
うちは男の子ですが、ちらし寿司は作りました。まあ、みゆちゃんは女の子だから、お雛祭りをしてあげたらいいかもしれませんが(ちらし寿司は食べませんけれど)。
 
 
 
のりさんへ (チナツ)
2007-03-05 15:18:17
お母様の手作りだったんですね…
もし姪御さんが生まれたら、気持ちのこもった素敵なプレゼントになりますね。
 
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