福島章恭 合唱指揮とレコード蒐集に生きるⅢ

合唱指揮者、音楽評論家である福島章恭が、レコード、CD、オーディオ、合唱指揮活動から世間話まで、気ままに綴ります。

「第9シンフォニーの夕べ」逆境を力に変えた大フィル合唱団

2021-12-30 00:58:36 | コーラス、オーケストラ

朝比奈先生の20回目の命日のこの日、1964年からつづく大フィル伝統の「第9シンフォニーの夕べ」初日が大盛況のうちに開催された。

昨年はマスク着用のうえ、オーケストラとコーラスの間に、人の背丈を超すアクリル板が置かれ、しかも1日だけの公演。それでも、舞台に立って歌える歓びを噛みしめたものだが、今年はアクリル板を外し、オーケストラとの一体感を感じながら、満席に近い聴衆の前で歌うことができたことは、ひとつの前進と評価して良いだろう。ここまでお膳立てしてくださった関係者のご尽力に感謝を捧げたい。

大フィル合唱団の健闘を讃えたい。
未だ外すことの叶わなかったマスクによって声をミュートされ、換気のために開かれた反響板の隙間に声を吸い取られ、さらにメンバー間の大きなディスタンスによりアンサンブルが困難となる、という三重苦をものともせず、力強く歌いきってくれた。

春の「戴冠ミサ」以降、マスク対策のため、呼吸法、発声、そしてディクションの強化が求められ、対策を施してきたわけだが、それが実を結び、いままでにない力強さを身に付けてくれたように思う。

今宵のクオリティのまま、マスクを外すことができたなら、どれだけ感動が上積みされることだろう。しかし、これが終点であるはずもなく、まだまだ課題はある。裏を返せば、伸びしろはある、ということであり、更なる成長に期待したい。

ワイケルト先生との共演は叶わなかったものの、代わりにいらしたデスピノーザ先生との出会いは幸せなものであった。マエストロからは、これまでの大フィル合唱団にはなかった軽やかなアプローチへの可能性を拓いてくださったし、ドイツ語ディクションへの課題も頂戴した。大フィル合唱団の新しい財産となったことは間違いない。

そして、三宅理恵さん(ソプラノ)清水華澄さん(アルト)福井 敬さん(テノール) 山下浩司さん(バリトン)による輝かしい声とアンサンブルにも、感動を頂いた。まさに声による至福の饗宴であった。


2021年12月29日 (水) & 30日(木)午後5時開演

フェスティバルホール

指揮:ガエタノ・デスピノーサ

独唱:三宅理恵(ソプラノ)清水華澄(アルト)
   福井 敬(テノール) 山下浩司(バリトン)
合唱:大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指導:福島章恭)

ベートーヴェン/交響曲 第9番 二短調 作品125「合唱付」


コメント (1)
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