代表の久田です。
たいへん遅ればせながら、石井光太著「遺体」を読了しました。
2011年3月~4月にかけて、釜石市の遺体安置所となった旧釜石第二中学校体育館を中心に
釜石市で1,000人を超える方々のご遺体に関わった方々のドキュメンタリーです。
映画「遺体 明日への十日間」(西田敏行主演)の原作にもなった作品で、2011年に出版されていますので、
すでにお読みになられた方々もいらっしゃるかと思います。
私自身は書店で何度もこの本の背表紙は見ていますが、なかなか手にとることができませんでした。
理由は、石井光太という作者を知らなかったことで、興味本位に書かれているように思ってしまったからです。
昨年、私は世界の貧困国や貧困地域の人たちを対象したNGO愛知ボランティア・クルーfor People of Forth Worldを立ち上げ
世界の貧困に関する本をいろいろ読んでいます。
その中の一冊に石井光太著「絶対貧困 世界リアル貧困学講義」(新潮文庫)があります。
若い著者が2000年代初頭のアジア各国の貧しい言い人々の生活の中に飛び込んでいった中から学んだことがまとめられていました。
物乞い、障がい者、ストリートチルドレン、売春婦・・・
真摯な取材に心を打たれ、著者の海外ルポをかなり読みました。
そこで、ようやく「遺体」も読んでみる気になりました。
「遺体」は、震災ボランティアに関わる皆さんには、ぜひお読みいただきたい本です。
愛知ボランティアセンターは、これまで震災で亡くなられた方々の数のキャンドルを手作りして慰霊してきました。
亡くなられた方々の人生、残された方々の思いを綴った新聞記事などをお読みになられることは多いと思います。
しかし、ご遺体を探された自衛隊、消防団、海上保安庁のみなさん
ご遺体を遺体安置所まで運ばれた釜石市職員
ご遺体を検案される医師、歯の確認をされる歯科医
遺体安置所でお一人お一人のご遺体や、ご遺族に丁寧に語りかける民生委員さん
ご遺体を弔うために奔走される僧侶
秋田県の火葬場へご遺体を運ぶ消防団
などなど、実に多くの方々が亡くなられた方々を丁寧に弔っていらっしゃる姿が丁寧に描かれています。
こうした姿を知るにつけ、一本一本のキャンドルの意味がさらに大切になってくるように思います。
著者は「取材を終えて」でこう書いています。
震災後間もなく、メディアは示し合わせたかのように一斉に「復興」の狼煙を上げはじめた。だが、現地にいる身としては、被災地にいる人々がこの数え切れないほどの死を認め、血肉化する覚悟を決めない限りそれはありえないと思っていた。復興とは家屋や道路や防波堤を復興して済む話ではない。人間がそこで起きた悲劇を受け入れ、それを一生涯十字架のように背負って生きていく決意を固めてはじめて進むものなのだ。
私は「がんばろう」と大書されたスローガンに、実は違和感を抱いています。
それは筆者のいう「復興の狼煙」と同一のものと思います。
10月から、今年も亡くなられた数の追悼キャンドルを作ります。
亡くなられた方々、お一人お一人を悼みながらの活動です。
筆者のいう「数え切れないほどの死を認め、血肉化する」活動でもあると思います。
皆さんのご参加を今年もお願いします。
よろしければ、石井光太著「遺体 震災、津波の果てに」をお読みください。
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