アジアと小松

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小松基地問題研究会

『金東仁作品集』を読む

2012年03月04日 | 読書
『金東仁作品集』(朝鮮近代文学選集5 平凡社 3200円)を読む

 作品集中の「笞刑─獄中記の一節」(1922年)について、

 「笞刑」は3・1独立万歳運動で逮捕された金東仁の体験を小説化したものである。歴史書などを読んで、3・1独立運動に対する弾圧の苛酷さについては、理解しているつもりだったが、小説は歴史書よりも、感情が移入されている分、訴える力が大きい。

 金東仁は5坪に41人(畳1枚に4人)が詰め込まれた。全員が横になって眠れるわけではない。24時間3交替制にして、3分の1が横になり、残りは立っているというのだ(16時間も!)。それが3・1から、3ヶ月を過ぎ、真夏を迎えても続いているのだ。

 暑熱、汗、臭い、南京虫、熱病、皮膚病が蔓延している。
弟も逮捕され、長兄も、父母も行方がわからない。

 70歳を過ぎた老人にも笞刑90回が科せられ、苦痛に耐えきれずに死んでいった(殺された)。そして、金東仁はその老人を守れなかったことに心がうずいた。

「あんたは自分が死ぬことばかり心配しているが、あんただけが人間かい。あんたが1人出ていきゃ、この監房にいる40人の場所がそれだけ広くなるってことを忘れたのかい。息子が2人とも弾にあたって死んだってのに、老いぼれ1人生き残ってどうするってんだ。ええ!」という、金東仁の言葉に、

「あんたの言うことが正しい。わしの息子はきっと2人とも死んじまったのじゃ。わし1人生きておっても仕方がない。控訴を取り下げてくれ」と言って、看守に引かれていった。
 そして殺された。

 八田与一と嘉南大圳について調べたときにも、『新聞配達夫』(楊逵著 1934年)、『新興地の悲哀』(蔡愁洞著 1931年)を読んで、歴史書には現れてこない台湾農民の実情を知ることが出来た。

 日本の植民地支配と侵略戦争の実態を認識するためには、当時の、被害を受けた人々の作品に接するべきだと思う。
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