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『競争と公平感』 市場との付き合い方を知らない日本人

2010-10-20 00:47:22 | TV・書籍
『競争と公平感』(大竹 文雄 (著) )

本書は「週刊東洋経済」2010年上期 経済書・政治書ベスト2位にランクインしている。
評価を得るに値する本なのは間違いない。
特に、第1章の「競争嫌いの日本人」の中で語られている
日本人が「市場」や「国による再分配」をどう考えているかというくだりは、
今後様々なところで引き合いに出される事になるであろう。
(実際、いろんなところで耳にする)

だが、私はこの本を読み終えて紹介予定本としてスタックに積んだのだが、
どうにも筆を進めることができず、実際にこうしてエントリ化するのに非常に時間がかかった。
なぜかというと、この本で取り扱っている「公平」というテーマがあまりに壮大過ぎるからである。
「公平」に関する自分の立ち位置を明らかにすることができるかどうかが悩みだった。
著者が思い切って自説を並び立ててくれれば、まだ私の意見も表明しやすいのだが、
この本は、著者の誠実さがよく出ており、「公平」について無理な解答を用意していない。
それがこの本の良さでもあり、悪さでもある。

ただ、「公平」の問題がやっかいなのは、壮大というだけでなく日本における今日的なテーマであるという点だ。
難しいからといって避けて通ることもできない問題なのである。
議論を躊躇して踏みとどまるよりも、一歩踏み出すことによって得るものの方が大きい。
そんな動機で、今日このエントリを書くことができた。
「公平」に関する議論はこれからも永遠に続くのかもしれないが、
だからこそ皆で話し始めることに意味があるともいえる。
そのキッカケとして、この本は大変役に立つことだろう。

では、内容について少し触れたい。
この本のハイライトは、前述したように第1章にある。

まず、
日本人は、社会主義国家よりも、市場を信用していない。
しかし、それと同時に、
日本人は、アメリカ人よりも、国による再分配も信用していない。
つまるところ、
日本人は、格差を嫌い、格差が発生しない仕組みによって貧困を抑止することが重要だと考えている。

これには、幾つか予想できる理由がある。
まず、
日本人は、人生における成功は、努力に依存するのではなく、運やコネに依存すると考えている。
自分の胸に手を当てて考えて欲しい。
多くの日本人は、成功とは、自分の力とは関係ない他の要素で決まるのだと考えているのだ。
そして、
日本人の多くは、勤労努力をすれば貧困を避けることはできると考えている。
要は、日本人の頭の中では、貧困と怠惰が結びついていて、国による再分配は怠け者を助けることになるのだ。

果たして日本人のこの考え方は正しいのだろうか。
著者は、日本人の市場競争に関する無理解が、この誤まった考えを導くと示唆している。
つまるところ、多くの日本人は、市場と市場との付き合い方を知らないのだ。
(日本が置かれている状況にも理解が足りないということもいえる)
この原因としては、日本の学校教育の問題や、文化的背景も影響していると思われるが、
この本では「公平」に関して多角的に説明しているので是非参照されたい。

私自身、この問題についてどう考えるかというと、
基本的には「負担と利益の関係が見えにくい」というところに
「運やコネ」や「貧者の怠惰」といった思い込みの原因があると思う。
「負担と利益の関係」が見えないために、「公平な負担」を実感することができないのだ。
しかし、これは歴史的に見れば、むしろ責任を分散するための知恵であったとも思え、
一概に「見える化」や「オープン化」が日本における解決に直結するとは言い難い。

やはり、陳腐な言い方になってしまうが、
市場経済の発達とともに、日本人の意識も変わっていかなければならない部分があったのだが、
意識の方に変わらずに残ってしまった部分が多いのではないか。
日本人が構築したシステムがなまじ素晴らしかっただけに、
意識の変革を必要とせずともある水準までの経済発展が可能であった。
これ自体は成功なのだが、しかし、この成功体験が今日の行き詰まりの原因となってしまった。
そうなると、本の紹介といいつつ当Blogの主張と結びついてしまうのだが、
戦後民主主義の功罪ということにならないか。

続きは、この本の内容からはずれてしまうのでやめにしておこう。


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