その星系では激しい戦闘が行われていた。艦隊からは重力波砲やレーザー砲、更には相転移砲まで打ち込まれるが、ベヅァーはそれらを受けてもビクともしない。ハエでもたたき落とすかのように、ベヅァーによって次々に爆発消滅していく艦艇。それは戦いというよりも一方的な破壊だった。すでに百万隻以上もの艦艇が沈んでいる。
しかし、数十時間が過ぎているにも関わらず、戦いは膠着状態となっていた。それは、この場に送り込まれる艦艇や艦載機の数が多すぎたからだ。艦艇が破壊されるたびに、どこからともなく艦艇が転移してくる。艦艇を破壊されたら、それを補充するかのように艦艇が現れる。この繰り返しが、この膠着状態を生んでいた。
ベヅァーに対して送りつけられている戦力は、ブリタニア帝国軍の凍結艦隊で全て無人だった。帝国軍の正規艦隊や独立艦隊は待機状態のままで動かしてはいない。
帝国は新造艦を正規艦隊に配備させてそれが旧式化したら独立艦隊に配備させる。そして独立艦隊でも旧式となった艦艇に関しては標的艦にするなり凍結艦隊に加えるなりさせていた。
つまり、凍結艦隊はブリタニア帝国の旧式兵器の集まりにすぎない。本来ならばそれらは標的艦にするなり廃艦処分にするなりするべきであるが、帝国はあえてそれをある星系に凍結させておいた。これは本来なら良くないことであった。凍結している艦艇を盗まれ出もしたら、治安や国防に対する悪影響は計り知れない。
そもそも主要艦艇に搭載されている縮退炉は、意図的に暴走させれば人工ブラックホールとなり、星系そのものに深刻なダメージを与える物だ。それだけに、そういった装備などは軍が厳重に管理しているし、凍結艦隊も一個独立艦隊の護衛をつけていた。とはいえブリタニア帝国が、なぜそこまでして凍結艦隊をもとうとしたのか、それはこのためだった。
破壊神ベヅァーは、帝国軍の装備では太刀打ちできない。それは最初から分かっていた。凍結艦隊の存在目的は、ベヅァーが出現したときにそれを足止めするという物だ。つまり、使い捨て前提の物であり、それゆえ旧式艦隊は有人艦であっても無人で操縦できるようになっていた。
この凍結艦隊と切り札たる『超16号』を任されていたのが人工知能のカグヤだった。カグヤは凍結艦隊を散発的に送り込むことで、ベヅァーが一気に艦隊を殲滅できないようにしていた。ベヅァーの攻撃力からみれば、下手に戦力を集中すれば一網打尽にされるだけだが、この散発的な行動によって時間稼ぎに成功していた。
「は、はははっ!!」
ベヅァーが笑いながら艦隊を凪払う。圧倒的な強さで遊び半分で艦隊を壊滅させていく。
「うん?」
次の艦隊が送り込まれてこない。とうとうネタ切れかと、ベヅァーが考えていると何者かが転移してきた。それは六体の超16号と二人のサイヤ人だった。
ミズナside
「お前がベヅァーか。よくもやってくれたね」
ミズナは怒りに満ちた声で言う。監察軍のトリッパー達はミズナにとって仲間であり、その仲間を殺されたことで怒っていた。
ミズナが超サイヤ人4となる。それに続きブロリーも超サイヤ人4となった。二人はベヅァーに向かい、六体の超16号もそれに続いた。
ミズナはかつてない危機を迎えていた。この時、ミズナは戦闘力240京~2400京に達しており、ブロリーも300京~3000京、超16号は戦闘力で概算すると10京に相当する強さだ。この八人で挑むのだ。いくらベヅァーといえども大きく弱体化している今ならば十分に勝算があると思った。
しかし、それは甘かった。本来の1正分の1にまで弱体化しているとはいえ、それでもベヅァーの強さは戦闘力に概算すると1垓(10の20乗)という桁違いのものだった。六体の超16号はあっさりと瞬殺されて、ミズナとブロリーも叩きのめされている。
そもそもミズナは、自分では勝てない相手と実戦で戦ったことはない。それは何故かというと、余りにもリスクが高すぎるからだ。
ドラゴンボールでは自分よりも強い相手と戦って死ぬという場面は多い。トリッパーであるミズナは、下位世界の者とは違って死んだらそれまでだ。いくらドラゴンボールでも生き返ることはできない。
おまけにミズナには他のサイヤ人にはない特性がある。それが不老長寿。長き時を老いることなく生きる事が出来る故に、時間をかけて修行して強くなる事が可能で、フリーザや人造人間と言った強敵達に対してもこれで対応していた。
昔はとてもかなわない相手でも時間をかければ苦もなく倒せるようになる。故に慎重になる。トリッパーとしての原作知識を最大限有効活用してリスクの高い戦いを巧みに避けてきた。
確かにミズナも死にかけた事はあるが、それは全て戦闘力を向上させるために修行中にワザと死にかけただけで、敵に殺されかけた事はない。常に格下の相手とのみ実戦を積んできたミズナ。故に自分を圧倒する相手は初体験だった。
計算外だ。まさかここまで強いとは…。ボロボロにまで叩きのめされて意識がばやけている。
「他愛もない。まあいい、トリッパーは一人も生かしておくつもりはない」
ベヅァーの死の宣告。そんなミズナの側に魔法陣が現れて、シドゥリが転移してきた。
「シドゥリ!?」
「ほう、またトリッパーが現れたか。ちょうどいい。お前も始末してやる」
「……シドゥリ何をしにきたの? 貴女では相手にならないわ!」
確かにシドゥリは、『魔法少女リリカルなのは』の魔導師という分類では規格外の強さを誇るだろうが、『ドラゴンボール』の超戦士達と魔導師では、次元違いなまでに力に差があるのだ。いくら専用艦の魔力バックアップを受けても、フリーザごときにすら全く太刀打ち出来ない程度の強さでしかない。そんなシドゥリが、ベヅァーに勝てるわけがない。
「ミズナ、ここは引くわよ」
シドゥリが倒れて動けないミズナを抱きかかえる。
「逃がすと思うか!」
そんなミズナ達に迫るベヅァー。
「くっ!?」
マズイ。だが、そんなベヅァーをブロリーが横から蹴り飛ばす。
「ブロリー!」
「姉上、早く逃げるんだ。俺には今の奇襲で精一杯だ」
「すまない」
シドゥリはミズナを連れ転移魔法でその場を転移した。
ブロリーside
「やってくれたな。死に損ないが」
起きあがったベヅァーが、不機嫌そうに言う。
死に損ないか。確かに今の俺はボロボロだ。まさか、これほどの強さを持つとはな。だが、姉上を殺させるわけにはいけない。こいつは、ここで始末する。
「お前は、ここで死ね」
「貴様ごときが、この俺を殺すだと?」
バカにした顔。
「いくらお前でも、粉々に吹っ飛べばどうだ?」
「!?」
ベヅァーの顔に驚きが浮かぶ。
「うおおお!!!?」
ブロリーの全身が激しく光り、星系ごと大爆発を起こした。
side out
特別保護星系。その星系は監察軍に貸し出していたものであったが、凄まじいエネルギーの放出により星系ごと消し飛んでしまった。超サイヤ人4のブロリーが全力をもって自爆したのだ。その破壊力は星系を破壊して余りあった。
しかし、そんな星系に闇が集まり、それは人型を形成した。破壊神ベヅァーだ。確かにブロリーの自爆はベヅァーを吹っ飛ばしたが、ベヅァーはまるでダメージを受けていなかった。
ベヅァーは上位世界人たちが下位世界を創造する際に発生する反作用の結晶体だ。つまり生命体ではなく、一種のエネルギーの集まりに過ぎない。だから、普通に首を刎ねたり頭を破壊したぐらいで滅びはしない。ベヅァーを消滅させるにはそのエネルギーを消し飛ばすしかない。
「さてと、トリッパーはどこだ?」
ベヅァーは先程取り逃がしたトリッパーに意識を集中する。トリッパーの魂は他とは違いかなり特徴がある。何しろ存在するだけで反作用を中和していくのだ。ベヅァーにとって忌々しい存在であるが、そうであるが故に見分けるのも簡単に出来る。
今回のベヅァーの目的はトリッパーを一人でも多く始末することだ。ベヅァーの本来の目的は多くの下位世界をその並行世界ごと破壊すること。しかし、トリッパー達の所為でいつまで経ってもそれができない。だから今回はトリッパーの始末に集中する。
しかし、いまのベヅァーは弱体化していて下位世界を並行世界ごと滅ぼすことはできない。確かにこの世界を滅ぼすだけなら今でも可能であるが、並行世界を潰せない以上、無限に存在する世界の中に可能性を一つ潰しただけという結果になるだけだ。
トリッパーさえいなくなれば、自分の邪魔をするものはいなくなり、晴れて万全な状態で思うままに下位世界を破壊し尽くすことができるようになる。
「ほう、この世界に数人がバラバラにいて、近隣の次元世界には複数が一箇所に集まっているな」
『魔法少女リリカルなのは』の世界は次元世界という膨大な数の世界を内包している下位世界であった。シドゥリは個人転送でいける近隣世界に次元転移していたのだ。トリッパーの場所を見つけたベヅァーは、ミズナ達を追撃させる為にその場を転移した。
解説
■超16号
『ドラゴンボール』で登場した人造人間16号を監察軍の技術力で魔改造して作られた人造人間。監察軍は、人間を素材に人造人間を作ることを嫌がったので、全人工製の人造人間、つまり完全なロボットである16号と19号は研究素材として重宝されていた。原作の16号はモヒカン刈りな髪型であったが、超16号は普通に髪が生えている。あまりに強力すぎることから危険視されていたが、ベヅァーとの戦いに備えて帝国内で六体製造されていた。ブリタニア帝国で最終兵器扱いされているだけあって確かに凄まじい強さを持っていたが、ベヅァーには歯が立たず全機が破壊された。
■凍結艦隊
ブリタニアに存在するとある星系で凍結されている旧式艦隊。表向きは艦艇の解体コスト削減の為とか、標的艦の補充のためとか口実を設けているが、本当の目的はベヅァーが出現した時に、足止めをする捨てゴマ。
■カグヤ
ブリタニア帝国記で登場したAI。シドゥリに対して絶対的な忠誠を誓っており、その為に凍結艦隊と超16号という強力な戦力を任されている。カグヤは最初からAIという作られた物であるという事とその忠誠心から、トリッパーや下位世界の真実を知っても問題はないと判断されたので、シドゥリにそれらの情報を教えて貰っている。ちなみに、人間の場合はアイデンティティに関わるし、色々と問題があるので秘匿されている。
超戦士伝説オリジナルの戦闘力情報
超16号:戦闘力10京
ミズナ(通常):戦闘力12兆
ミズナ(超サイヤ人4):戦闘力240京~2400京
ブロリー(通常):戦闘力15兆
ブロリー(超サイヤ人4):戦闘力300京~3000京
破壊神ベヅァー(1正分の1にまで弱体化):戦闘力1垓(10の20乗)
破壊神ベヅァー(フルパワー):戦闘力1那由多(10の60乗)
誤字
激しい戦闘が繰り広げていた。
激しい戦闘が広げられていた。
確かにブロリーは公式チートですから、それもありえそうですね(笑)。
誤字報告ありがとうございました。とりあえず修正しておきました。