ASTの魔術師は、ハイレグな格好で妙にメカメカしい、自衛官というよりもエロ戦闘員みたいな女性たちである。そのASTとの戦いで、彼女たちは空中で銃やミサイルなどを打ち込んできた。私をそれを避けるか防ぐかしつつ天使の槍で敵を仕留めていた。
空戦、つまり空中での戦闘は陸戦とは勝手が違う。そもそも人間は地面を足で立った状態で活動するものだ。それは戦闘でも変わりなく、そうなると陸戦では正面だけでなく360°注意しながら戦うものであるが、上と下が死角となっている。
それは地上戦ではさほど問題にならないが人が空を飛びながら戦う空戦の場合は、上や下から敵が襲い掛かることもある為、360°どころか全天周囲の敵味方の位置関係を把握しておかないといけない。
そこで重要となるのが空間認識能力である。どこに何があるのか瞬時に把握する能力であるが、それがないと空戦に支障が来すのだ。とはいえ、精霊になった為にその手の能力もある程度は得ており、後は経験を積んでそれを磨き上げればいいだろう。
霊結晶をとりこんで精霊となった私は天使である特殊な槍や霊装という強力な鎧(といっても気鋼闘衣には及ばない)を手に入れていたが、それ以上に自由自在に空を飛べるようになったのが大きかった。
これまで私は様々な世界で戦ってきたが、それは何れも地上つまり陸戦ばかりだったのだ。空中戦をやるような世界じゃなかったからそれも当然です。勿論、気が使えるので【ドラゴンボール】の舞空術を習得すれば空を飛べるのでしょうが、その必要はなかった。
しかし、この世界では精霊となった私と敵対しているASTやDEMなどの魔術師たちが空戦を得意としている以上、空戦の必要性が高まっていた。また、これまで必要なかったとはいえ将来的に空戦技能が必要な世界に行くことがあるかもしれないし、そうでなくても空戦ができるのは何かと便利だろう。
それらの事を考えればASTやDEMの魔術師は空戦の実戦経験を積むのにちょうどいい相手だろう。何しろ、精霊の反応を隠蔽せずに出しているだけで向こうから戦いを仕掛けてくれるのだ。これほど都合のいい敵はいない。
そこで私は普段は宇宙空間に待機させている監察軍の巡洋艦ですごし、戦闘時には必要な時は霊力を開放してASTを含めた各国の魔術師たちと戦う日々を過ごしていた。
ちなみに私はより経験値を得るために、私自身だけでなく影分身を各国に送り込んで戦闘させることもあった。この影分身は素の身体能力は同じであるが、霊力、気、魔力などの力は本体と影分身で分割されてしまう。
つまり、影分身を99体作ると私自身の霊力と気が百分の一になってしまい、影分身を多く作ればそれだけ私と影分身の個々の力は弱まってしまうのだ。そう聞けばリスクが高いように思われがちであるが、実際はそうではない。
影分身は分身が消えてしまうと分身に分割されている気と霊力が消費(勿論、時間経過とともに自然に回復する)されるが、自分の意思で分身を解いた時には使用されなかった気と霊力が本体に戻る為、狂三のようにリスクを負うことなく分身の使い捨てが容易にできるのだ。
そして、分身が消えた際にその経験が本体に還元されるという効果から、筋肉トレーニングには使えないが、勉学や戦闘などの経験を効率的に積むことができる。
何より大きいのが、私の戦闘能力が強大なのである程度弱体化しても問題にならないことだ。
通常の精霊の場合は霊力が百分の一になったら極めて不味いでしょうが、私の場合はこれまでの積み重ねにより一般的な精霊よりも桁違いの霊力を有しているし、そこに気や素で超人的な身体能力が加わるのだ。そうなると一般的な魔術師にやられることはない。
とはいえ、DEMのエレンや時崎狂三のような危険人物もいるので、影分身を使用して弱体化している時は表に出ず、巡洋艦に待機した状態で影分身を送り込むという安全策を取っていた。逆を言えば影分身をすべて回収して万全の状態のときは私自身が派手に暴れていますよ。
余談であるが、姫百合零菜の影分身を使用した一連の消耗戦は各国の対精霊予算を思いっきり跳ね上げることとなる。その負担増に耐えかねて精霊討伐に消極的になる国が出てくるほどであった。やっぱり軍隊だろうが、予算が物をいうから予算を圧迫されると堪らないよね。