ADONISの手記

主にADONISが書いた二次小説を公開しています。リンクフリーです。

疎開(八月二十八日)

2011年08月31日 20時16分40秒 | 小説

 この日、令子は学園都市から離れて、監察軍本部にいた。

 特に用事があったワケではなく、単に『御使堕し(エンゼルフォール)』で発生するであろう騒動に巻き込まれるのを避けるためだ。そういった意味では避難ということになるだろう。
 
 魂に干渉されないトリッパーなので私自身は入れ替えなど起きないが、周囲はそうではない。中年男性がセーラー服を着ていたり、中年女性がランドセルを背負っていたりしているのを見たら精神的に来るものがある。

 つまり私の精神安定の為の避難である。
 
「佐天、久しぶりだね」

 そんな佐天に監察軍総司令官シリウスが話しかけてきた。シリウスは『ヴァンパイア十字界』のヴァンパイアに憑依したトリッパーだ。
 
「ええ、お久しぶりです」
「そっちは順調にやっているかい?」
「まあ、今のところ問題ないですよ。道使い(タオつかい)達のデータも順調に増えていますし」
 
 令子は学園都市のスキルアウトを利用して道使い(タオつかい)を揃えていた。

 ちなみにブリタニア帝国では、超能力(とある魔術の禁書目録)や、道(BLACK CAT)の開発などは行われていない。これは少し考えれば分かることであるが、下手に民衆に力を与えると悪用されて治安が悪化するからだ。

 民衆が力を持ったからといって経済的に何か利点があるのか? 軍事的に利点はあるのか? などというメリットはなく、治安維持が面倒になるというデメリットしか思いつかない。ハッキリ言って帝国上層部からみれば民衆に余計な力を与えても有害でしかないと判断している。だからこそ、この手のことは本国では大々的にやらない。
 
 そのかわりに余所の世界でやるわけだ。余所の世界ならば力を得た者達が何をしても、それによって現地の治安維持に悪影響が出ても関係ない。

 つまり私が転生した『とある魔術の禁書目録』の並行世界で行われたスキルアウト達を利用したデータ蒐集は、監察軍やブリタニア帝国の意向も多少なりとも反映していた。

 まあ、そうでなければ道(タオ)を余所の下位世界に広めるなどという行動が許可されるわけがない。
 
 ちなみにこの手の特殊な力を得る方法は、神氣湯(しんきとう)だけでなくR2ウイルス(レベリオン)もあったが、R2ウイルスは資質がある者以外が感染するとマズイ上に、本人だけでなく他人にも感染してしまうという致命的な欠点があったので、安全性の問題から実験には採用されなかったのだ。
 
 その点、神氣湯(しんきとう)は才能のない者が飲むと死ぬというリスクがあったが、アカシックレコードにアクセル出来る私から見れば、あらかじめ適正のあるものをリストに出しておけば、それですむことであった。

 総合的に一番手っ取り早く安全なのだ。
 
 ちなみに力を渇望している妹『佐天涙子』は、道(タオ)の才能があったが、意図的に省いている。それというのもあの世界で道(タオ)の力を得る事は危険が大きすぎるからだ。

 思い出してみると分かるだろうが、学園都市はかなり黒い。そんな連中が道使い達を見るとどう考えるか? 実験材料として興味を持つのではないか?
 
 そして、問題は学園都市だけではない。外でも超能力開発技術を求めて原石たちを誘拐する事件がが起きているのだ。道使いとなったスキルアウトたちは卒業して学園都市を出ていくと同時に研究所に拉致されるというのも十分ありうる。ハッキリ言って、あいつらの将来はお先真っ暗だろう。

 まあ、あいつらバカだし。そのあたりの事はいってないから、その程度の予想すらしていない。アレイスターにも、あいつらは捨てゴマのモルモットであると伝えており、問題があれば『星の使徒』を潰しても構わないと伝えているし。(邪)
 
「まっ、私もぼちぼち人生楽しんでいるわ」

 人生を楽しむ。それは私達トリッパーにとっては意味深な言葉だろう。何しろ二度目の人生だ。前回できなかったこと、やりたかったことをやってみたいと思う者は多い。実際、私は好きにやっているし。
 
「そうか、それはよかった」

 シリウスは笑う。うん、いい人だ。

 それにしても、この人元々いい人なのか、それともヴァンパイアに憑依した時にいい人になったのかは知らないけど、私達同胞に本当に良くしてくれる。他のトリッパー達からも評判がいいし。

 今後、日頃の御礼に何か贈り物でもしようかな?
 
 私は、シリウスと楽しく時間を過ごした。そして、それが私とシリウスの最後の会話だった……。

 

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星の使徒(八月八日)

2011年08月28日 21時46分33秒 | 小説

 星の使徒。それは第七学区をまとめるスキルアウト集団の集団名だ。彼等は他のスキルアウトとは異なり、道(タオ)と呼ばれる学園都市の能力とは別の力を保有していた為、彼等はそれを感じ取れた。凄まじい気の波動を。
 
「なっ、なんだ。この馬鹿げた氣は!?」

 周りが騒然となる。これほどの氣など感じたこともない。まるで、この星そのものすらも圧迫するかのような次元違いの力。
 
「佐天令子だな。こんなのあいつしかいねぇ」

 浜面が吐き捨てる。この場にいる者達は佐天のチートが嫌となるほど理解できる。

 学園都市第一位の絶対能力者(レベル6)の上に、道使い(タオつかい)としても自分たちとは次元違いの力を持っているのだ。
 
 彼等は誤解しているが、実際には令子は『BLACK CAT』の道使いではない。彼女はどちらかというと『ドラゴンボール』の武道家に分類される。

『ドラゴンボール』の気と、『BLACK CAT』の氣はいずれも生命力であり、同じ力なので彼等から見ると、その微妙な差が分からないのだ。
 
「そういえば浜面さん。あの佐天令子とどうやって知り合ったんですか?」

 一人の男が顔を引きつりながらいう。その男は神氣湯(しんきとう)を飲んで道(タオ)の力に目覚めてから、それほど時間が過ぎていない新人だ。

 彼等『星の使徒』の中では駒場、浜面、半蔵の三人は最古参の道使いだった。
 
「そうだな。あれは……」

 浜面は佐天との出会いを思い出す。
 


 それは数ヶ月も前。駒場たち三人はATMを盗んだり、ちょっとワルをやりながらも楽しく過ごしていた。

 そんな中で強力な能力者が無能力者を次々と襲撃する事件が起こり、あの女にあった。
 
「道(タオ)?」
「そう、強力な能力者に対抗するには、これが一番手っ取り早いわ」

 佐天より聞かされた学園都市とは異なる力『道(タオ)』。
 
 ここは佐天が『別荘』(ダイオラマ魔法球)と言っていた場所。何でもここと外では時間の流れる速度が異なり、別荘の一日過ごしても外では一時間しか時間が流れない。実に24倍だ。
 
「まあ、この神氣湯(しんきとう)を飲む飲まないは君たちの自由だよ」
「これを飲めば良いんだな?」

 駒場が確かめるかのように言う。

「そうだよ」

 あっさりという佐天。
 
 はっきりいって俺はこのとき戸惑っていた。道の才能がある者ならば、数日の間意識を失い次に目覚めたときに道の力に目覚めるが、才能がない者が神氣湯を飲むと死んでしまうと言われたからだ。

 一応佐天からは俺達三人ならば才能があるから大丈夫だといっていたが、安心できるものではない。
 
「良いだろう飲むとしよう」

 そういって駒場はコップに注がれていた神氣湯を一気に飲み干した。

「駒場!?」

 あまりに大胆な行動に俺と半蔵は驚く。

「大丈夫だ。あの佐天令子が今更俺達みたいな無能力者をわざわざ騙したりはしないだろう」

 確かに駒場の言う通りだ。
 
 そもそも佐天が俺達を邪魔だと思って排除しようとしているのならば、こんな手の込んだことなどせずに能力で始末すればいいのだ。学園都市最強の絶対能力者という肩書きは伊達ではない。

 そして、俺も思い切って神氣湯を飲んだ。
 


「……まあ、こうして起きたら道(タオ)の力に目覚めていたのさ」
「そうですか」
「その後はあの女から道の修行と称してしごきを受けたが、そのおかげで道を使いこなせるようになったな」

 嫌そうな顔をする浜面。実際あれは相当きつかった。
 
「では例のリスト表はその時に貰ったんですか?」
「ああ、そうだ」
 
 佐天はどうやってか知らないが、スキルアウトの中から道の適性検査をしていたらしく、道の才能のある者をリスト表にまとめていたのだ。

 佐天は、そのリスト表と神氣湯、そして活動資金として大量の金塊を俺達に渡して、無能力者狩りを行う危険な能力者を倒す為に『星の使徒』を組織させた。潤沢な資金と神氣湯によりこれは上手くいった。
 
 最もまったく問題ななかったワケではない。リスト表にのっていなかったにも関わらず、道の力を欲しがったスキルアウトの男が神氣湯を飲んで死んでしまうという事件があったし、道の力を手に入れたら『星の使徒』に参加して俺達と共に無能力者を守るという約束を破って暴走した者まで現れた。
 
「後は知っての通り、多数の道使いで危険な能力者たちを一掃したのさ」
「しかし、今回の一件は問題では?」
「だから佐天の粛正も黙認したのさ。第一、あいつは俺達がどうにか出来るヤツじゃねぇ。ほっとくしかないさ」

 それにアイツは敵対さえしなければ害はないのだ。一定の節度さえ守ればむしろ他の能力者よりも安全だろう。

「そうですね」

 

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三流道使い(八月八日)

2011年08月20日 23時22分36秒 | 小説

「はっ、はっ、はっ……。くそがっ!?」

 男は追いつめられていた。戦って勝てる相手ではなく、無様に逃げている。
 
「おやおや、どこにいくのかね?」

 しかし、相手が悪すぎた。逃げきることすら不可能だった。そんな絶体絶命な男をあざ笑う少女。
 
「くそっ、化物が!」

 やけくそで少女に殴りかかる。男はがっちりした体格に筋肉がモリモリしていて、どこのボディービルダー?と聞きたくなるような身体だった。

 しかし、そんなものは一見すると華奢な少女には通用しない。信じられないことに、少女はそれを容易く受け止める。まるでそんなもの効かないとばかりに。
 
「能力が<筋肉>ならば、もう少し歯ごたえがあるかと思ったけど、こんなものかな? もういいや」

 飽きたとばりに投げやりな言葉と共に解放される”気”。
 
「ちょっと待て! 何だ! このふざけた氣は!?」

 少女から放たれるとんでもない氣に男が慌てる。道(タオ)の力を得た男は、間近で感じる少女の気がとんでもないものであること感じ取れた。そう、例え道使い(タオつかい)として満足に修行すらもしていない、未熟な三流道使いであっても。それは男と少女との力の差を嫌がおうにも示していた。

 そして、その場で一方的な殺戮が繰り広げられた。

 

 時間を少し巻き戻す。今日は原作第二巻の日で、姫神秋沙(ひめがみあいさ)の一件で、当麻が錬金術師と戦うことになっているが、令子は一切干渉していなかった。

 前回は当麻の記憶喪失フラグを潰すために動いたが、今回はほっといても当麻とステイルが解決する問題に過ぎないからだ。
 
 これには学園都市というかアレイスターの思惑もあった。原作でアレイスターは何故かこの一件に学園都市の学生である当麻にステイルの協力者として関わらせていた。

 これはプランを進める上でのイベントの一つに過ぎないのだろうが。
 
 そんな令子は、喫茶店で待ち合わせ中に、御坂御琴や白井黒子ばったり会ってそのまま話をすることになった。
 
「連続殺人事件?」
「そうですの。最近また能力者による事件が起きていまして、犯人逮捕に向かった警備員(アンチスキル)の部隊が返り討ちになりましたの」
「へえ、そいつなかなかやるね。となると犯人は大能力者(レベル4)あたりかな?」

 対能力者用の訓練を受けている警備員の部隊を、たった一人で倒すのは異能力者(レベル2)や強能力者(レベル3)では少々厳しい。
 
「いえ、書庫(バンク)によると犯人はスキルアウトですの」
「スキルアウト?」

 スキルアウトとは、無能力者であるが故に不良となった者達だ。
 
 それは、ヤクザやマフィアのように特定の名称ではなく、あくまで分類の様な物で、この学園都市はスキルアウトの集団が多くあるが、みんな一纏めでスキルアウトとして扱っていた。当然ながら彼等は無能力者であり、学園都市でも最弱の存在にすぎない。

 普通は不良といえば恐れられる存在であるが、この学園都市では不良とは文字通り出来が悪い存在にすぎず、本当に恐ろしいのは出来の良い優等生たる高位能力者なのだ。だからスキルアウトは、学校では役に立たないくせに厄介事ばかりおこす奴らと思われている。
 
「それがどういうわけか、そのスキルアウトが身体強化系だと思われる能力を発揮して、警備員を倒していますの」
「急激にレベルアップしたってワケ。そいつ幻想御手でも使っているの?」
「いえ、お姉さま。確かに最初は幻想御手がらみかと思っていたのですが、あれが解決しても起きていることから別件だと思いますの」
 
「で、連続殺人事件ということは、そいつ無差別攻撃でもしているの?」
「その通りですの。特に女子供を標的にしていますわ」

 呆れたようにいう令子に、白井が答える。

 ついこの間も幻想御手によって大幅にパワーアップした能力者たちによる事件が続出していたのだ。正直またかという思いだ。
 
「実はここ最近、スキルアウトの中で学園都市の能力とは別の方式の能力者が現れており、彼等は『星の使徒』と名乗り、集団で何人もの能力者を血祭りにしているらしいですわ。警備員では今回も『星の使徒』が関わっていると思っていますの」
「それは違う」

 不意に否定の声が聞こえた。
 
「あら駒場来ていたの。でも話に割り込むのは良くないわよ」

 令子は笑みを浮かべる。

 その場にいたのは三人の男。第七学区のスキルアウトを束ねる駒場利徳(こまば りとく)、浜面仕上(はまづら しあげ)、服部半蔵(はっとり はんぞう)の三人。いずれも件の『星の使徒』の中心的な人物達だ。

 白井が表情を強張らせる。どうやら駒場の情報ぐらいは持っていたらしい。

「それはすまなかったな。しかし少々聞き捨てならない話だったからな」
「まあ、それはそうでしょうね」

 無差別襲撃犯扱いなんかされたら私でも嫌だし。確かに彼等は能力者たちを襲撃した。

 しかし、標的ぐらい選んでいるし、襲撃にしても標的の方に問題があったのだ。
 
「あ、これは例の物ね」

 バックから瓶を取り出して駒場に渡した。

「確かに」

 それを受け取る駒場。
 
「ところで駒場、あなたこれを与える人選を間違えたわね」

 断言口調でいう。くだんのスキルアウト。あれは、どう考えても道使い(タオつかい)としか思えない。つまり駒場から神氣湯(しんきとう)を与えられた人間が暴走したということだ。
 
「あれはお前のリスト通りに……」
「あれは才能がある者を記載しているだけよ。貴方達が人選を間違えたことには違いはないわ」
「……」
「まあ、いずれにしてもそいつは少々目に余る。後で私が片づけておくわ」
「そうか、わかった」

 駒場はあっさりと了承した。片づけておく。その言葉で令子に始末される男は駒場と同じスキルアウトであったが、あの男の暴走には駒場は怒りを感じていた。自分たちと交わした約束を破り、無関係の女子供を殺傷したのだ。だからこそ庇い立てもしなかった。

 

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ホームレス高校生(七月二十七日)

2011年08月15日 18時32分03秒 | 小説

 インデックスの一件をサクッと片づけたから一週間が過ぎた。寮を吹っ飛ばされた我等が上条当麻は、現在ホームレスになっていた。

 えっ、話が飛びすぎている? では、順を追って説明しましょう。
 
 先日、寮が破壊されたワケですが、その被害は当麻の部屋が一番酷かったとはいえ、寮自体もシャレにならないダメージを受けていた。当然、これほどの被害を受けた不動産業者は怒る。

 しかし、責任追及はできない。なぜなら上条当麻に過失はないのだ。
 
 勿論、上条の不幸属性が原因だろうが、だからといって「お前が不幸だから寮が壊れた! だから責任を持って賠償しろ!」というワケにはいきません。となると業者は泣き寝入りするしかない。精々できることといえば、上条当麻を寮から叩き出すことぐらいだ。

 しかし、それが原因で上条当麻は不動産業者のブラックリストに載ってしまう。
 
 こうなると別の寮を借りようとしても、どの不動産業者も当麻に部屋を貸してくれない。当麻が不動産屋に行っても追い出されるだけだ。

 そんなワケで当麻は路上生活を余儀なくされてしまった。
 
「不幸だ」

 そんなお決まりのセリフを吐く当麻。
 
「久しぶりね当麻。元気にホームレス高校生やってるね」
「……元気そうに見えるか?」

 憂鬱そうな当麻がいう。
 
「まあ、そんな当麻に良い住宅を紹介したいけど聞く?」
「なんだと、そんなのあるのか?」

 飛びつく当麻。相当困っていたみたいだから、無理もないけど。

「じゃあ、紹介するからついてきて」
 


「ここが、その寮か?」
「ええ、実はここは貸家ではなくて、土地も建物も私の物なんだよ」
「ここが?」

 当麻の私がいるのは新築二階建ての寮。これは『とらいあんぐるハート2』のさざなみ寮を参考にして、コミュニケーション型の寮なんだよね。

 リビングと風呂は共通となっており、個室が合計十個。一人一部屋と考えても十人は住めます。でも、この形式の寮は実は私には向いていない。あまり他人との交流というのは好きじゃないんだよね。
 
「ええ、監察軍で手に入れた金をこちらに持ち込んで得た資金で作ったの」

 ブリタニア帝国では宇宙開発が進んでいるから金などは二束三文で手に入る。それに原子変換装置を用いて何百万tでも金を用意できるから、それらを使えば億万長者になるのは簡単だ。

 監察軍は自分たちの技術、情報、戦略物資などを下位世界に持ち込むのは制限がきついけど、金や宝石を下位世界に持ち込むだけなら簡単に許可が下りる。
 
「そんなわけで、面白半分で土地を購入して拠点となる寮を建てたけど、今は使っていないから好きに使って良いわ」

 表向きは面白半分に寮を建てたという事だけど、本当は上条ハーレム屋敷を作ったら面白そうという遊び心ですよ。実際の所、原作では当麻は一人用の寮を借りていたが、インデックスと同居するにあって不具合がでてきた。インデックスをベッドに寝させて、当麻は風呂場で寝るという状況になっていた。そもそも男子寮に女の子を住まわせる事自体が問題だろう。

 それに巫女さんや隠れ巨乳な十字教徒の少女とも一つ屋根の元で生活させる予定なので、それに適した住居があった方が良いでしょう。というワケで小萌先生に預けていたインデックスを呼び戻して、ここに住まわせる。

 いつまでも小萌先生の所にいるのは迷惑だし、ステイル達からインデックスを頼まれているのに他人に預けたままなのはいろいろとマズイ。

 あとミサカ00001号も誘うか。あの娘は当麻に直接助けられたので、当麻に惚れているみたいだし。立派なハーレム要員です。

 こうして、佐天の遊びから始まった上条ハーレム計画は着々と進んでいった。

 

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新たなる絶対能力者(七月二十五日)

2011年08月15日 18時30分39秒 | 小説

 その場には強力な竜巻が起こっていた。するとそれと全く同じ威力の竜巻が起こり相殺して消える。

「いいね。一方通行、その調子だよ!」
「へっ、まだまだこんなもんじゃねェぜ!」
 
 超電磁砲と白黒が門限破りの罰でプール掃除をしている最中、私の一方通行は訓練をしていた。現在、私達がいるのは能力者達の訓練場だ。

 超能力クラス以上ともなるとその訓練は場所を選ぶ事が多い。下手なところで考え無しに能力を使うと周囲に甚大な被害を与えるというのは珍しくないからだ。だから高位能力者は、日常生活ではその全力を振るうことなく能力を抑えて生活する場合が多いが、ここは予め許可をとって私と一方通行が訓練場として利用している。
 
 えっ、門限? 私はあの二人と違って、予め身代わり人形を寮に配置しておいたので門限破りにはなっていないですよ。後始末はあの二人に押しつけたような形になったけど、知った事じゃない。
 
「さて風に関してはこれでマスターしたと思うけど?」

 一方通行は風のベクトルを操作して、風を操っている。

 学園都市の風の流れを一々計算しなければならないので、膨大な計算処理能力が必要となり、そのプロセスの関係上、風使いの能力者よりも処理が面倒になる。だから私が風を操り、それを一方通行に計算させて、それと全く同じ風を起こさせていた。

 つまり、自分で一から計算させるのではなく、私の風をカンニングさせる事で風の操り方を修得させようとした。結構地道な作業だが、私は数ヶ月かけて様々な風を一方通行に覚えさせた。
 
「まあなァ。だがよう昨日のアレはなんだよォ? アレが絶対能力へのカギかよ?」
「そうよ。学園都市には180万人以上の能力者が無意識にAIM拡散力場を放出しているわ。それを束ねて操る事が重要なの」
「つまりAIM拡散力場の数値を“自分だけの現実”に入力する必要があるわけかァ?」
「そういうことね。一方通行、昨日の観戦で何か掴めた?」
「ああ、大まかにはな」

 流石に実際に観戦していれば掴めた物もあったのだろう。

「そう、それは良かったわ。骨を折った甲斐がある。ならば私の絶対能力を修得してみなさい!」

 そう言い放つと共に私は周囲のAIM拡散力場を集束させてオレンジ色の光翼を展開した。
 
「いくよ!一方通行」

 宣言と共に放たれる無数のオレンジ色の線のような物。令子の背から伸びているそれは幾重にも別れた翼。

「おおッ!」

 一方通行はそれを受けるのではなく回避した。一方通行の能力ならば反射という手段があるが、それはあくまで自分が把握しているベクトルにすぎない。故にこれを反射できるとは判断できなかったのだろう。
 
「ほら、早く出さないと死ぬよ!」

 一方通行はこれまで反射に頼ってばかりだった。当麻に破れたのも近接戦闘能力の低さが原因だ。勿論、そのリスクを教えるために、木原のやった反射破りを私が一方通行に実践して、反射が絶対ではなく抜け道があるのを教え込んでいる。

 しかし、それが一朝一夕で身に付くわけではない。ましてや近接戦闘能力という分野になると、私に勝てる人間などこの世界には存在しない。
 
 だから一方通行に残された手段は私の光翼を解析して反射可能にするか、私と同じ様にAIM拡散力場を集束して操るかだ。そして、これはあくまで一方通行の”自分だけの現実”にAIM拡散力場の数値を入力させるための物。
 
「くそッ!なめンじゃねェ!?」

 一方通行が叫び声を上げて、その背から勢い良く黒い翼が放出された。

「そう、それでいいわ」

 お膳立てをしたとはいえ、まさかこんな短時間で目覚めるとはね。内心の驚きを押し隠して、一方通行の翼と私の光翼をぶつける。
 
 私と一方通行の能力は同質とはいえやはり私の方が勝っていた。

 私は実戦経験が半端ではない。マヴラヴの世界の幾つもの並行世界では、合計で億単位にもなる膨大な数のBETAを殺している。伊達に生類憐みの令(しょうるいあわれみのれい)に違反しまくっていたわけではない。

 それ故に実戦における能力の使用があまりにも多く、結果的に能力が反則的に強化された。同じ絶対能力者でも能力の力に大きな差が生まれていた。ようするに鍛え方が違ったわけだが、それでも絶対能力に目覚めたのは凄いとしかいえない。

 これが原作キャラの補正という物だろうか? 一方通行の翼を弾きながら、私は自問した。
 
 まあ、いいでしょう。私はその考えを捨てて、一方通行と距離を取った。

「ふふふっ、おめでとう一方通行」

 笑みを浮かべ、拍手をする。

「……」
「新たなる絶対能力者(ベレル6)の誕生。私は貴方を歓迎するわ。漸く私と同じ領域に到達できる者があらわれたのだからね」
 
 一方通行は他人との争いを避けるために、自分に挑むのもいなくなる他者とは隔絶した絶対的な無敵を求めた。それは他人を傷つけるのを嫌がる彼の優しさが原因だが私は違う。その本性において私は優しくない。

 私と一方通行は、表面上では私の方が優しく人格者として見えるが、それは表面上の事にすぎず、本性は私の方が冷酷非情だ。

 私は他人などどうでも良い。だから他人を傷つけたくないから無敵になるなどという考えはない。戦いは拒まず、むしろ楽しむ。それが私だ。
 
 私は能力者としては、転生特典の恩恵でスタートラインからしてチートだった。だから学園都市で、いやこの世界で、私と対等に競い合える能力者などいなかった。

 そのことには内心不満があった。サイヤ人ではないけど、好戦的な部分があるからね。

 当麻を仲間に引き込んだのも、彼ならば将来的に私の能力に対抗可能になるだろうと考えてのことだ。残念ながら、私が戦闘力を上げすぎたので実力差が隔絶してしまったが。
 
 その数日後。学園都市に新たなる絶対能力者(レベル6)の誕生がニュースとして流れた。それは学園都市に新たなる波紋となって伝っていく。

 

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幻想御手 その四(七月二十四日)

2011年08月15日 18時29分07秒 | 小説

 病院の屋上で涙子と初春が熱い友情を展開していた。いや~、青春だね。
 
 私も外見は若いけど、前世と別荘での訓練で結構な精神年齢になっている。だから中学生のノリというのにはついていけなくなっている。見た目は子供、中身は大人という某探偵な状態なんです。
 
 そうあれこれ考えているとやがて初春が帰っていった。そろそろ良いかな。

「涙子」

 後ろから涙子に声をかけた。

「お、お姉ちゃん!?」

 涙子は流石にビックリしていた。涙子にとって、私は一番顔を合わせづらいでしょうからね。

「大事が無くて良かったわ」

 そういって涙子に抱きつく。

「お姉ちゃん、私…」

 バツが悪そうに涙子が口ごもる。

「いいのよ涙子。貴女が無事ならそれでね」

 私の言葉に顔を驚かせた。どうやら今回のことで軽蔑されると思っていたのだろう。

「涙子は間違いを犯したけど、無事だったんだもの。ならいくらでもやり直しは効くわ」
「お姉ちゃん、ごめんなさい!ごめんなさい」

 涙子は泣きながら私に抱きつく。私はそんな涙子を優しく抱きしめる。とまあ、こんな感じで姉妹の不和を解決できたわけ何だよね。涙子の問題はこれで解決。だけど問題はそれだけではない。
 
 実を言うと私と涙子の関係は面倒なしがらみがある。学園都市にとって私は最高の研究材料だ。その私が研究を拒んでいる以上、なんとかして協力させようと思う者の少なくない。その為、妹の涙子を弱みと考える者がいた。

 アレイスターを抑える事が出来たとはいえ、末端の者となるとその辺りがいまいちだ。だから仲の良い姉妹などという印象を与えるのには躊躇もあった。

 まあ、その手の馬鹿には、無能者などどうなろうが知ったことではないと、嘯いてかわしていた。姉としては酷い様だけど、そうしないと相手がつけあがるからね。

 人質としての価値が無いと認識させて、そういう者を相手にしないのが一番だ。だからこれからも涙子とは一線を引かざるを得ない。

 それが、この学園都市において突出した能力を持っている私の処世術だから。

 

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幻想御手 その三(七月二十四日)

2011年08月15日 18時27分54秒 | 小説

「おい、本当にここで面白い物が見れるのかよォ」

 私が連れだした一方通行が半信半疑のようだ。場所は原子力実験炉付近。ここにはこれという物はない。
 
「しかし幻想御手(レベルアッパー)に多才能力(マルチスキル)か。けっ、くだらねぇ事しやがる」
「まあ木山も目的があってやっているにすぎないし仕方ないわ」

 上の道路は既にアンチスキルによって封鎖されている。そうこうしている内に爆発が起こった。

「始まったわね」

 能力で道路の上に登り、木山とアンチスキルの戦闘を観戦する。木山が複数の能力を使用して、アンチスキルを圧倒していた。
 
「へえ~、マジで複数の能力を使ってやがるぜェ」
「ええ、見物ね」

 アンチスキルは数で勝っているものの多才能力者が相手では分が悪い全滅するのも時間の問題だろう。
 
「なっ、なぜ君達が!?」

 アンチスキルを全滅させた木山が、こちらに気付いて表情を変える。

 支配領域と一方通行。いずれも学園都市の最強の一角を占める猛者。アンチスキルならば兎も角そんな化け物じみた者達がいるのだから驚くのは無理もない。
 
 そこに御坂が登場する。

「佐天さんも来ていたのね」

 御坂は私が既にいた事に驚いていた。
 
「……まさか絶対能力者に超能力者が二人も来るとはな」
「言っておきますが、今の私はただの観客なので、手を出すつもりはないわ」
「ちょっと佐天さん!貴女の妹さんもこいつの仕掛けた幻想御手の被害にあっているのよ!」
「そうですか。でも風紀委員でもない権限のない一般人が、勝手な行動をするといろいろと問題があるでしょう?」

 御坂の言葉に一般論で答える。一応正論なので御坂さんは押し黙る。
 
「それに幻想御手にしても、ちゃんと理由が合っての事だろうしね」
「どういう事よ?」
「幻想御手は樹形図の設計者の代用品として使うつもりで、多才能力はあくまで副産物に過ぎない。そうでしょう木山さん?」
「君は知っているのか?」
「これでも情報通なものですから……」
「そうか」
「もういいわ、私一人でやる。貴女はここで見学してなさい!」

 痺れを切らした御坂さんは、そう言い放ち木山に向かっていった。原作通り、御坂さんと木山さんが派手に戦っている。私と一方通行は観戦モード。

「おい、のンびり観戦してていいのかよォ?」
「まあ、命に関わるようなら手を出すけど、可能な限り干渉したくないのよね。それに私はこの後に現れるアレに興味があるしね」
「アレ?」
「ええ、幻想御手によって生み出される存在。私達にとってもいろいろと興味深いからね」
 
 アレはAIM拡散力場の集合体。つまり私の絶対能力と同質の存在なのだ。一方通行がそれを目撃することで彼の”自分だけの現実(パーソナル・リアルティ)”に何らかの影響を与えることができるだろう。

 実は一方通行が脳を破損するイベントを潰してしまったので、一方通行の”自分だけの現実”にAIM拡散力場の数値を入力させないといけない。今回はそれの工作なんだよね。
 
 そして『幻想猛獣(AIMバースト)』が出現した。幻想猛獣。それは胎児のような姿で現れた。そして背中から幾つもの光の線を放出する。それは幾重にも別れた天使の翼にも見えた。それが急成長して怪物となった。
 
「なンだァ、あの怪物はよォ!」
「AIM拡散力場よ。でも拙いわね」
「なにがだよォ?」
「アレの進行方向にある建物は、原子力実験炉よ」
「……マジかよ!」

 本当にシャレにならない。原作では問題なかったが、一歩間違えれば大惨事だ。
 
「こういうのは趣味じゃないけど、しょうがないから超電磁砲を助けてくるわ」
 流石に無視はできない。
「しょうがねェなァ」

 一方通行も渋々同意する。
 
 舞空術で空を舞い、上空から幻想猛獣に気功波を放つ。

「なにっ!」

 いきなり放たれた攻撃に御坂さんが声を上げた。次の瞬間私が彼女の側に降り立つ。

「佐天さん!」
「非常時だから手を貸すわ」
 
 そう言いながら、私は幻想猛獣を見る。今の気功波はかなりの被害を与えていたが、元々が実体を持たないAIM拡散力場の集合体、すぐに再生していく。
 
「……やはりまともな生命体ではないアレには効果が薄いわね。ならリミッターを外す」
「リミッターですって!?」

 御坂さんが私の言葉に驚く。
 
 私は右手に付けている腕時計型の重力制御装置を弄る。30Gと表示されている画面を1Gにする。体に掛かっていた重力負荷が消える。コキコキと体を動かす。負荷を外すのは久しぶりだ。

「全力戦闘は久しぶりね」

 私の力は超能力だけではない。気を用いた戦闘力。これも私の大きな力。
 
「アレはなんなのよ?佐天さん知っているの?」
「アレは幻想御手によって束ねられた約一万人のAIM拡散力場の集合体で、虚数学区の正体でもあるわね。厄介な事に学園都市に満ちる他のAIM拡散力場をも吸収して成長を始めているわ」
「なんですって!」
「なんだと!」

 二人が驚く!

「ついでにいうと絶対能力というのは、学園都市に満ちる大量のAIM拡散力場を操る事で発現する能力ね。アレと私の絶対能力は同質であるから、アレは擬似的な絶対能力者でもあるわね」
「そんなのどうするのよ!」

 トンデモな話に御坂さんが食ってかかる。
 
「御坂さん忘れたんですか?私は絶対能力者(レベル6)ですよ」

 その言葉と共に、私は光翼を展開する。

「疑似はあくまで疑似、所詮は紛い物にすぎない。真の絶対能力者(レベル6)の力を見せてあげる」

 私はアレが吸収しようとしているAIM拡散力場を根こそぎ奪い取る。能力で幻想猛獣と競い合いながら、気功波で幻想猛獣を消し飛ばす。といってもやりすぎると周囲に与える影響が大きいので手加減しながらだが。

 私が圧倒的な力で幻想猛獣を叩き潰しているもののすぐに再生してしまう。
 
 しかし、私に焦りはない。アカシックレコードからの情報で、原作通り初春が幻想御手のアンインストールを行おうとしている事を知っているからだ。ならば時間を稼ぐだけでいい。
 
 幻想猛獣が放つ光の翼の攻撃を私も光翼で迎撃する。攻撃を防ぐ一方で、幻想猛獣を構成しているAIM拡散力場を奪うために干渉する。それは幻想猛獣も同じようで、私達は周囲と相手のAIM拡散力場の奪い合いをやっている。

 しかし、一万人もの人間の脳を束ねたとはいえ、この私の能力と競い合うとはね。思ったよりも幻想猛獣の能力は高いようだ。

 長期戦ならば生身の人間である以上私の不利かもしれない。だが時間制限がある現状では……。
 
 そして幻想猛獣の様子が変わる。幻想御手のアンインストールが開始されたからだ。
 
「タイムリミットね」

 この戦いは私の勝ち。同じ絶対能力のぶつけ合いは、流石の私も初めてなのでそれなりに楽しめた。

「油断するな!まだアレは一万人ものAIM拡散力場の集合体なんだぞ」

 木山さんが怒鳴る。

「油断?違うわ。これは余裕!」

 私は構成が弱まった幻想猛獣を構成するAIM拡散力場に一気に干渉する。その干渉で幻想猛獣の体が崩壊して、幻想猛獣を構成する核が露出した。

「これでゲームオーバーよ」

 私が放った気功波は核を消し飛ばした。

 

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幻想御手 その二(七月二十四日)

2011年08月15日 18時26分20秒 | 小説

 どうしてこんなことになったのだろう。少女『佐天涙子(さてんるいこ)』は思う。

 そもそも涙子は、超能力に憧れて学園都市に来ることを望んだ。それはこの学園に来た者の多くがそうだろう。
 
 弟は無邪気に私が超能力者になれるのだと感心していたが、母さんは私が学園都市に行くのを快く思っていなかった。でも、私はどうしても行きたかった。
 
 そんな私の思いを後押ししたのが、一つ上の令子お姉ちゃんの存在だった。お姉ちゃんは幼稚園のときに学園都市に行き、そこで天才的な才能を発揮して、強力な能力に目覚めて超能力者になった。

 実の姉がそうなのだ。妹の私にも才能があって、凄い力が眠っているかもしれない。学園都市に行く前日などドキドキして眠れなかった。

 学園都市の人だって私の入学を進めてくれた。お姉ちゃんがあれほど優れた能力を持っているので、妹の私も期待されていたからだ。でも、現実はそうじゃなかった。

「貴女には才能がありません」

 それが答えだった。なまじ期待していただけにショックだった。学園側も期待の反動から私に強く失望していた。
 
 学園都市でもその優秀さから極めて有名な姉。それに対して才能の欠片もない無能力者の妹。姉妹でありながらその余りの落差に、私と姉を比較して無能と馬鹿にされる事が多かった。

 それはお姉ちゃんが前人未踏だった絶対能力者(レベル6)になった事でより多くなる。
 
 学園都市史上最高の天才。至高の絶対能力者(レベル6)。学園都市第一位。常盤台最高の頭脳。お姉ちゃんを称賛する人は多い。

 私だって分かる。お姉ちゃんは凄い。でも私は思う。お姉ちゃんの妹なのに何で私はこう何だろう?と
 
 学園都市では学力と能力で評価が決まる。無能力者(レベル0)はテストで0点の看板を付けて生活していく事に等しい。

 何時からか私は心の何処かで、お姉ちゃんに歪んだ思いを持つようになった。お姉ちゃんもそれ事に薄々気づいているのか、私と会うのを控えるようになった。でも憧れを捨てることができなくて、そんな日々を過ごすうちに常盤台のエース御坂御琴さんにあった。

 御坂さんは超能力者(レベル5)の凄い能力者だ。勿論、次元違いの力を持つお姉ちゃんと比べると格段に劣るが、それでも私達のような無能力者(レベル0)からみれば雲の上の人。高位能力者の人が傲慢な人が多いと聞いていたので、超能力者(レベル5)ともなるとどんな人か不安でしたが、御坂さんは気さくな人で親しみやすかった。

 でも私が佐天令子の妹だと聞くと一瞬だけ意外そうな顔をしていました。あの人の妹が無能力者(レベル0)なのが意外だったのでしょう。能力には遺伝子がある程度関わっているので、姉妹なのにここまで差があるのに違和感を覚えているのかもしれない。

 御坂さんはお姉ちゃんの友人らしいです。ならばお姉ちゃんの力もある程度知っていると思うので、それも無理もない。
 
 幻想御手(レベルアッパー)。それを見つけたのは偶然だった。

 最初はそれを調べていた御坂さん達に教えるつもりだった。でも幻想御手の持ち主を保護するという言葉を聞いてそれを止めてしまった。
 
 幻想御手が危険かもしれないという話しを聞いていたものの安易にそれに手を出してしまった。しかも知人まで巻き込んだ。

 あの時、能力の補習を受けることになってぼやいていた知人に対して私は幻想御手を持っていることを教えてしまった。結果的に言うと知人に幻想御手を使うのを唆してしまった。

 幻想御手を使い極小さなものだけど能力に目覚めた。私はそれが嬉しくて堪らなかった。例えお姉ちゃんや御坂さんに比べたら大した事がなくても能力に目覚めたのだ。でもそんな喜びは長くは続かなかった。

 幻想御手を使用した知人が倒れてしまい、自分のしでかした事を思い知らされた。自分も倒れるのだろうか?
 
 これがズルをして能力を得た報いなのか? 無能力者(レベル0)はどこまでいっても所詮は欠陥品なのか? お姉ちゃんはこんな私に失望したんじゃないのか?
 
 不安で堪らなくなって、初春に電話をかけた。初春は私を助けてくれると言ってくれた。

 だから安心して寝ていてくれと。初春の優しさが私を安心させてくれる。だから私は待てばいい。

 

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幻想御手 その一(七月二十日)

2011年08月15日 18時24分57秒 | 小説

 先程、インデックスの一件で大暴れをした私だけど今は喫茶店にいた。勿論、超電磁砲のイベントをこなすためだ。

 偶然を装って御坂と喫茶店で会った。残念美人こと木山 春生(きやま はるみ)を含めてみんなでお茶している訳です。
 
「君は?」
「私は佐天令子です」
「ほう、君があの支配領域か」

 私は有名だから名乗ると一発で気付く。というか学園都市に住む者で私を知らない者はいないだろう。
 
「それはそうと彼女たちは知り合いかね?」

 木山の視線の先には窓に張り付いている涙子がいた。
 
「幻想御手ね」
「あっ、それだったら…」
「危険な物かもしれないので、今すぐ保有者も保護しないといけません」

 幻想御手と聞いてなにかいいかけた涙子の言葉を白井が遮る。やはり涙子は原作通りに幻想御手を手に入れた様だ。
 
 その後は原作通りの話となり、涙子が私達から離れていった。私はその後を追うことにした。
 
「涙子」
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「少し話しておきたい事があるわ」

 私は涙子を連れて少し場所を移動した。
 
「涙子最近学校生活はどう?」
「どうって、普通だよ」
「そう問題ないのからいいけどね」

 言葉を濁す。

「どうしたの? お姉ちゃん」

 私の態度の不信を覚えたのだろう涙子がおずおずと喋る。
 
「……貴女には私の妹であったばかりに辛い思いをさせてしまったわね」
「えっ!?」

 唐突な言葉に涙子が驚く。
 
 優秀な姉と無能な妹。これが比較されない筈はなく、これまで涙子は私と比べられて来たはずだ。それが原作よりも劣等感を強化させていると知っていた。

 しかし、だからといって今更私が無能の振りをすることはできないし、私は強力な能力を求めて転生したのだ。涙子に遠慮することはできなかった。
 
 ある意味涙子は私の犠牲者だ。私はそれを知りながらも放置した。これは私の落ち度だろう。
 
「涙子能力のことはあまり気にしなくて良いわ。母さんもそんなことは気にしていないしね」
「……」
 
 学園都市では学力と能力で学生の評価が決まる。だから無能力者はテストで0点の看板を背負うことになる。大概の学生は我慢して生活しているが、中にはそんな状況に我慢できなくてスキルアウトになる者もいた。

 そんな状況で、姉が学園都市を代表する最高の能力者で、妹が無能力者ではあまりの落差だ。
 
「涙子なにも能力が使えなくても将来困るという事はないわ。普通の職業に能力なんて必要ないもの」

 そう、一般社会では能力は必要ではない。例えばサラリーマンに能力が必要か? 答えは否。そもそも能力など一般社会では使い道がない。
 
「だから学業に専念するなり、なにか技能を磨いて将来なりたい職業に就くというのも良い方法だと思うわ」

 学園都市の価値観で考えるから劣等感を抱くのだ。外の世界の価値観で物事を考えれば自然と考え方も変わっていくだろう。
 
「……お姉ちゃんに私の何が分かるの?」
「えっ!?」
「お姉ちゃんは私の気持ちが分かっていない!」

 そう言って涙子は走り去っていった。
 
「……」

 失敗した。涙子の状態を甘く見過ぎていたのかもしれない。

 そもそも劣等感を抱いている対象である私が能力のことを気にしなくてもいいと言っても逆効果にすぎない。かえって状況を悪くしてしまったようだ。
 
 幻想御手を使用する一押しをしてしまったかもしれない。勿論今無理やり幻想御手を取り上げることは可能だが、それでは根本的な解決にならない。

 やはり初春に任せるしかないのか? 自分の妹の事なのに何もできない。いくら絶対能力者(レベル6)でも出来る事と出来ない事がある。

 そして、これは出来ないこと。嫌、今まで放置してしまった事だ。
 
 できれば幻想御手を使用する前に涙子に分かって貰いたかったが、それも無理なようだ。こうなったら原作通りに進ませるしかない。

 

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とある少女の支配領域 1-2

2011年08月15日 18時23分28秒 | 小説

 寮の外に出てすぐに当麻とインデックスが来た。さてと、標的が出てきたことからそろそろ現れる筈だ。佐天がそう考えていると一人の男が姿を現した。
 
「人払いの結界ですか、割と手際がいいですね魔術師」
「へえ、分かるのかい」

 紅い髪を伸ばした長身の神父という出で立ちの男。

「ええ、そうですよ。必要悪の教会のステイル・マグヌスさん」

 軽くジョブ。暗にお前の正体は知っていると牽制する。

「なっ!?」

 まさか所属だけでなく名前まで知られているとは思わなかったのだろう。ステイルが驚愕している。
 
「ふふっ、貴方達の事はある程度知っているだけですよ。それより貴方はインデックスの記憶を消すつもりのようだね。でもその方法ではインデックスは救われない」
「ぐっ、君に何がわかるというんだい!」

 ステイルが怒りを込めて言う。
 
「その事を含めて君や神裂さんと話しておきたい事があるのだけど、どうも話し合いが出来る状況ではないようですね」

 ステイルが殺気をバシバシ出している。

「仕方ないですね。当麻さん少し相手をして」
「って、俺かよ」
「魔術師が相手なら当麻さんが適任でしょ?」
「……分かったよ」
 
「消えろっ!」

 ステイルが強力な炎を放出した。圧倒的に火力を誇るそれは当麻を包み込みこみ焼き払うかに思われたが、当麻が前に突き出した右手によって容易くうち消される。
「なんだと!?」

 自慢の炎の魔術を容易くうち消されたステイルは驚愕する。

「寝てろ」
「グハッ!」

 当麻の当て身をくらい意識を失うステイル。大した怪我もさせずに気絶させており、見事な手加減だ。まあ、あれだけ武術をやっているのだから当然だね。
 
「それで、どうするんだ?」
「それなんだけどね。インデックスを助けるには彼女にかけられた細工を何とかしないといけないわ。それは魔術的な物だから当麻さんの右手でうち消せる筈」

 私は当麻の右手に視線を向ける。これまで数多の異能をうち消してきた幻想殺し。今回もこれがカギとなる。いえ『とある魔術の禁書目録』では『幻想殺し』は物語を構成する重要な要素だ。決して無視できる物ではないだろう。
 
「でももう一人の相手をしないとね」

 私はいつの間にかその場にいた神裂を見つめた。

「そこをどいて下さい」

 神烈が威圧感を放つ。

「残念ですが、私達はこれからインデックスを助けるつもりなので、それに同意できません」
「なにを!?」

 神烈が苛立ちまじりに言う。ふむ、感情が高ぶっているみたいだね。

「ハッキリ言いますが、貴女がインデックスにやろうとしている方法は時間稼ぎの対処療法にすぎず、根本的な問題解決になっていません」
 
「なっ!貴女は何を知っているのですか」
「色々とね。でも貴方達は魔術師だから科学には疎いようですね。少し脳医学の知識がある者なら真っ先に気付くデタラメな話なのに」

 溜息を零す。私は基本的な記憶に関する脳医学の知識を説明して、必要悪の教会がインデックスに仕掛けた首輪の内容の説明をする。
 
「というわけだからインデックスには仕掛けがしてあるわ。疑うならインデックスの体を調べてみる事ね」
「そんな、馬鹿な……!」

 半信半疑の神裂にインデックスを調べるように言う。ちなみにここは外であるが人払いの結界があるので人気はまるでない。

 私は神裂にインデックスを調べさせた。原作知識もあり簡単にインデックスの喉に仕掛けられた魔術を発見する。
 
「それでは私のしてきたことは……」

 神裂が打ちひしがれている。インデックスを死なせない為に心を痛めてもやっていたことが全部教会の仕掛けた事だったからショックなのも無理もない。

「それで貴女はどうします?」
「どういうことですか」
「私はインデックスを助けるために首輪を破壊します。貴女は?」
「できるのですか?」

 神裂が驚く。インデックスに仕掛けられている首輪はやたら強力な物だったので神裂達でもどうにもならない代物だったのだ。

 しかし、そんな物は関係ない。如何に強力な魔術だろうが、その幻想をぶち壊すだけだ。

「そこの当麻の右手は触れただけであらゆる異能をうち消すことができる。それは魔術だろうと呪いだろうと関係ないわ。そうでしょ当麻さん?」

 事実、この世界でも魔術師闇咲の知人の女性にかけられていた呪いもあっさりうち消せた。

 幻想殺しってデタラメだよね。下位世界で揉まれた分やけにパワーアップしているから原作より強力だし。
 
「ああ、インデックスを苦しめるなんて、そんな巫山戯た幻想は俺がぶち殺す!」

 おお、名台詞出た~。いいね、それでこそ上条当麻だよ。
 
「というわけで神裂さん、ステイルを起こして下さい」
「えっ、ええ」

 神裂がステイルを叩き起こす。ステイルは状況が分からず戸惑っていたが、神裂の説明で動揺していた。
 
「……それで君たちはどうしたいんだい?」

 ステイルが不審そうに言う。

「インデックスを救う。だから手を貸して貰いたいの」
「君たちを信じろっていうのかい?」
「でも今が最大のチャンスだよ。この学園都市ならば必要悪の教会の影響力がないし、切り札の幻想殺しもいるからね」
 
「……駄目だ!そんな不確実な方法が当てになるか!」
「おい、おめえ等はインデックスのダチなんだろ!だったら諦めたりしないで助けろよ!」
「なんだと、僕たちの気持ちが君に分かるっていうのかい!」

 ステイルが当麻に掴みかかっている。

「でもこのままじゃいつまでたってもインデックスは救われないわ。だから決めて欲しい。ステイル貴方はインデックスを助けたいんじゃないの? 笑って終わることが出来るハッピーエンドを求めていないの?」
「……」

 沈黙するステイル。
 
「インデックス悪いけど、口を大きく開けて頂戴」
「わかったよ」

 インデックスが口を開く。

「当麻さん」
「分かっている」

 当麻の右手がインデックスの喉に接触して、バチッという音で当麻がはじき飛ばされる。

「ぐっ!?」
「――警告。禁書目録の『首輪』、第一から第三まで全結界の貫通を確認。一〇万三〇〇〇冊の『書庫』保護のため、侵入者の迎撃を優先します」

 私の目の前には、豹変したインデックスの姿があった。
 
「ちっ!!」

 私は学園都市に広がるAIM拡散力場を集束して、オレンジ色の光翼を展開する。それは私『佐天令子』が絶対能力者として力を振るう形態。
 
 普段のインデックスは10万3000冊もの魔導書を暗記しており、魔神にすらなりうる能力がありながら魔力がないが故に、力を発揮できない少女だった。

 しかしこのインデックスは違う。凄まじい魔力を感じる。その上、放たれる魔術は竜王の殺息(ドラゴンブレス)。それは凄まじい勢いで放たせる閃光であった。

「A.T.フィールド全開!?」

 当麻の正面に展開される私のA.T.フィールド。かなりの負荷が掛かったが、それでも私のフィールドを破るには力不足。
 
「なっ!竜王の殺息を防ぐだと!?」

 ステイルと神裂さんが私のA.T.フィールドの防御力に驚愕している。確かに竜王の殺息は規格外の魔術。防御するなど、そう簡単に出来ることではないだろう。

 しかし、この身は絶対能力者(レベル6)。科学サイドでありながら天使の力をも行使できる者。
 
「絶対能力者(レベル6)を舐めるな~!?」

 更に気合いで竜王の殺息を弾き飛ばす。続けて当麻の頭上に白い羽根が複数舞い落ちてくる。だが甘い!
 
 アカシックレコードに接続。白い羽根の成分分析。分析完了。消去。

 私の力で白い羽根を消滅された。これが私の力、如何なる物質でも自分の思うままに操れる。例えそれがこの世に存在しない新しい物質であっても、アカシックレコードに接続して構造を把握して支配する。

 支配領域(テリトリー)。自分の領域内に存在するあらゆる物質を把握して操る力。

 アカシックレコードと組み合わせる事でこの力はより強力な物となった。それはまさに一定領域における絶対なる支配者。
 
「当麻、今よ!」

 今が最大の好期。当麻がインデックスに飛びかかり、「インデックスを助けるのに邪魔なら、まずはその幻想をブチ殺す!」その右手をインデックスに振り下ろした。
 


 結果としてインデックスは原作通りに救われた。原作と異なるのは、当麻が記憶喪失にならなかったこと。私が白い羽根を消したので無事だった。

 こうして、上条当麻の記憶喪失イベントは潰れた。それはいいのだが…。

「しかし、君のその力、本当に能力なのか?」

 ステイルが信じられないという顔付きをしている。まあ、竜王の殺息を防ぐわ、白い羽根を消し去るわ、かなり非常識な事をしでかしたから不審に思われて当然だ。
 
「いいじゃねえか。みんな無事だったインデックスを助かった問題ねえよ」

 私の力の一片を知る当麻はフォーローするかのように言ってくれた。まあ、私の援護ではなくただの本音を言っただけかも知れないが、好都合なので有り難く受け取っておこう。

 その後、ステイル達は事後処理が色々とあるということで引き上げていった。とまあ、これでめでたしめでたしと言いたい所だが…。

「あああーー!?寮がー!!」

 当麻の住んでいた寮が破損していた。A.T.フィールドで防いだとはいえ、竜王の殺息の余波が寮に被害を与えていた。

 こうなると当麻は持ち前に不幸スキルを発揮しており、当然ながら当麻の部屋が一番被害を受けていた。
 
「これが上条特性か…」

 などといって現実逃避をする。私がインデックスの魔術を上手く捌けなかった所為でこうなったので、私に責任が全くないとはいえない。

 更に言えば寮を出てすぐに首輪を外そうとしていたのも問題だった。派手に暴れても問題ない場所でやるべきでした。
 
 まあ、ステイルが人払いの結界を張ってくれたおかげで人的被害がゼロだったのが唯一の救いだね。

 弁償するのかって? これって形式上は、魔術サイドの人間がこの学園都市で起こした被害何だよね。となると学園都市としては例え私が関わっていると知っていたとしても責任追及はできない。今回の件も原因不明の事故という事で処理される筈だ。

 無責任だって? そう言われても、いきなりどうこうする事はできないよ。まあ、当麻にはアフターケアをするけどね。
 
 意外なことに、それに今回は学園都市の衛星に搭載されている樹形図の設計者を打ち落としたりしていないから、他の世界よりは被害が小さい。

 原作でも樹形図の設計者が打ち落とされたのはただの偶然だったから、流れが違うこの世界では破壊されない可能性は十分に考えられていた。
 
 勿論、アカシックレコードを使えばそういう事象も把握できる。でもそうすると面白くない。だからこそアカシックレコードから情報を仕入れることは限定的な物に止めている。

 何もかもが理解できる。全てが予定調和では面白くも何ともない。だから予想外な事というのは人生を楽しむスパイス。
 
 私は全能なる絶対者ではない。今を楽しむ一人の人間だ。

 

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とある少女の支配領域 1-1

2011年08月15日 18時21分58秒 | 小説

 俺、上条当麻は不幸に愛されている。何をやっても物事が上手くいった試しがない。

 監察軍の仲間には、俺の幻想殺し(イマジンブレイカー)が空気に触れているだけで異能だけでなく、俺自身の幸運までうち消しているようだと言われた。非科学的としかいえないが、こちとら三千世界でオカルト万歳な連中と散々やりやった実績があるだけに否定できない。というかこの能力の所為で俺の仕事は超能力とオカルト対策ばかりですよ。

 俺を対超能力兼対魔術最終兵器『上条』などと言う者までいる。
 
 七月二十日。折角の夏休みの初日だというのに、財布を捜してクレジットカードを踏み潰した上に担任から『上条ちゃんお馬鹿だから補修ですよ』とラブコールがくる始末。

 こういう長期休みは、いつもは身代わり人形に任せて俺は監察軍の方に行く事が多いのだが、この夏休みはこの世界で過ごすようにと佐天を含めた監察軍の人達から言われている。何でも重要な出来事があるのでそれをちゃんとこなせといわれたが、その内容自体は俺の行動に変化が出るといけないので教えられないといわれた。

 まあ佐天もこの夏休みはこの世界に残って俺のサポートをしてくれるらしいので、何か困った事があったら助けて貰おう。
 
 そんなことを思いながら取り敢えず布団を干そうとベランダに出たのだが、そこに白い物体が干されていた。

「はあ!」

 なんだ。これは? 俺はまだベランダに何も干していないぞ! 大体この部屋は一人部屋だから俺以外が布団を干せる筈がない。って、よく見ると白い服を着た少女のようだ。年の頃は14歳ほどの銀色の髪のよく見ると美少女だ。
 
「お……、おなか減った」

 俺が呆然としているとその少女はそういっている。そんな少女にどう反応したらいいのかとしばし考えてみる。

「おなか減った」
「……」
「おなか減った」
「……」
「お腹がすいた、っていっているんだよ?」
「はあ、とりあえず飯でも食うか?」

 しょうがないので取り敢えず部屋に入れて何か食わせてやろう。
 
 俺は軽く調理して食事を少女に出すと物凄い勢いで食べ出した。それは知人の某サイヤ人に迫るほどの勢いだ。まあ、彼女の前では口が裂けても言えないけどね。というか彼女は俺みたいに幻想殺しを持っているわけでもないのに、佐天の超能力を無効化しているんだよね。

 監察軍の調査では戦闘力に差がありすぎると相手の超能力をうち消してしまうらしい。
 
「うん、おいしい」

 少女の反応にそりゃそうだと思う。俺も伊達に長く一人暮らしをしているわけではない。それに監察軍で料理技能を学習装置で仕入れているからな。
 
「俺は上条当麻だ。あんたは?」

 俺は食事を終えた少女に話しかけた。

「わたしはインデックス。見ての通りシスターだよ」

 インデックスって目次のことだよな。あからさまな偽名だ。

「そのインデックスさんは、なんであんな所にいたんだよ?」

 俺の部屋は八階、どう考えても普通は外からベランダに行けるような高さではない。

「追われているんだよ」
「追われている?」

 穏やかでない言葉だな。

「うん、魔術結社にね」

 少女の口から出た魔術結社という言葉に眉を顰める。
 
 前もって佐天からこの世界に魔術が存在していることは聞いていた。魔術や魔法といっても世界によって原理や術式が違うのは当たり前で、実際そういった世界にもいったがやはり結構違うものだった。

 この世界の魔術は術者の生命力を燃料に術式をエンジンとして発動するらしい。まあこの世界で魔術師という物にあったことがないので人聞きでしかないが。

 これで問題なのが、この世界では科学サイドと魔術サイドは丁度勢力が拮抗しており、裏では色々と火種があるらしい。当然、今や科学サイドの象徴といっても過言ではないこの学園都市を快く思わない魔術師も多く、彼等が何らかの敵対行動を取る可能性も否定できない情勢であるらしい。
 
 ひしひしと厄介事の予感がします。とんでもない不幸がやってくるのを肌で感じるような感覚。なまじ不幸慣れしているだけに上条さんの不幸センサーは敏感です。
 
「そうか、それは大変だな。で何でそんな連中に追われているわけだ?」というと、インデックスがキョトンとして顔をして俺を見て、「貴方一般人なのに魔術を信じるの?」と意外そうに言われた。

 しまった! 魔術が一般には秘匿された世界では、一般人の反応は魔術などを信じないと言うのが普通で、俺のようにあっさりと受け入れるのはおかしい。うっかり監察軍での常識で行動してしまった自分の迂闊さに苛立つ。

「インデックスは嘘を言っていたのか?」
「ううん、本当だよ」
「ならいいよ。取り敢えず信じることにするからそれで良いだろ」と論点をズラして誤魔化しておいた。
 
 さてと、どうした物かと考えていると『ピンポーン』と呼び鈴が鳴った。

「はい、どなた様でしょうか?」とドアを開けると、そこには常盤台中学の制服を着た佐天がいた。

「上条さんお邪魔しますね」
「おっ、佐天か。どうしたんだ?」

 佐天が俺の寮にまでくるのは珍しい。何しろここは男子寮だ。仮にも常盤台のお嬢様である佐天があまり気軽に来るべき場所ではない。
 
「上条さん何か変わったことがないかしら?」

 唐突な質問だが、あまりにタイミングが良すぎる。恐らく知っていたのだろう。

「ああ、変わったシスターさんがいるぞ」
「そう、部屋に上がって良いかな?」
「ああ」
 
「はじめまして私は佐天令子と申しますわ。必要悪の教会の禁書目録さん」

 佐天の言葉にギョッとするインデックス。明らかに警戒している。

「ご心配なさらずとも私はこの学園の能力者の一人にすぎないので、魔術結社とは関係ありません」
「……本当?」
「ええ、ですからお話を聞きたいのです」
 
 佐天はインデックスから一通り話しを聞く。

 それによるとインデックスの持つ10万3000冊の魔導書を狙って魔術結社が彼女を襲っているらしい。そのためイギリス清教の教会に逃げ込もうとしている。というか10万3000冊って、どこにそんな物があるんだ。

 ホイポイカプセル(ドラゴンボール)か? 四次元ポケット(ドラえもん)か? この世界にはそんなもんないはずだぞ! どう考えても物理的に無理だろ!  何か突っ込み所満載(爆)。
 
「成る程ね、事情は分かりました。ですがこの学園都市はおろか日本国にもイギリス式の教会はありません」
「何とかならないのか?」

 佐天はかなりの物知りだから一応聞いてみる。

「当麻それ以前に問題があるの。インデックス貴女は一年以上前の記憶がないでしょう? おかしいとは思わない? 貴女は完全記憶能力を持っている筈なのに」
「…うん、そうだよ」
 
 インデックスが頷く。というか完全記憶能力?
 
「そういえば当麻には説明していなかったね。完全記憶能力というのは簡単に言うとあらゆる事を完璧に覚えて決して忘れない能力の事ね」
「決して忘れないって本当かよ?」

 暗記とか完璧って事か? なんてチートだよ。学生なら欲しがりそうだな。
 
「でも、それはあまり良い物でもないわよ。例えば一々どうでもいい事まで覚えて忘れられないから、ゴミ記憶ばっかりになってしまうのよ」

 確かにどうでも良いことまで覚えてしまうのは邪魔だな。
 
「まあ、必要悪の教会はインデックスのその能力に目を付けて10万3000冊もの魔導書を読ませて脳に暗記されたわけね」
「というか魔導書を10万冊以上読んでよく生きていられたな」

 俺は感心する。確かアーカムシティがある世界では魔導書を一冊読むだけでも命がけだ。下手すれば廃人になる。
 
「こっちの魔導書もけっこうヤバイから普通の人間が不用意に見ていいものじゃないわ。それを10万3000冊だからインデックスもかなりの規格外ね。最もだからこそ教会も彼女に細工もしているわけだけど」
「細工ってどういうこと?」

 インデックスが聞き捨てならないと佐天に聞いてきた。

「それはね……」

 佐天は必要悪の教会がインデックスに仕掛けた首輪の説明をする。
 
 必要悪に教会はインデックスを逃さない為に、一年に一度記憶を削除しなければならない魔術的な仕掛けをしているが、表向きは完全記憶能力によって脳が圧迫されて死んでしまうので一年に一度記憶を削除しているということにしている。今、インデックスを追いかけている魔術師は元々インデックスの友人であったのだが、その偽情報を真に受けてインデックスを追跡している。
 
 私の裏事情の説明(暴露)にインデックスは愕然となった。

「それじゃ私を追いかけているのは…」
「そう、貴女と同じ必要悪の教会に所属する魔術師よ。彼等は貴女を助けるつもりのようね。実際には踊らされているのだけど」
「何とか方法はないのか?」
「それはあるけ……、んっ!?」
「どうしたんだ?」

 いきなり言葉を切った佐天を不審に思い聞く。
 
「魔術師がこちらに来ているわ。このまま部屋にいるのはマズイわね。当麻外に出るわよ」
「もうバレたのか?」
「インデックスが身につけている修道服はかなり強力な霊装みたいだからね。彼等からみればかなり目立つわ。とにかく部屋に乗り込まれる前に外に出た方が良いわ」
「でもよう、さっきの話しだと学園都市に乗り込んできている魔術師ってインデックスの友人だったヤツなんだろ。だったら話し合いで何とかならないのか?」
「それが出来るならそうしているけど、戦闘になる可能性が高いわ」
「なんか佐天、妙に機嫌が良くないか?」

 心無しか俺には佐天が浮かれている様に見えた。まるで心待ちにしていた楽しみが始まったかの様な印象すらある。
 
「そうね、心ときめかせているかしら? これで始まりだから…」

 佐天は意味不明な事を言いつつ部屋を出ていった。

「はあ、しょうがねえな」

 俺は溜息を付きながら佐天の後を追って、インデックスと部屋を出た。
 
 これが俺『上条当麻』がこの世界の魔術世界との関わりの始まりだった。
 


後書き

 漸く『とある魔術の禁書目録』一巻の内容に入りました。令子は禁書目録のイベントを優先して超電磁砲に関しては必要以上に関わらないつもりです。とはいえ絶対能力者進化計画を潰した事で既に話しが変わってきていますけど。

 

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とある少女の支配領域 5-1

2011年08月15日 18時20分02秒 | 小説

 四月二十五日。一方通行(アクセラレータ)は天井と打ち止め(ラストオーダー)を探すために町中を走っていた。そんな中で彼は考える。あの実験の時の事を。

 俺は弱くなったのか? いや、あの実験に乱入してきた最弱(レベル0)の少年に破れたとはいえ、一方通行の能力はなんら代わりない。あらゆるベクトルを触れただけで変換できる最強の超能力者(レベル5)に間違いない。
 
 アイツが反射を破ったネタは何となく分かった。アイツは俺に対して”右手だけで”攻撃していた。消して左手や足を使わなかった。更にプラズマをうち消した時も右手を突き出していた。

 つまりアイツはなんらかの方法で能力をうち消せるが、それは右手でなければ無理なのだろう。

 どういう訳か俺が無能力者(レベル0)のアイツに負けた事が学園都市で噂となって広がっているらしく、馬鹿共が俺を襲撃するようになった。まあ、そういった者達はすべて反射で自滅していった。
 
 そんな状況で俺はミサカの一人と出会った。『検体番号20001、打ち止め(ラストオーダー)』

 それが少女の名前。実験の中止によって培養槽から放り出されたという彼女の話を聞き、取り敢えず打ち止めを寮に連れて帰った。
 
 翌日、連れていったファミレスで体調を崩した打ち止めを残して、俺は研究所に行った。打ち止めを連れていくと研究者達が何をするかいまいち分からなかったからだが、これが失敗だった。そこにいた芳川 桔梗に天井 亜雄が打ち止めにウイルスコードを仕掛けた事を聞いた。『人間への無差別攻撃』それがコードの内容だった。

 妹達の上位個体の打ち止めからウイルスコードが発信されると世界各地にある学園都市の協力機関にいる二万人もの妹達が感染して、一斉に暴走する。それは学園都市の崩壊、そして軍事バランスの崩壊に伴う世界大戦に結びつく。最悪の場合は世界が滅亡する。
 
 そこで芳川に提示された二つの手段。一つは、打ち止めを殺す事。もう一つは、天井を捕らえてコードの解除法を聞き出す事。
 
 言うまでもなく打ち止めを殺す方が簡単だ。もとより一方通行は守ることよりも殺す方に長けている。能力の特性だけでなく、その有り様が。だが一方通行は打ち止めとの会話が過ぎる。

「…………」

 一瞬の躊躇い。

「へッ、そンなの決まってんだろ!」

 そして一方通行はあえて困難な後者を選んだ。人生で最初の助ける為に。
 
 先程のファミレスに急いで戻って打ち止めを探したが、既に天井に連れていかれていた。天井と打ち止めを探し回る羽目になってしまう。

 数少ない救いは、一方通行が打ち止めと別れる少し前に学園都市に侵入者が現れたことだ。そのため学園都市の警戒ランクが跳ね上がり、天井が街の外に逃げ出せなくなった。どこの誰かは知らないが好都合だ。
 
 人気のない区画で、ようやく天井の車を見つけた。足下のベクトルを変更して加速して一気に距離を詰める。車に足をつけてベクトルを変換しただけで車が壊れた。

「よう久しぶりだな、天井さんよォ」
「うあああ!」

 天井は破壊された車から降りて逃げ出そうとするが、そうはいくか! 足下のベクトルを変換して石を高速で天井に叩き付ける。

「ぐはっ!」

 情報を吐かせないといけないので死なないように手加減をしたが、余りの痛みに天井は意識を失って倒れた。
 
 意識のない打ち止めを確認して、芳川に電話をかける。

「芳川、ガキを取り戻したぞ!」
『そう、なら後はウイルスコードを解除するだけね』
「ここのパソコンで解除できないのか? ここからお前の研究所までだと結構距離があるぞ」
『無理よ。ウイルスコードの解除には専用の機材と学習装置がないと』
「ちッ!」

 車を壊したのは失敗だったか。めんどくせぇ。
 
『問題ないわ。今私が車でそっちに向かっているわ。そろそろつく頃よ』
「コードの解析はどうなっているんだ?」
『9割方終わっているわ。後二時間もあれば完了するわ』

 タイムリミットが後5時間だから十分に間に合うな。一方通行は安堵の溜息を吐く。
 
 しかし打ち止めは突如奇声を発し始めた。それは人間の言語というよりもコンピュータ言語のようだ。

「なっ、なンだ」
『……ウイルスコードが機動準備に入ったわ』
「馬鹿な! 後五時間ある筈だろォ」
『偽情報よ。ダミーに騙されたわ!』

 芳川が怒りに染まった声を上げる。ウイルスコードにダミーが含まれていたのか。
 今から芳川がここに来て解析しても時間が足りない。いや、解析自体がダミーで誤魔化されているから信用自体できない。

 まずい、このままでは世界中の妹達にウイルスが送られてしまう。
 
「おい芳川なンか方法はねえのかァ!」
『打ち止めが妹達(シスターズ)に上位命令文を発信するには約10分かかる筈。それが発信されてしまったら終わりよ』

 それは、つまり…。

『だから、今すぐ打ち止めを始末しなさい。もう彼女を殺すしかないわ!』
「くそッ、それしかないってのか!」
 
 結局俺には誰かを助けることなど無理なんだ。一方通行の脳裏にあの時二万人の妹達を守るために動いた絶対能力者(レベル6)の姿がよぎる。

『支配領域』あらゆる素粒子に干渉できる為に、あらゆる科学反応が再現可能という応用の幅はほぼ無限の能力。理論上不可能とされた多重能力者のような物で、地球環境そのものすら改造することが可能というトンデモな能力。

 学園都市最高と呼ばれ、唯一自分よりも評価されている至高の能力者。あれだけの能力があれば、この少女を守ることは容易く出来ただろう。
 
「くそ、あいつがいれば…」

 あの時は妹達を守るために動いたのに、今回はいない。一方通行は分かっていた。そんな都合の良い正義の味方などいないという事は。それでも佐天がたった一人の少女を守っていない事に苛立つ。
 
 俺の『一方通行』はあんな応用などきかない。最強の超能力者と言われながらも、血液や生体電気を逆流させて体を爆砕させる事しか思いつかない。所詮自分の身だけを守り他者を殺すだけの力…。
 
「待てよ。生体電気の逆流……」

 そう、あの時は反射だけでなく、風のベクトルを操作して風を操った。ならば打ち止めの脳波を操作することも…。そうだ! 芳川から打ち止めの感染前の人格データを預かっていた。
 
「おい、脳内の生体電流を操作すれば学習装置と同じ働きができるンじゃねぇのか?」
『無理よ。確かに君の能力はあらゆるベクトルを自在に操る事ができるわ。でも人間の脳の信号を操るだなんて……ッ!』
「できねェってことは無ェだろうよ。反射はできるンだ。ならその先の操作だってできるはずだろォが」
「仮に脳内電流を操作できたとしても、ウイルスを完全に除去するなんて不可能よ。なにせ肝心の対ウイルス用のワクチンがまだ完成してないんだから」
「そンなもん自分でやってやる!」

 そう言うと携帯電話を放置して作業にかかる。このデータを元にそれ以外のデータをまとめて削除してしまいばいい。いちいちデータを解析する必要がないからこれなら可能だ。感染前のデータを覚えて、打ち止めの頭に手で触れる。
 
 感染前のデータと比較するして対象コードを出す。コード数357081。これをまとめて削除すればウイルスもまとめて消せる。一方通行は削除を進めていく。生体電流の操作は上手くいっている。

 本来ならば学習装置を使う方がいいのだが、今はそんな贅沢を言ってられない。現在削除しているデータの中には一方通行と過ごした記憶も含まれることに一抹の寂しさを感じたが削除を続けた。

 よし、もう少しだ。これなら十分間に合う、と考えた時、ガチャと金属音が聞こえた。嫌な予感を感じて其方を見ると天井が起きていて拳銃をこちらに向けていた。
 
「邪魔…をするな…」

 くそ、もう起きやがったのか! まずい、今は精密作業をしているんだ。反射もできねぇ。現在の俺はこの作業を終わらせるか中断しないかぎり反射の為の演算もできない。時間がない。かといって脳の操作している精密な作業を中断なんてしたら、打ち止めの脳が確実に壊れてしまう。

 天井がこちらに向けている拳銃の引き金を引こうとしている。畜生、後もう少しだってのに…。

 その時、天井が不自然に横に吹っ飛ばされた。

「なンだと!」

 いきなり天井が吹っ飛ばされた事に驚く。

「ぐっ、なんだ!?」
 
「天井だね。見つけたわ」
「お、お前は!?」

 そこにいたのは絶対能力者(レベル6)の佐天令子。
 
「これでいろいろと小細工をした甲斐があるというものね」
「なんだと、どういうことだ!」

 天井がヒステリックに怒鳴り散らす。

「ふっ、おかしいと思わなかったの? どうしてよりにもよってこんな時に警戒ランクが跳ね上がったのか」
「まさか!」
「そう、獲物を檻から放すと面倒でしょう?だから檻をキッチリ締めたのよ」
「そういうことか。お前は私達の実験を邪魔して、またしても私の邪魔するのか!」

 起きあがった天井が怒りを露わに佐天に向けて拳銃を発砲するが、佐天は弾丸を片手で無造作に掴み取る。

「……これで、攻撃のつもり?」

 佐天は、まるで戦時中にいたB29を竹槍で打ち落とそうとする人を見るかのように呆れ果てた顔をする。

「つまらない。例え無駄でもこの私を攻撃するなら、そんなちゃちな玩具じゃなくて陽電子砲でも持ってくることね」

 学園都市第一位の絶対能力者をたかが拳銃でどうこうできるわけがないが、それを考慮しても佐天には能力以前に何か絶対的な自信でもあるのか、拳銃を撃ち込まれても揺るぎもしない。
 
 次の瞬間天井の持っていた拳銃が消えた。空間移動? いや、違う! 素粒子レベルで拳銃に干渉をして、拳銃その物を消したのか。
 
「それと、これは返すわ」
「ぎゃあ!」

 佐天が手で掴んでいた弾丸を指先で軽く弾くと、天井の足に命中して天井が悲鳴を上げて倒れる。
 
「話しにならないね。まあいいわ。天井さん年貢の納め時ですよ。という訳で皆さん連行して」

 佐天の言葉にどこからともなく黒服の男達が現れて、天井を拘束して連行していく。
 
「てめェ、なンでここに…」

 既にデータの削除は終了している。先程の危機から急転直下の状況変化に一方通行は戸惑う。

「実は先日絶対能力者進化計画の邪魔してしまったので、その穴埋めに統括理事長に一つ貸しを作ろうと天井の捜索に協力していたんだよ」

 あれで上層部に睨まれてしまったというわけか。まあ、当然だな。
 
「それじゃ今回の一件は…」

 すでにこの場に来ていた芳川が口を出す。

「ええ、上層部には知られています。でも上の方には私がOHANASHIしましたので、今回の事で打ち止めを含めた妹達への待遇は一切変更しないそうです。ただ芳川さんに関しては研究者としての復帰は難しいと思いますね」
「仕方ないわ。それは覚悟していたしね」

 芳川が諦めた表情で言った。計画の失敗だけでなく、今回の一件もある。統括理事会もそこまで甘くないだろう。
 
 一方通行はもう一つの言葉が気になっていた。”打ち止めや妹達への待遇が変わらない”。一方通行は、今回のことが学園都市の上層部に伝われば、妹達を危険視して始末してしまうのではないか、と内心恐れていた。だが佐天がそれを抑えたらしい。

 何だ、あいつ等をキッチリ守っているじゃねぇか。
 
「おい、この前風のベクトル操作の練習に付き合うって言っていたな」
「はい」
「なら練習につき合え!」
「そうですか、分かりました」
 
 そう、俺は強くなる。そして人を守ることが出来るような力を手に入れるさ。
 


後書き

 一方通行救済イベント。このSSでは一方通行はミサカを殺していないし、負傷もしていません。だから一方通行は強めになります。


 
解説

 佐天令子
 身長157㎝、体重45㎏、スリーサイズ80/55/82(14歳の時に外見年齢が固定して、それ以来変化なし)監察軍に所属する転生型トリッパー。
 当SSにおける学園都市第一位にして絶対能力者。
 黒髪黒目で、髪を腰の少し前当たりまで伸ばしている。
 ファティマとしての特徴を持つため全体的に細身で知能身体能力が並はずれている。

 

 学園都市の序列 能力者 能力名
 第一位 佐天令子 「支配領域(テリトリー)」
 第二位 一方通行 「一方通行(アクセラレータ)」
 第三位 垣根帝督 「未元物質(ダークマター)」
 第四位 御坂美琴 「超電磁砲(レールガン)」
 第五位 麦野沈利 「原子崩し(メルトダウナー)」
 第六位 常盤台中学の一生徒 「心理掌握(メンタルアウト)」
 第七位 未登場 不明
 第八位 削板軍覇 名称不明

 強度(レベル) 段階 程度
 絶対能力(レベル6) 神の領域の能力
 超能力者(レベル5) 単独で軍隊と戦える程の力
 大能力者(レベル4) 軍隊において戦術的価値を得られる程の力
 強能力者(レベル3) 日常生活において活用可能で、便利と感じられる力
 異能力者(レベル2) レベル1とほとんど変わらない程度の力
 低能力者(レベル1) スプーンを曲げる程度の日常では役に立たない力
 無能力者(レベル0) 測定不能や効果の薄い力

 

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とある少女の支配領域 3-2

2011年08月15日 18時18分27秒 | 小説

 可能な限り原作に近い形で、なおかつミサカを一人も死なせないように実験を終わらせる。

 そんな無理難題をこなすために、佐天は工作を開始した。直球にいうと実験初日に上条に実験を中止させる事を依頼した。

 事前に教えておくとアレイスターが妨害する可能性があったので、あえて実験直前に上条に依頼してアレイスターが介入する暇も与えず事を終わらせた。

 学園都市で活動する以上、滞空回線(アンダーライン)を警戒しないといけないから。
 
 できれば原作と同じでミサカが殺されかけている場面で劇的に助けに入るというシュチュエーションの方が燃えるのですが、相手が一方通行では数秒でミサカが殺されかねない。それは困るので実験開始前に乱入した。
 
 私の目の前では上条が一方通行を殴り飛ばしている。

 上条の戦闘力は180。『ドラゴンボール』でいえば、第22回天下一武道会で天津飯と戦った時点の孫悟空の戦闘力に匹敵する。

 一方通行のベクトル操作を無効化するには些か心許ない戦闘力だが、それならば右手以外は触れなければ良いだけのことだ。

 幻想殺しによって反射さえ無効化されれば、強力すぎる能力のためにケンカのやり方すら身につけていない一方通行とナメック星人に弟子入りして武道家として高い能力を持つに至った上条とではその差は圧倒的だ。

 本来ならば一方通行は上条の拳の一撃で死にかねないが、佐天は上条にはくれぐれも一方通行には手加減して殴るように言っておいた。
 
 これは一方通行と上条の戦いをある程度続かせるためでもあった。

 私の期待通り、一方通行と上条との戦いでも原作通り一方通行が風のベクトルを操る事を思いついた。これは後々の進行に役に立つだろう。
 
 一方通行は上条にぶん殴られて気絶している。研究所の連中は今頃大慌てでしょうね。

「上条さんもう良いので引き上げましょう」
「ああ」

 上条が了承するのを確認すると私と上条はその場から消えた。
 
「これでいいのか?」

 火星圏に待機させている三千世界航行艦のサポートによるテレポートドライバーで研究所の外に空間移動した。

 私一人ならばテレポートドライバーを超能力で再現して移動可能だったが、そうすると上条が無効化してしまう。だからこそあえて超能力ではなく、純粋科学技術に頼った。

「ええ、これでいいわ。ご苦労様」

今回やって貰う事はこれで終わりです。
 


「うっ」

 倒れていた一方通行が呻く。

「気がついたかしら?」
「お、お前は!」
「ここは病院よ。気絶した君を研究所の人が送ってくれたんだよ」

 番狂わせがあって混乱していただろうに、ご苦労なことです。
 
「まず報告しておくけど、今回の件で君の強さに疑問が出てきてしまったので、実験は中止されるでしょう」
「そうか、アレはお前の差し金か?」

 一方通行が佐天に聞く。

「ええ、私が上条に実験を止めるように頼んだわ」
「ちっ、余計なことをしやがって!」
「本当にそう思う?」
「何だと?」

 一方通行は眉を顰める。

「確かに君は実験に参加してミサカ達を殺そうとしたけど、もしも彼女達が『死にたくない』とか『実験に参加したくない』と言って貴方に頼み込んでいたら、貴方それでも彼女達を殺せた?」
「……!?」

 一方通行は絶句した。
 
 そう、もしもそうであったなら…。そもそもこんな狂気じみた実験など中止されていただろう。

 この実験は一方通行を絶対能力者(レベル6)にするための物だ。そのため一方通行が協力しないというだけで計画が頓挫する。

 例え研究者達が実験をやるように一方通行に強制しようとしても、それは実行不可能だ。最強の超能力者は伊達ではない。
 
「君は心の何処かで、誰かがこの実験を止めてくれることを望んでいたんじゃないの?」
「……」

 沈黙する。佐天の言葉が一方通行に直撃していた。

「まあ、仮定の話はいいわ。どのみち実験は中止されたんだしね」
 そう全ては終わった事。計画が中止された以上、考えても仕方がないだろう。
 
「そういえば、あのとき風のベクトルを操ったね。私も風をある程度扱えるから、なんなら私が風の練習に付き合っても良いよ。風力使い(エアロシューター)や空力使い(エアロハンド)の超能力者(レベル5)がいないから私以外適任がいないでしょうし」

 一方通行は優れた演算能力を誇るが、それはあくまでベクトル操作に特化している。風も使えるといっても風使いのように風の操作に慣れていない。もし、一方通行と風系の超能力者(レベル5)が風だけで勝負すれば間違いなく一方通行は負けるだろう。

 まあ、そんな飛車角抜きのハンディキャプマッチで勝っても、あまり意味はないけどね。だが、一方通行が風の操作に慣れれば、それだけ風の超能力者(レベル5)に近づくことになる。とはいえ一方通行の練習相手が大能力者(レベル4)程度では力不足だ。

 その点、私の支配領域(テリトリー)は素粒子レベルで物質に干渉できるからあらゆる科学反応を再現できる。つまり鎌鼬(かまいたち)どころか竜巻や台風でも簡単に使えるので、私ならばそこら辺の風力使いよりも効率よく風を使える。
 
「へっ、誰がてめえの手を借りるかよ!」
「そう、気が向いたらでいいわ」

 佐天はそれだけ言うと病室から出ていった。
 


 窓のないビルの中、学園都市統括理事長のアレイスターは溜息を吐いた。一方通行の絶対能力者進化計画の中止。これはいい、元々中断しても問題ない計画だった。しかし実験を一度もせずに終わるとは思わなかった。

 そしてそれをなした少女の事を考える。
 
「お邪魔します、と言うべきかしら?」と不意に少女が声をかけてきた。そこにいたのはアレイスターが考えていた懸念の元凶とも言える佐天令子だった。
 
 このビルは窓もドアもない上に核攻撃にも耐えられる構造になっていて、空間移動系の能力者でなければ出入りが不可能なはずの場所。アレイスターがここで直接会う者は案内人を務める空間移動系の能力者の手を借りているというのに空間移動系でない佐天が、自力でここに侵入していた。

 素粒子を操る能力を応用したのか? それとも監察軍の超技術を使ったのか? アレイスターには何れかはわからないが、彼にはそれは大した問題ではない。重要なのは佐天が自力でこちらに来る手段を有しているという点だ。
 
「これはどういうことかな?」

 言外に佐天が絶対能力進化計画を妨害したことを責める。

「別に貴方にとって許容範囲内でしょ? 最初からミサカクローンを皆殺しにするつもりはなかった訳だし」
「……」

 アレイスターは、何故それを知っているという言葉は言わない。

「それに妹達を身体の『調整』の為とか、同じ外見の人間を学園都市に二万人もおけないからという口実で、世界各地の協力機関に送り込めるから好都合でしょ?」
「君はどこまで知っているのかね?」
「監察軍に関しての概要は話したと思うけど、私達は様々な異世界とその並行世界に干渉できる。だから並行世界を観測すれば粗方の情報は手に入る」
「……」

自分でいうのもなんですけどトンデモな話しだよね。アレイスターは沈黙しているし。
 
「まあ、私個人の意見を言えば、例えこの世界から魔術が消えてもどうでもいいけどね。どのみち無神論者で能力者の私は魔術が使えないから。自分が使えない技術には興味がない」

 これは大半のトリッパーも同じだ。監察軍の者は無神論者かシドゥリ教徒が9割以上を占める。今更この世界の宗教にハマる者はいないから、この世界の魔術にはあまり利用価値がないし、既に並行世界で粗方の情報は入手済みだ。

 むしろ超能力の方が調査対象になっている。私も監察軍に所属する科学者の調査にいろいろと協力している。
 
「それより面白い情報があるけど、聞きますか?」
「何かな?」

 ふっ、食いついてきたか。

「実は……」

 私はいろいろと企みながらもアレイスターにさして問題ない情報を伝える。
 


 その後、ミサカクローンの一人が、上条に暫く身体の『調整』で会えないと伝えた。今回の一件でアレイスターは実験を中止させた。元々、中止することも考慮にいれていただけに問題なく進み、一部を除いて大多数のミサカは世界各地の学園都市協力機関に預けられた。私は直接聞いてないが、アカシックレコードからその情報を仕入れた。

 今は四月なので、三ヶ月後に禁書目録が学園都市に来るでしょうね。となると魔術サイドとのガチバトルとなるけど、その時の問題は……。いや、ないか。本編に備えて大幅に戦闘力を上げたから。

 私の『別荘』を使って特訓したり、ナメック星人の長老にお願いして潜在能力を引き出してもらったり、神精樹の実の欠片を食べたので、今の私の戦闘力は30,000にもなる。例えアックアが攻めて来ても、『私の戦闘力は53万ですよ』(byフリーザ)なネタが実行できるほどですから。

 超能力も使わずに片手だけでフルボッコできるというか、ここまで戦闘力に差があると魔術も超能力も全く効かないから、この『とある魔術の禁書目録』の世界では、それこそ天使か神でもないとまともな戦い自体ありえないでしょうね。いや天使でも無理かな?
 
 別荘は『魔法先生ネギま!』のエヴァンジェリンの別荘を参考にしており、他の世界の魔導技術を導入しているなど異世界の技術の集結地たる監察軍の商品らしい代物だ。小さな島に中世ヨーロッパ風の城(実際は監察軍の超技術を導入)があり広大な海が周りに広がっている。時間の早さもオリジナルと同じで外の24倍で外の一時間が別荘では一日に相当する。

 更に修行のために精神と時の部屋(監察軍ver)の局所エリアもある。この精神と時の部屋は『ドラゴンボール』のそれと同じような外見で、違うのは重力と空気濃度をこちらで自由に設定できる事だ。

 ここは更に別荘の15倍の速度で時間が流れる。つまり24×15=360となり、精神と時の部屋で360日過ごしても外の世界では1日しか過ぎていないという状況になる。

 これは多用すると早く歳をとるが、14歳で外見年齢が止まり以後歳を取らないファティマである私には問題ない。
 
 ちなみに上条は『別荘』は使えないし、潜在能力を引き出して貰うこともできない。『別荘』は複数の世界の魔導技術が使われているから、上条が近づくだけで壊されかねないし、潜在能力の引き出す力も無効化してしまう。幻想殺しは強力だけど融通が利かない。本人の意思で任意に無効にしたりできれば、もっと使いかってがいいのだけど。

 その事を知った上条は、いつものように「不幸だ~」と言っていたけど、これはいつものことだしね。上条の不幸体質は恐ろしいことに他の下位世界でも変わらなかったから、他の仲間も実になれたものだ。
 


後書き

 オリ主チートフラグ! フリーザばりに無双です。というか『とある魔術の禁書目録』で戦闘力30,000はチート過ぎる。

 

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とある少女の支配領域 3-1

2011年08月15日 18時17分09秒 | 小説

「突然だけど上条さんに依頼があります」
「えっ」

 放課後に唐突にあった佐天のいきなりの言葉に当麻は一瞬戸惑った。四月十二日。それは高校に入学してすぐの日だった。
 
「絶対能力進化計画?」
「ええ、第一位の超能力者『一方通行』を私と同じ絶対能力者にするための計画だけど、ちょっと問題があってね」

 佐天はそう言って当麻に複数の書類を渡した。
 
「こ、これは…」

 当麻はその書類を読んで愕然とする。

 御坂美琴のDNAを使った二万人もの量産異能者。二万人もの御坂のクローンが様々な状況で戦って殺されていくシナリオ。残虐なことに時間、場所、戦い方など逐一書かれている。余りのことに常人なら呆然としただろう。

 しかし当麻はこれまで三千世界で散々修羅場をくぐってきた身だ。この程度のことはこれまでにもあった。
 
「……ふざけやがって」

 だが、それが納得できるかといえば答えはNOだ。

「頼みたいことはこの計画を潰して欲しいの。具体的には今日の22:00に始まる第一回の実験に乱入して一方通行をぶちのめしてくれればいい。ちなみに今回は私は関与できないから裏方に回るけどね」
「どういうことだ?」

 佐天は僅かに表情を崩す。

「この実験は一方通行を絶対能力(レベル6)にするものだから、実験を潰すには一方通行が実は対して強くないと研究者達に認識させないといけない。故に格上の私が一方通行を倒しても意味がないけど、最弱の筈の無能力者(レベル0)とケンカしてあっさり負けしたらどうかしら?」
 
 当麻の右手の幻想殺しはあらゆる異能や魔術をうち消すが、それは学園都市の機材では一切証明できない。だから学園都市が総力をあげて当麻を調べても結果は無能力者(レベル0)としかでない。

 そんな最弱に負ければ、一方通行の強さに疑念が出て実験は中止に追い込まれるだろう。
 
「わかった」

 当麻は佐天の依頼を受けて行動の詳細を打ち合わせていった。
 


四月十二日 21:55
 
 夜間の人気のない場所で、二人の少年少女がそこにいた。

「それにしてもよォ~、わざわざ俺にぶっ殺される為に二万体も生まれるなンてご苦労なことだよなァ~」

 白い髪に赤い瞳の少年は、対峙する少女を嘲るように言う。

 この少年こそが学園都市第二位『一方通行(アクセラレータ)』。現存する超能力者(レベル5)の中でも最強の存在であり、絶対能力者(レベル6)の『支配領域』を除けば学園都市最強の存在。
 
「問題ありません。ミサカはその為に作られましたから。とミサカは答えます」

 少女は無表情に淡々と少年に答える。その声には何の感情も感じ取れない。見るものがその少女を見ればあの『超電磁砲』御坂美琴と間違えるだろう。少女は顔、体格、服装に至るまで御坂美琴と同じだったからだ。

 違うのは、少女の目の焦点があっていない事と少女の頭にはまるで軍で使うようなゴーグルがかけられている事だろう。

 少女は御坂美琴のDNAマップから作り出された量産異能者の一人だ。
 
「おい、お前のオリジナルでさえ俺に歯が立たないってのに、オリジナルの一%にもみたねェ、できそこないのお前ごときが俺に勝てるわけねぇだろうがァ」

 なおも一方通行はミサカを罵る。だが一方通行本人も気付いていないが、彼は他人を無闇に傷つけるのは望んでいない。ハッキリいってこんな狂気じみた実験などやりたくないと思っていて、だからミサカを怯えさせ実験を止めさせようとしていた。
 
「実験開始から後四分です。準備は宜しいですか。とミサカは問いかけます」
「くッ!いいぜ。そンなに死にてェならぶッ殺してやる」

 しかし、ミサカは実験を止めようとしない。元よりミサカは自分の価値を見いだしていない。単価18万円と少し高いパソコン程度の価格で、僅か14日で作れる乱造品。それがミサカだからこの時点で彼女たちは自分の価値を認めていなかった。

 一方通行はここでミサカを殺す決意をする。自分がレベル6になるために。
 
「では、第一次実験の準備をします。所定の位置に着いて下さい」

 その言葉に一方通行が移動する。この実験では場所だけでなく実験開始の二人の立ち位置まで指定されている。

 そして時間が迫り実験が開始されるようとする時。
 
「待ちなさい!」

 その場に第三者の声が響いた。
 
「おいおい、どういうことだよ。こりャ、あれかい目撃者は消すってやつかよ?」

 勘弁してくれよ、と呆れたように一方通行がぼやく。そこには二人の少年少女。高校生ぐらいのツンツン頭の少年と常盤台の制服を着た少女。
 
「貴方が一方通行(アクセラレータ)ですね。私は佐天令子。『支配領域(テリトリー)』と名乗れば分かるかしら?」
「何ッ!?」

 その言葉に一方通行が顔色を変える。
 
 それは自分を差し置いて絶対能力者(レベル6)になり、学園都市最高の能力者と称されている存在の名前だ。一方通行は佐天の事を詳しく知らなかったが、研究所の連中はしきりに佐天を研究したがっていたのは噂では聞いていた。

 超能力を研究している学園都市でも大能力者(レベル4)以上の者は数少ない。超能力者(レベル5)となると専用の研究所を作られかねないほど貴重な存在であるため、絶対能力者(レベル6)の佐天の価値は計り知れなかった。それだけに研究に一切協力しない佐天を研究者は残念がっていた。

 この手の研究は建前上強制できないので、佐天は通常のカリキュラムしか受けておらず、システムスキャンなどの最低限の検査しか受けていない。
 
「ほう、おもしれェ噂の絶対能力者(レベル6)が何のようだ? まさかこの実験を止めようというのかァ?」
「私はだだの見届け人。実験を止めるのはこちらの上条さんです」

 佐天が上条にチラリと視線を向ける。

「はァ? まさかその男が俺と戦うっていうのかァ?」

 一方通行が呆れる。
 
 一方通行は運動量、熱量、電気量などありとあらゆるベクトルを皮膚上に触れただけで操るという能力がある。それ故あらゆる攻撃を反射し、あらゆる敵を一撃で倒してきた。色々と規格外な佐天を除けば誰も勝てない筈だ。

 実は研究者達は佐天と一方通行が交戦すれば一方通行が負けるだろう考えていた。確かに自分は自分の周りのベクトルを操るものに対して、あちらは地球規模で大規模な干渉ができる。規模という点に置いてはあちらの方が圧倒しているから佐天ならば一方通行に勝てるだろう。
 
 しかし、実際に戦うのは別の少年。一方通行が知っている他の超能力者(レベル5)のデータとは一致しないから、大能力者(レベル4)以下の能力者と思われる少年が一方通行と戦った場合は、どう考えても一方通行が勝つ。
 
「無茶苦茶です。彼は最強の超能力者(レベル5)ですよ。貴方がどのような能力を持っているかは知りませんが、勝てるはずがありません。それにミサカはお姉様の乱造品のクローンにすぎません。替えの効かない貴方が命をかける事はありません。とミサカは訴えます」
「お前簡単に命を投げ出すんじゃねぇ!お前が死んだりしたら御坂だって悲しむ。クローンだから殺して構わないなんてふざけた理屈(幻想)は俺が殺してやる!」
 
 そう言い切る上条を一方通行は凝視する。

「……おもしれェ。そこまでいうンなら相手になってやらァ!」

 足下のベクトルを操作して一気に加速して上条に襲いかかる一方通行。上条はそれを容易く避け、右手で一方通行を殴りつける。勿論本気ではなく、ある程度は手加減していたとはいえ常人とは桁違いに強い上条の拳。それをまともにくらった一方通行は殴り飛ばされた。
 
「い、痛い!」

 能力に目覚めてから受けたことのない痛みという感覚。慣れていない感覚故に一方通行には免疫が無くとてつもなく痛く感じる。

「き、きまッたぜ。最高にきまッたぞ。お前はッ!?」

 起きあがった一方通行がまたしても加速して襲いかかるがやはり避けられて、右手で殴りつけられる。
 
「畜生!何だ!何であたらねェ!」

 一方通行の足下のベクトルを変化させての加速は確かに加速力という点では優れていたが、瞬動と同じで動きが直線的すぎて容易く読まれてしまう。ましてや気を扱い武術の修行をしている当麻の身体能力は、現存する身体強化系の能力者でも歯が立たないほどだ。そして一方通行はあまりにも動きがデタラメだった。

 彼はあまりにも強力すぎる能力の為にケンカのやり方をまともに修得していないので、攻撃の回避などしなくてはならないと思ってもできない。それ故肝心の反射が破れると一気に不利になった。
 
「グハッ」

 一方通行は上条に殴りつけられ、追いつめられて焦った。その時ふと思いつく。自分はあらゆるベクトルを触れただけで操れる。ならばこの身に触れる風のベクトルも自在に操れる。

「ギガガガアアガガッ!!」

 一方通行の周りに風が集まって、それは上条に放たれた。

「はあっ!!」

 しかし、それは上条の気合いで消し飛んだ。
 
「なッ!」

 一方通行が愕然とした。先程の風は思いつきに過ぎなかったが、それなりの威力があったのに上条はそれを苦もなく消し飛ばしたのだ。
 
「ふふっ、一方通行彼には中途半端な風など効かないわ。どうせなら徹底的に強力な風を使う事ね」
「くッ、風を圧縮、圧縮して」

 一方通行は自分の上空に風を集めていく。その風は圧縮されてプラズマになる。いくら一方通行でも世界中の風を集めることは出来ないので、これは学園都市の風を操ったのだろう。
 
 当麻はそれを黙って見ていた。そして一方通行が放ったプラズマを右手で受け止める。幻想殺しはあらゆる異能をうち消す。それは神様のシステムですら例外ではない。

 プラズマが幻想殺しに接触してうち消される。すかさず接近した当麻は一方通行を殴り飛ばした。

 

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とある少女の支配領域 0-4

2011年08月15日 18時15分20秒 | 小説

 佐天令子、小学五年生。幼稚園の時に超能力者(レベル5)に到着したという少女は化け物じみた強さを発揮していた。

 システムスキャンで、ミノフスキー粒子を発生して学園都市の電波を大規模にかく乱したり、メガ粒子砲を再現してド派手な砲撃をカマしたりした。また下位世界においても空間歪曲場を発生してレーザー級の攻撃を無効化したり、斥力場を発生させて突撃級の突撃を防いだ。監察軍の超科学技術を学習した佐天の成長は留まる所を知らない。

 そんな彼女も行き詰まっていることがあった。
 
「A.T.フィールド(Absolute Terror FIELD)が使えないね」

『新世紀エヴァンゲリオン』で登場した排他的精神領域。防御としては最高級じゃないのかな? 『機動戦艦ナデシコ』のディストーション・フィールドや『フルメタル・パニック』のラムダ・ドライバは似たような物が能力で再現できたが、ATフィールドだけはダメだった。
 
 以前その世界の神になったシンジくんに色々と効いたけどS2機関がないとできないらしい。まあ原作では大容量の電力で何とかしていたらしいけど、そんなの無理だし。となると何か別の物で補えないかと考えていたら学園都市に豊富にある物に気がついた。そうAIM拡散力場これを利用すること。

 それでアカシックレコードを使って色々と試行錯誤した。
 
 自分だけの現実を塗り替え、卵の殻を破るかのような感覚。最初に感じたそれはそんな感じだった。私の背中から展開されたオレンジ色に光輝く翼。

 AIM拡散力場の集合体にして天使の力(テレズマ)。新しい自分だけの現実、私の新しい力。
 
 この力の副産物として強力なAIMジャマーが使えるようになり、自分以外の能力や魔術を無効化できるようになった。これで最大の懸念である一方通行にも余裕で勝てるようになった。でもこの技術って他人が使うと私の能力までジャミングされかねないから秘匿しておく。
 
 結果としてA.T.フィールドを再現できた。AIM拡散力場って凄いね。いや180万人以上の能力者がいるからこそでしょうね。現時点では異世界どころか学園都市から離れすぎると使えないけどね。

 これを応用して次元や空間を切り裂いたり、他人の心に干渉したりできるようになり、元の能力と会わせて他者を自分の望むように再構成することすら可能だ。その副作用で魔力に対して拒絶反応を起こすようになったけどね。

 私の絶対能力の見た目や能力がA.T.フィールドに似ているのはやはり能力者である私のイメージが問題なのでしょう。
 
 ここまでは良かったけど、この事がアレイスターにバレてしまった。まあ能力の特性上学園都市でやらないといけないから隠蔽は無理だったけどね。

 その時には既にシステムスキャンの時に地球規模で大気に干渉したりできていたので、絶対能力者(レベル6)に認定されることになった。

 まあ確かにA.T.フィールドは異世界とはいえ天使の持つ能力だし、この世界では十分絶対能力者(レベル6)だよね。
 
 更に上条をスカウトした辺りで、私達の事までアレイスターに気付かれてしまった。

 アカシックレコードの情報によると、テレポートドライバーでの移動が観測されて超能力とは違う空間移動の方法を使っていることは掴まれている。上条と接触したのは失敗だったかな?

 滞空回線(アンダーライン)を初めとして学園都市には目と耳が多いから仕方ない。

 う~ん、どうしようかな? 下手にイレギラー認定されて暗殺者を送り込まれるといけない。何しろ上条と違い私はアレイスターの計画に必要というわけではないのだし。
 
 まっ、いいか。最悪アカシックレコードにアクセスすればアレイスターの行動も丸分かりだし、いざとなればこの世界から去ればいいだけのこと。元々大学を卒業したらそのつもりだ。

 私はファティマの能力を得た為に不老長寿になっているから、時間が経てばいつまでも老いない私は周囲に不審に思われるだろう。とはいえ折角とある魔術の禁書目録の世界にトリップしたのに、原作に関わらずにいるのも勿体ない。チートオリ主ですから、色々とやってみたいです。

 私はそんな悩み事を監察軍の仲間に話してみる。
 
 ちなみに監察軍にはトリッパー以外にも少数だが宇宙人も参加している。ドラゴンボールのナメック星人や他の下位世界の宇宙人など。私の師匠のナメック星人も戦士型で監察軍に派遣されている方です。
 
 ブリタニアの特別地区ナメック星は、『魔法少女リリカルなのは』の広大な次元世界の一つブリタニアの辺境星系に存在する惑星で、ブリタニア帝国領ではないと定義されている。まあ、それは監察軍の本部もそうだけどね。

 帝国領と定義してしまうと宗教問題が発生して、シドゥリ教に帰化しないといけないから、そうした地区は帝国領にあらずとしているわけです。
 
「確かにそれは面倒ね」

 仲間の一人、ミズナさんはそう答えた。ミズナさんは私と同じように不老長寿を受けているのですが、『ドラゴンボール』のサイヤ人として転生しています。文句なしに監察軍最強で、私がどんなに長生きしてもとてもかなわない強者です。
 
 実はドラゴンボールにも魔法や超能力があります。しかし餃子がナッパに対して超能力を使おうとしても効かなかったように戦闘力に一定以上の差があるとうち消されてしまう。

 実際、高い戦闘力の持ち主は無意識の内にそうした物を防いでしまうのか、強化サイバイマン(戦闘力5000)相手にも私の超能力が効かなかった。

 私の超能力がBETAに効いていたのは、彼等が総じて戦闘力が低かったからだ。小型のBETAは戦闘力が一桁ばかりだし、大型でも二桁を超える物はいない。
 
 ドラゴンボールって凄いチートだよね。というかドラゴンボールは気の強さによって世界の法則すらねじ曲げる事ができる。

 魔人ブウが精神と時の部屋で次元に穴を空けたように、強いヤツは無茶苦茶です。フリーザ辺りになると私のA.T.フィールドでも紙同然。……なんか泣けてくる。な、泣いてなんかないよ。これは心の汗なんだから。
 
 学園都市第一位の能力者が形無しだよ。でも逆をいえば私の力は学園都市という井戸の中でのことでしかない。数多の下位世界を見ればそれこそ様々なタイプの強者がいる。

『井戸の中の蛙(かわず)大海を知らず』とはよく言ったものです。
 
 一応、ナメック星人の方に武術を教わっているけど、まああまり無茶はできない。
 戦闘民族サイヤ人ならばともかく最弱に近い地球人という種族で、過剰なトレーニングをするのは身体の成長に悪い。

 地球人といえば、へたれのヤムチャが思い浮かべますが、あれでも地球人というカテゴリーでは最高級で、禁書世界の聖人が束になっても軽く蹴散らせるほど強い。たぶん私が身体を鍛えてもヤムチャにも届かないでしょうね。
 
 話しを戻すけど、「せっかく創作物の世界にトリップしたのに行動し支障が出るというのも問題ですから、何らかの方法でアレイスターを押さえておきたい」

 こういう要望はトリッパーの間では珍しくない。オリ主らしく行動したいと思うのはトリッパーにとっては当たり前の事です。まあ、中には平凡でも良いから楽に生きたいと思うトリッパーもいるけどね。

 私? 私の前世は病弱でいろいろと不便だったから、鬱憤がたまっているのです。だから自重はしないよ。
 
「う~ん、じゃあ力ずくでやってみれば? 貴女はあの世界ではかなりの力を持っているでしょ?」

 力押しですか? ミズナさんは次元違いの力を持つだけに正面からの力押しになりがちだよね。サイヤ人だからか? 待てよ。力押しか、それなら…。ふむ、そうと決まれば釘を刺すのは早いほうがいいでしょうね。
 


 数日後。アレイスターは頭を悩ませていた。彼が予想すらしなかったとんでもないイレギュラーが発生したのだ。

 異世界勢力との接触。かつては最高の魔術師で、現在では最高の科学者の彼をしても異世界というのはあるかどうか理論すら構築されていないトンデモな話しだった。
 
「さて、どうしたものか」

 先程突然訪れた少女の事が悩ましかった。少女がいっていた異世界の巨大組織『監察軍』の概要。この世界は科学サイドと魔術サイドが半々で勢力が拮抗しているが彼等はその均衡を崩しかねない。
 
「手出しは控えるべきか…」

 彼女とそのバックにいる監察軍は将来起こるであろう魔術サイドと科学サイドの戦いには興味がないらしい。ならば下手に刺激して規格外の組織を敵に回すべきではない。

 あのような存在に介入されるのは拙い。下手をすると魔術サイドに協力して科学サイドを潰しに掛かるかも知れないのだ。
 
 アレイスターは知らない事だが、監察軍は『とある魔術の禁書目録』の世界では魔術サイドとは極力接触しないことが決定していた。それはこの世界は魔術が宗教に密着し過ぎている事が理由だ。

 監察軍のスポンサーにして母体は『魔法少女リリカルなのは』の並行世界にある広大な次元世界の一つ、ブリタニアを領地とするブリタニア帝国だ。この世界は異教徒に関しては住み分けを徹底している。つまりブリタニア帝国ではシドゥリ教以外は認めず異教は排除しているが、国外では布教活動をしないので、帝国内では宗教対立が起きないし、国外でもそれは同様。
 
 勿論、監察軍がいる星系はブリタニアでも特別地区に分類され、監察軍と関わりがあればシドゥリ教徒でなくても居住が認められている。特別地区というのは領地だけでなく宗教でもブリタニア帝国とは切り離された地域です。

 まあ、監察軍はブリタニア帝国に配慮して、あからさまに他宗教と友好的に接触するのは避けている。つまり監察軍が魔術サイドの者達特にイギリス清教、ローマ正教、ロシア成教などに協力はするつもりはない。
 
 佐天はそこまで説明していない。あくまで監察軍がどれ程優れた技術力を持ち、どれ程の戦力を持つのか大雑把に説明して牽制しただけだった。
 アレイスターは伝えられた情報があまりにも大雑把なので対応できないでいた。
 


解説

 監察軍はトリッパー除く者達には下位世界が上位世界の住民によって作られた世界である事を極秘にしている。だからトリッパー以外の者は、世界の呼び名も下位世界ではなく三千世界と一般的に呼ばれている。この様に三千世界というのは下位世界の秘密を隠すための隠語として用いられている。

 

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