ADONISの手記

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シオン・カーライル その二

2015年11月15日 23時02分03秒 | 小説

「お姫様がプラントに赴き、例のイベントももうすぐですねウナト」
「そうじゃな。だが本当に大丈夫なのか?」

 ウナトが確認してくる。

「ええ、すでにフルチャージでの試射テストは完了して問題はない。だから計画通りにできる」
「そうか。監察軍も本格的な干渉はできないからな。あれが最大の切り札になる」
「仕方ありません。いくら何でも私達二人の望みの為だけに異世界に大規模な干渉しろなどと言えません」
「確かにな。儂らにしてもこの世界にトリップしたからこそ干渉するのだし」

 そう、監察軍でこの世界に干渉することを望むのはこの二人だけ。

 シオン・カーライルとウナト・エマ・セイラン、この二人はこれから起きる出来事を知っていた。それは二人が上位世界からこの世界にトリップした憑依者だからだ。

「心配しなくても私とガンダムダブルエックスならば、コロニーの一つや二つ簡単に消滅できるわ」

 シオンは自信満々に言う。実際あれにはそれだけの力がある。

「そうか、ならば問題はその後だな」
「ええ、連合との同盟は断るのでしょう?」
「そうだ。原作でもろくな目にあっておらぬしな」

 原作でオーブはジブリールに散々利用された挙げ句、ザフトの侵攻時には用済みとばかりに切り捨てられている。問題は連合の圧力をどうかわすかだが。

「その点ならばダブルエックスが抑止力になるはず」
「そうね、その為にも精々派手にやりますか」

 ダブルエックスが抑止力として有効に働く為にはサテライトキャノンの恐怖を連合に教えないといけない。ユニウスセブンはそのお披露目としては最高の舞台です。

 

 シオンはふとウナトに視線を向けた。ウナトは私と同じトリッパーだ。元は大学生の青年だったが、この世界にトリップしてウナトに憑依した。私と違い憑依先が社会的地位のある人物だったが、本人はオヤジに憑依してことを嘆いていたね。その気持ちは分かる。第二の人生といっても年を取ったオヤジになるとは普通は思わない。

 新しいトリッパーの反応を感知したときは同じ世界にトリップしたという事で、私がウナトと接触して色々と便宜を図ったんだよね。折しも敗戦直後のオーブだったから、監察軍が秘密裏に復興支援もした。まあ、支援のことは監察軍の存在がこの世界にバレるのを嫌ったから、表向きウナトと繋がりのある匿名の支援団体という話しになっているけど。

 基本的に監察軍は下位世界に不必要な干渉はしない。可能なら存在自体知られない方が望ましいという方針です。存在しない物と扱ってもらえば敵対することもないしね。

 監察軍はあくまでトリッパーの支援と、各地の情報、知識、技術等の収集ができればいいんですから。ですから時空管理局のように沢山の世界を管理や治安維持をしていない。大体そんなことをしていたら人材がいくらあっても足りませんし、負担が大きすぎます。

 その辺りもウナトは知っているので、監察軍に情報・知識・技術を提供している訳です。一応、この世界にも監察軍が持っていない技術があります。フェイズシフト装甲、ミラージュコロイド系の技術など。監察軍から見れば有効性に疑問がありますが、それでも提供する技術があるのとないのとでは話が違うから、あるだけマシです。支援して貰っているから渡せる物は渡すべきでしょう。そうでないと不義理です。

 

 C.E.73年10月3日。イズモ級宇宙戦艦クサナギから一機のMSが発進した。

「シオン、どうだ様子は?」
 そのMSガンダムダブルエックスのコクピットに通信が入る。

「ええ、各システムに異常ありません」

 MSのコクピットに座る少女が通信に答える。

 その少女の名はシオン・カーライル。外見は、10歳ほどの金髪碧眼の類稀な美少女。シオンは装飾過剰の黒いゴシックロリータといわれる装飾過剰の服を着ており、まるで愛らしい人形の様だ。その彼女を見て、MSのパイロットとは誰も思えないだろう。

 その服装はシオンによく似合っていたが、明らかにMSのパイロットとは思えない格好である。そんな様子を民間MSが撮影していた。そのMSはウナトが予め用意しておいたカメラマンだ。表向きはオーブの新兵器の取材を受けるという話で用意されていたが、実際はこの後の決定的な瞬間を撮影させるために用意していた。

 

 一方、地球へと落下するユニウスセブンをメテオブレイカーで破砕しようとしていたザフトはアウノウンMS部隊の襲撃を受けていた。更に先のMS強奪事件の部隊もザフトに襲撃を仕掛けており、大混乱に陥った。

 ユニウスセブン破砕の為に用意したメテオブレイカーや作業に当たったMS部隊も粗方やられてしまった。何とかテロリスト達のジン・ハイマニューバ二式を撃破したが、破壊作業などはもう不可能だった。そのことにザフト鑑ミネルバに搭乗していたカガリが絶望を感じた。

 しかし、ミネルバを初めザフトのコーディネイター達はそれを何処が他人事のように捕らえていた。元より彼等コーディネイター達にとって、地球とはそれほど愛着があるわけでもないのだ。ユニウスセブンの破砕も任務だからやっていると考えている者も多い。そんな彼等に、オーブ艦がこちらに向かっているとの知らせが来る。

「艦長、前方よりオーブ艦が接近しています」
「なんですって?」
「オーブ鑑からアウノウンMSが射出されました」

 オーブ艦クサナギから射出されたMSは見たこともないタイプのMSであった。何となくインパルスなどに似ている印象をうけるMS。そのオーブの新型MSが全周波通信を送ってきた。

「こちらシオン・カーライル。今からユニウスセブンを破壊します。周辺の部隊は今すぐ退避しなさい」

 モニターに映った黒衣の少女がそう言い放った。

「な、何を言っているの」

 余りのことにタリアは戸惑う。

「いいから、死にたくなかったら、さっさと下がりなさい!」

 シオンはそれだけ言って、通信を切った。いつまでも通信をしているわけには行かないのだ。

 タリアは、シオンの言動に一気に不機嫌になったが、オーブ艦のクサナギからも「秘密兵器」を使うので即座に、ユニウスセブンから離れるように通告が出された。

 これにより、デュランダル議長はミネルバその他の艦艇やMS部隊に、ユニウスセブンから離れるように指示を出した。オーブの秘密兵器など聞いた事もないカガリが騒ぎ立てる一面もあったが、タリアもしぶしぶその指示に従った。

 一方、通信を切ったシオンはサテライトキャノンMk-Ⅲを起動させた。三対六枚のリフレクターが展開され、両手両足の廃熱板が展開される。両肩にサテライトキャノンが装着される。

 原作では月面の太陽光発電施設からスーパーマイクロウェーブを送信してもらうが、シオンは監察軍の巡洋艦を改造してスーパーマイクロウェーブ送信機能を持たせていた。事前に宇宙に配置しておいたその巡洋艦から照準用ガイドレーザー回線を受けていた。

「ガイドレーザー受信OK、続いてマイクロウェーブ送信」

 巡洋艦がスーパーマイクロウェーブを送信して、それをDXが受けた。DXのリフレクターがが光輝き、廃熱版が熱を放出して、ツインサテライトキャノンがチャージされていく。

 シオン自身、異世界でツインサテライトキャノンを一度撃ったことがある。そのときはその余りの威力に、恐怖すら感じたものだ。そしてツインサテライトキャノンを撃った後で、この世界の人々がそれをどう思うのか? シオンは不安であった。

「それでも撃つしかない。下位世界だからといって、地球を見捨てることなどできないわ」

 シオンは別の下位世界で行われたコロニー落としが、地球環境にどれだけの悪影響を与えるか知っていた。地球に生きる人達がどんなに大変な思いをしたのかを…。

「だから、私はこの引き金を引く!」

 シオンの想いに答えるように、ツインサテライトキャノンがフルチャージされた。

「ツインサテライトキャノン、発射!!」

 DXの2門の大砲から、凄まじい光が放たれる。それはビーム砲とは比べるのもおこがましい威力。それはAW世界において、一度世界を滅ぼす切欠となった巨光。それはかつてAW世界で、こう言われた。

 悪夢と。

「なんだ、あの光は!!」

 カガリはツインサテライトキャノンのとんでもない威力に驚愕する。DXから発射された巨大な光は、地球へと落下しようとしていたユニウスセブンを飲み込み、跡形もなく消滅させたのだ。ミネルバのクルーも誰もが、その余りの光景に言葉を失う。

 それは、悪夢だろうか。ツインサテライトキャノン。AW世界で、いや長きに渡る黒歴史の中でも、トップクラスの火力を誇る巨砲。それが今CE世界で撃たれた。

「……まさか、本当にユニウスセブンを破壊できるとは」

 クサナギに同乗していたユウナ・ロマ・セイランが苦笑していた。ユウナ自身はウナトとシオンの話には、半信半疑であった。しかし、父と彼女の言うとおりダブルエックスによってユニウスセブンは消滅した。

「ふう、これからが大変だね」

 ユウナはこれから起こるであろう苦労の数々を思って溜息を吐いた。

 こうして、コーディネイターのテロリストが仕掛けたコロニー落としという前代未聞の危機は、ガンダムDXによって回避された。だが、それはCE世界において、ナチュラルとコーディネイターの二度目の戦争の前触れでもあった。

 

解説

■ウナト・エマ・セイラン
 憑依型のトリッパー。気が付いたら大西洋連邦侵攻の少し前のオーブにトリップしていた。その後ウナトの記憶を元に頑張ってオーブを立て直した。ちなみに憑依後に監察軍と接触して彼等の支援を受けており、オーブは原作よりもより復興しており、ついでにウナトの影響力も大きくなっている。憑依型のため特典はなく、ウナトの社会的地位でやりくりしている。同世界のトリッパーのシオンと手を組んでこの世界(オーブ)をより良くしようと日夜頑張っている。

■ガンダムダブルエックス
『機動新世紀ガンダムX』で登場したMS。『機動新世紀ガンダムX』の下位世界から入手したデータを元に監察軍がシオン専用機として魔改造したので完全に別物になっている。動力は核融合炉で、装甲はガンダニュウム合金。全天周囲モニターやIFSなどオリジナルにない機能が搭載されている反面で、シオンがニュータイプではないので無用となったフラッシュ・システムは排除されている。最大の特徴はツインサテライトキャノンの出力もオリジナルの3倍以上もアップしていて、50秒ほどでフルチャージできる。

 

後書き

 トリッパー列伝シオン・カーライル編は、元々CE世界でガンダムDXを活躍させたいというADONISの妄想から発生したSSです。しかし、ここで問題が発生します。CE世界にはマイクロウェーブ発信装置が無いのです。そこで監察軍というチート組織の出番。監察軍のチートでDXを魔改造させて登場させました。

 


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