ADONISの手記

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究極の生命体 第二話

2013年08月18日 13時06分07秒 | 小説

『ガギッ!!』

 その場には凄まじい衝撃音が響き渡る。少女の放った剣撃と俺の剣がぶつかった音だ。

 俺の持っている武器は黒色の剣。これは俺の琉法で周囲の砂鉄を集めて振動させてたもので、厳密には剣状の物にすぎない。

 しかし、その切れ味は凄まじい。今まで俺の砂鉄の剣で切れないかった物は存在しなかった(過去形)。だが彼女の持つ剣は切り裂く事が出来なかった。

 それも仕方がない。彼女の持つ赤い大剣もただの剣ではない。『魔法少女リリカルなのは』で登場するデバイスだ。

 一介の騎士が振るうアームドデバイスであっても凄まじい力を発揮するというのに、あのブリタニア帝国特注の高性能アームドデバイス『リッパー』のソードフォルムに、それを扱うのは魔法皇帝と称される稀代の騎士だ。

 少女との距離が離れると、少女が俺に砲撃を打ち込んできた。一応、非殺傷設定にされているとはいえ、大容量の魔力で打ち込まれた砲撃の威力は凄まじい。

 少女は両手にグローブ型のアームドデバイス『シーカー』を装備しており、それで射砲撃魔法などの遠距離、広域攻撃魔法のサポートをしている。

 俺は砲撃を何とか回避した。『魔法少女リリカルなのは』の砲撃魔法は、一見すると個人携帯型のビーム砲という感じであるが速度の面では著しく劣っている。電磁加速砲はおろか通常の炸薬式砲弾よりも遅く、目で追える砲撃など避けるのはそれほど難しくない。もちろん少女もその位は知っている。

 今の砲撃は、威力と射程距離の犠牲にしつつも発射速度を向上させた〝ショートバスター″で、あくまで牽制に放ったに過ぎない。

 ここで満月の光が夜空を照らす中、俺は少女と距離を保ったままで対峙した。相手は17歳ほどの美少女で、端から見ると俺の相手になる存在ではない。

 しかし、彼女は普通の少女ではない。シドゥリ・エルデルト・フォン・ヴァーブル。始まりの、そして最古にして最強の覚醒者。カーズ以外で初めて石仮面の秘密を解き明かし、それを改良した人物。そして俺を究極の生命体へと進化させた少女。

 数多の下位世界の中でも最大最強級の大帝国の皇帝。今のブリタニア帝国に比肩する国家など俺の知識の中には存在しない。当然ながら前世の地球各国が束になっても対抗できる国でなない。けして侮ってはならない。

 そもそも何故、俺とシドゥリが対峙する羽目になるかというと時間を少し巻き戻さないといけない。

 

 俺の名はジュラ、最近はやりのトリッパーだ。
 ①トラックに引かれる。
 ②死神に会う。
 ③能力を貰って転生
 ④突然地面に穴が空いて落下

 とまぁテンプレコンボで転生した。転生先は『ジョジョの奇妙な冒険』の世界で、転生特典としてスタンド能力を貰っておいた。

 あの世界も悪くないと思っていたが、転生した世界は文明が存在しない未開の世界で、とどめに地下生活。ここは『ジョジョの奇妙な冒険』の地球に間違いなかった。

 しかし原作開始の十万年前の時代に、おれは柱の男の一人として転生した事が分かった。なんで十万年かというとカーズやエシデッシが俺と同時期に生まれたからだ。あの二人は大体十万年ぐらい生きていたらしいから、原作の十万年前となる。

 ちなみに今の人類は文明がなく野人の様な生活をしていた。四大文明が誕生するよりも遥か昔なのだから仕方ないだろう。

 問題なのは、柱の男の一族が一万二千年前にカーズによって滅ぼされている事だ。いきなり死亡フラグ満載な状態。

 それに色々と問題がある。柱の男の一族になったために前世とは比べ物にならないほどの能力を手に入れたが、太陽の元で活動できなくなってしまった。おかげで地下生活をよぎなくされた。なまじ人間としての記憶があるだけに不便だったがこれは仕方ない。太陽から身を守らないといけないから、どうしても地下でということになる。

 ならばカーズのように究極の生命体になればいいと思うが、それを主張すると仲間と殺し合いになりかねない。そもそも石仮面は不死身の力を与えるが、より多くのエネルギーを必要とする。つまりより多くの動物を殺さないといけない。

 畜産業という分野すら存在しないこの時代では、それは地球の動物たちを殺し尽くしてしまうと多くの同族達が恐れたのも当然だった。

 要は殺す分だけ動物を増やせばいいのだが、そうそう上手くいくとは思えない。となるとやはり危険と判断するしかないか。

 カーズに殺されるのは嫌だが、かといってカーズに与して同族と殺し合いはしたくない。どうするか大いに悩むところであった。

 幸いにもカーズはまだ石仮面を研究していなかった。時間は割と残っている。だからそれまでに何かいい方法を見つけないといけない。とそんな事を考えているうちに俺と同じトリッパーに遭遇した。

 監察軍との接触は俺にとっても大いなる幸運だった。俺が抱えていたいきづまりを解消する事ができるからだ。最悪の場合は、いざというときの避難先にもなるしな。

 監察軍には様々な世界の知識が集結していた。だから俺の脳に眠っている力を呼び覚ます事ができるかと思ったが、それは監察軍でも未知の分野だった。

 シドゥリはこの手の石仮面や覚醒者に関する技術だけは監察軍に提供しておらず、監察軍もブリタニア帝国の国情を考慮してあえてこの分野の技術には手を出さなかったのも大きかった。

 ただ監察軍の創設者にしてスポンサーのブリタニア帝国皇帝シドゥリが石仮面の原理を解析してそれを改良した魔法を編み出したという情報が手に入った。
 シドゥリは俺と同じトリッパー。親しみやすい存在だったので、何かと頼りやすかった。

 ブリタニア帝国では石仮面の吸血鬼の改良型である覚醒者という存在がいるため、そのノウハウがあれば不可能ではない。だから監察軍を通してシドゥリに依頼を出した。

 紆余曲折を経てようやくシドゥリの協力を得られた俺は覚醒に取りかかった。

 しかし、それはシドゥリをしても手こずるものであった。覚醒の法を元に改造を施した術式であったが、そもそも我々は人間とは違う存在だ。カーズが馬に骨針を打ち込んで吸血馬をつくりだしたのとはわけが違う。手こずるのも無理はない。

 現在、監察軍というか、トリッパーで石仮面の秘密を解き明かしている者はシドゥリただ一人のみ。他のトリッパーは石仮面や覚醒の法に関係する技術は知らないし、政治的な問題からそれに関わることができないでいた。

 石仮面や覚醒の法はブリタニア帝国の皇族が秘伝として独占しており、また帝国の基盤とも言っていい技術だ。それに手を出すことは、ブリタニア帝国を敵にまわす事と同義であった。帝国にとって、それの流出は死活問題なだけに神経質になっている。

 だからこそ問題が起きないようにシドゥリに依頼していたのだが、そのシドゥリが手こずると困ったことになる。

 そもそも俺は二千年周期で眠りにつく一族で、活動期と休眠期があり、一旦休眠すると二千年は活動できない。つまり俺が活動できる期限があと数十年程度しかない。それがすぎると次は二千年後となる。二千年後には、シドゥリが生きているだろうか?

 いや、そもそも監察軍が存続しているかも怪しい。その場合、俺が究極の生命体になるのに手を貸してくれる者が見つかる可能性は低い。だから俺は焦っていた。何としても俺が休眠期に入る前に成功させたい。

 その為、シドゥリを急かした。シドゥリは迷惑そうであったが休眠期に入る前にやらねばならないというのは理解してくれたので、開発を急いでくれた。

 その魔法は高度な魔法文明を誇るブリタニア帝国を統べる魔法皇帝シドゥリをして魔法行使に苦労するほどで、並の魔導師では絶対に使えないだろう。

『魔法少女リリカルなのは』の魔法においてはシドゥリは第一人者といえるし、石仮面に関してもカーズを除けばシドゥリに及ぶ者はいない。

 そして、シドゥリの数年にも及ぶ研究の果てに何とか魔法の実用化に成功した。こうして、俺は念願の究極の進化を遂げた究極の生命体となった。

 太陽を克服しただけでなく、生物としての強さは他を圧倒する。通常、生物とはその種を存続させることが目的であるが、究極の生命体は違う。生態系の頂点に君臨して、自分の思うままで造り替える事が目的となる。

 最もそれ故に究極の生命体となったカーズは、地球から追放されるはめになった。『ジョジョの奇妙な冒険』の地球に、型月世界の地球のように抑止があるのかは不明であるが、原作を見るに何らかの抑止がある可能性も否定できない。となると地球から離れて別の世界に移動するのも選択に含まないといけない。

 しかし、まず転生先の世界にいる同族達にどう説明するかという問題がある。
 何しろ太陽を克服してしまった以上地下に住む必要がない。堂々と太陽の下で生活できるのだ。今更地下になど住みたくない。

 しかし、「実は俺は太陽を克服したんだ」などとぶっちゃけると、当然ながら色々追求されるだろう。特に、カーズとかエシデッシとか…。って、あの二人がやっぱり反応するな。ふむ、一応シドゥリに相談しておくか。

 


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