あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

Grert Ukiyo-e Masters 春信・歌麿・北斎・広重  松濤美術館

2007-10-17 13:32:05 | 日本美術
折しも第19回高松宮殿下記念世界文化賞、建築部門で、
北京オリンピックのビッグ竹籠鳥の巣を造った
ヘルツォーク&ド・ムーロンが表彰されるため、
表彰式に来日されたニュースを見た。
この二人がミネアポリス美術館の増築を手がけているそうだ。
まさに時代の建築家なのだ。

さて、「Great Ukiyo-e Masters」
これは本当に驚きの浮世絵シリーズだった。

松濤美術館の館内にきっちりはまったのも又驚きだった。
浮世絵ファンならずとも、
ふらり訪れた人誰もがすばらしさを共感できるのではないかと思った。

通常は地下から見て、2階に上がる方式なのだが、
今回は2階から見て、地下に下りる様になっていた。

この展覧会に前知識などなく、単に浮世絵見に行こう~
そのつもりが・・・・!!!

初期から、後期の名だたる浮世絵師の
素晴らしく美しい状態のものオンパレード!

特に、あの、なよりとした、春信の作がこんなに沢山見ることができて、
幸せだった。
春信の作は、なんとなくインパクトに薄く、
色の味付けもほんわりしているので、
どろり趣味の私にはも一つ物足りなさがあったのだが、
今回、その良さが伝わってきた。
いたいけでもあり、愛らしく、とよんとした空気感。
でも、よく見れば、着物や調度品、ふわりとなびく和歌の一首など、
実に繊細で、細やかな表現がされているのだ。
歌麿の危険な匂いとは違って、
そこはかとなくおぼこさが漂って、
愛らしい女性達に好感が持てた。
所々の見立て工夫や、構図や、
空摺り、エンボスとあったけれど、
色を付けないで、浮き彫りを取り入れたり、
女性達を囲む様々な装飾に深く感じ入った。

北斎や、広重、写楽や、豊国、国芳などは当然でも、
いいところセレクションなのだ。

歌麿の 「虵(へび) とかけ」
これは凄いリアルで怖いくらい。凄い人なのだ。
この怖さが絶世の美人図にも流れているのだと思う。

歌舞伎堂艶鏡という役者絵を作った知らない絵師もいた。

豊国の「五代岩井半四郎の助六」
この色使い。かっこよすぎです。

国芳は、「義勇八犬傳」
絵の画題窓に、こっそりわんこ2匹みっけ。

北斎は、狂言の宣伝用のチラシをこさえたのだそうだ。
棒振をみて、ひざの怪我をおして舞った勘太郎の踊りを思い出した。
色使いも繊細で、彼自身のおどろおどろしさは隠れている。

百物語の「こはだ小平二」
ごっつぁんです。
滝めぐりの「きりふりの滝」が大好きだ。
こんなシュールな滝が他にあるだろうか?

今夏、金毘羅さんが芸大に来た時に
広重も沢山見ることができた。
しかし、
なぜだろう?
こちらの方がとても目に映ったのだった。
名所江戸百景の「堀切の花菖蒲」
いい構図、菖蒲の色使いも怪しげで美しい。
後期はご縁のある「真間の手古奈」が登場するから、
また来よう。
「童遊ひ見立てほふづき」がめっちゃ楽しい。
影絵も面白い。「新坂かげほしつくし」

53次もので、やっぱり凄いと思うのは、「箱根 湖水圖」
永谷園のシリーズカードで目垢付いたのが残念だけれど、
やはりこういうキュービズムのような表現は驚くしかないのだ。

花鳥図の北斎もうれしい。
芥子、桧扇、芙蓉に雀、紫陽花に燕、黄鳥 長春(ばら)、松に鶴
おめでたい象徴の鶴がなぜこんなにおどろおどろになるのだろう???

などなどじっくり見ていたお陰で、
たばこ塩の昭和のタバコ屋さんを見逃す事態に。
いやはや、本当にいいものを見させて頂きました。

実は今日、サントリーのビオンボを記事にしようと思っていたのだけれど、
あまりにもいい浮世絵シリーズだったので、
こちらを先に記事にしたわけです。

アメリカっていうところには、凄いお宝が集まっているのでございました。
ぜひ、お時間のある方、渋谷、松涛へお運びくださいませ。

ちなみにハンディな図録がありましたが、
絵のサイズが小さいので、考え中。
学術本も発行される由、そちらもチェックしておくことにいたします。
後期、期待莫大!!!それも300円!!!
行かない法はありません。

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12 コメント

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Unknown (遊行七恵)
2007-10-17 20:45:16
こんばんは
発色もよし・保存もよし、といいこと尽くめのコレクションでしたね~
正直、あんまり期待していなかったのですが、これはもう本当によい展覧会でした。
近年、これまで日本から遠く離れていたコレクションたちの里帰り展が色々ありますけど、内容がどれもこれもハイレベルなのには、驚くばかりです。
知ってる絵でも、こんなによい保存だと意識が変わります。
うーん、素敵でした。
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遊行 さま (あべまつ)
2007-10-17 23:02:54
こんばんは。
早速のコメントありがとうございます。
本当に今年はあちこち海外から日本のものが
お帰りになって、驚きのコレクションを拝めます。
このようなタイミングに居合わせることに感謝です。

浮世絵の世界も随分親しむことができ、
時代も感じられるようになりました。
俳書本の影響やら、黄檗の影響やら、
色々絡んで、頭の中もワンワンしています。
後期もしっかり見てきます!
返信する
Unknown (oki)
2007-10-18 00:36:19
あべまつさんも歌舞伎堂艶鏡ってご存じなかったのですか!
こんな人まで収集してますからミネアポリスはすごいですね。
東京国立博物館の「北斎」で、「百物語」を知りまして気に入りましたがこれが出ていたのもうれしい。
松濤のような小さな美術館でもこれだけできるのですから、もっと大きな美術館は印象派だなんだにこだわっていてはだめですね。特に東京都美術館様。
返信する
oki さま (あべまつ)
2007-10-19 22:09:27
こんばんは。
歌舞伎堂艶鏡って、どんな方なのでしょう?
ともかくは逸品ぞろいで驚きました。
後期も今から楽しみです。

都美は、階段が多くて、足腰の弱いものには、
きついです。
年間集客数トップ入りしている所なのだそうですね。
商売上手!!!
返信する
歌舞伎堂艶鏡 (一村雨)
2007-10-20 07:35:28
歌舞伎堂艶鏡も謎の絵師です。
役者絵7点しか確認されていないそうです。
そのうちの数点を見ることができるので
最高の展覧会ですね。
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一村雨 さま (あべまつ)
2007-10-20 22:30:58
こんばんは。
一村雨さんも、気になりましたか?
歌舞伎堂艶鏡
役者絵にしては、アクのない絵だと思いました。
線が細いというのか、歌舞いていないというのか。
7点しか残っていない中の数点と遭遇とは!!
コレクションした方の目力に敬服致します。
返信する
驚きの連続 (meme)
2007-10-21 12:38:49
こんにちは。
八犬伝の2匹のわんこは、ぽよぽよしていて
愛らしかったですよね。
かっこいい武者と対照的でした。

歌麿の台所ととかげの作品に驚嘆し、その魅力を
再発見しました。
もう驚きの連続で、後期も絶対行きます。
学術本はどんなもの何でしょうね?
ハンディサイズが逆に保管しやすそうなので、
図録は次回買っておこうと思います。
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meme さま (あべまつ)
2007-10-22 15:42:55
こんにちは~
memeさんは、本当に場所を問わず
あちこちの美術探訪されていて、
精力的です!!
渋谷の松濤まで、ガッツで来月もお出かけを決意されるくらい、そのくらいの展覧会って事ですよね。
私はこの浮世絵をライブで体験してきた時代、
江戸にタイムトラベルしたいです!!
松濤の図録はあるうちが華です。品切れとなっては
精神上宜しくありませんです。←体験者
返信する
Unknown (はろるど)
2007-10-25 21:08:14
あべまつさんこんばんは。
今年一番の浮世絵展かもしれませんね。
また春信の繊細さというのも初めて分かったような気がしました。見事でしたね。

どこか表現主義的な印象も持っていた浮世絵に、
これほど優美で細やかな世界があったとは知りません。
これからは見る目も変わりそうです。
返信する
はろるど さま (あべまつ)
2007-10-25 21:17:19
こんばんは。
今、はろるどさんのところにコメントしたばかりでした!
本当に、春信のなよんとした風情に魅了されました。
役者絵の格好いいのも好きですが、
今回は春信に軍配ありです。
江戸博は年末に北斎ですし、
今年は浮世絵の当たり年ですね。
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