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おおるりが赤裸々に綴る脱線転覆の感想記!(舞台やライブの感想です)

「炎の人」2009/06/27 

2009年06月27日 22時54分38秒 | 観劇(ストレートプレイ/人形劇)
市村正親/益岡徹/今井朋彦/荻野目慶子

ゴッホは孤独と人間愛に満ちた、悪意のないエゴイストであり、
自分で自分を苦しめ続けた狂気の人でした。
そして、それらの全てが絵に向かって放たれたゆえに天才となったのです。
「私は本当の物が見たいのだ、本当の人間が見たいのだ」と描いた初期の絵は、「汚くて暗いが、そこを卒業せねばならない」。
そして、そこから抜けた時、あるいは飲み込んだ時、
彼には美しい世界、美しい人間が見えたのだと思う。

天才は、大衆からそう認められて天才となるのではないのだと、つくづく思います。
彼の絵は生きているその間には評価されることはなく、その才能を愛したのはわずかばかりの人だったから、生活はいつも貧困であり、作品を通してすら誰かに愛されることもありませんでした。

こんなに苦しい人生があっていいのかと、私も胸が苦しかったです。
彼の才能は、ある意味、自分自身を苦しめる才能といえたかもしれません。
唯一の親友、ゴーギャンが去ってからは、彼を愛するものは弟のテオのみです。
せめて、シャガールのように心から愛し合い理解し合える女性が
たった一人でもいたならば、
あのように狂気の中で孤独に死んでしまうことがなかっただろうに……。

最後に彼への追悼の言葉が語られます。
ゴッホは日本に憧れ、日本に来たかったそうです。初めて聞きました。
色彩感覚豊かで、印象的な輪郭を描く浮世絵画家を生み出した国、日本に。

その日本からゴッホへ
花束を捧げ「飛んできて、受け取れ」と呼びかける哀悼の言葉に涙が出ました。
市村さんは素晴らしかったです。


全ての天才よ、たとえ世に出なくとも、幸せであれ。


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