FOOTBALL LIFE

~サッカーを中心に日々の雑感など~

ラ・トゥール

2005年05月03日 | Weblog
17世紀のフランスの画家、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール(1593-1652)は、死後300年たって再発見され、光と闇の対比に深い内面の世界が精神性を持ち、近代的な造形も見せていて、今日高い評価と人気を得ているそうだ。

「ダイヤのエースをもついかさま師」は、まるで映画の中の一場面のようだった。3人がテーブルを囲んですわり、一人の女が立ってそばにいる構図。貴族の少年がだまされようとしていた。横に座っているいかさま師はカードを背中に隠している。その隣に座る娼婦らしき女は目配せして合図を送ろうとしていた。すぐにも絵の中の人物が動き出し、効果的な音楽が聞こえてきそうだ。

「犬を連れたヴィエル弾き」は、盲目の一人の男性の老人が真ん中に大きく描かれている。足元には犬がいる。ヴィエルというのは手回し琴なのだそうだ。老人はすっくと立って、嘆いているわけでもない。かといって恵まれた人生でもなさそうだった。強く印象に残る作品。

「のみをとる女」は着るものをはだけて、一心不乱に隠れているのみを探している様子。綺麗に描こうとかではなく、その状況を説明するために存在しているような描き方。女のこういう姿をありのままうけいれているというのが驚き。

住んでいたロレーヌ地方は、代々公爵家が統治する政治的にも経済的にもフランスから独立した一つの国家だった。ロレーヌ公爵の下、宮廷文化が栄華を極めていたが、次第に大きな国が小さな国を吸収する動きになる。30年戦争(1618-1648)が起こり、1630年にはフランスが攻め入ってきた。

抵抗運動も行われ、その都度戦死者が増えた。人口も半分くらいになった。人々は戦乱が止まず、ペストが蔓延する時代にまばゆい日の光で目にする多くは偽りである、夜の闇は太陽より愛すべきものとして、夜に瞑想することをすすめられる。過酷な運命を神に問い、祈るしかなかったからだ。

ラ・トゥールはそんな中で、裕福な商人や貴族ではなく虐げられた人々を描いた。鑑定家が出てきて、他にない特徴は汚れたつめを持つ手が絵の中にあるという。これは働くことで精一杯運命に抗したことを描きたかったのではないか。その上で人生に向き合った人物像。彼らに対するあたたかいまなざしが感じられる。

西洋美術館で5月29日まで催されている。
「聖トマス」「のみをとる女」「ダイヤのエースをもついかさま師」「書物のあるマグダラのマリア」「聖ヨセフの夢」など

一枚一枚じっくりと見てみたいけどー。遠すぎるー。




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