54のパラレルワールド

Photon's parallel world~光子の世界はパラレルだ。

アメリカの階梯/西垣通

2005年05月23日 | パラソル
室井さんに薦められて1週間後に読み始めて2週間くらいかけて読み終えた。進化論に関する記述よりも気を引いたのは「幻獣」だった。

>人間とは60兆個の細胞からなる共生体である。しかも個々の細胞は自律して活動している。人間のあらゆる活動はひとつひとつの細胞の活動の組み合わせに過ぎない。そして意識というものは細胞の相互作用が生み出す幻影に過ぎない。

ここで私は「自分」を失う。「自分」だと思っていた「意識」というものが細胞が作り出した幻影にすぎないだなんて。個々の細胞が意志を持って活動しているならどうやって制御できるだろうか。人間はときどき感情に流されることがある、睡魔に襲われて眠ってしまうことがある。あらゆる衝動は意志に関係なく細胞から生まれてくる。自分の意志で行動していると思っていることもすべてが細胞の相互作用によって生まれたものだ。私は意識が身体を動かしてきたと思っていたが、今はなんだか身体によって意識が操作されているような気がしてならない。

>人間の死というのは意識という仮構の分解にすぎない。細胞共生体はあらゆる形で生き続ける。

宇宙は拡大し続けているけれど、その構成要素は不変である。原子は自然発生しないし消滅することもない。人間が死んだところで何も変わらない。生命とはなんなのだろうか。石ころと人間の違いはなんなのだろうか。分子の組み合わせがどう変化すれば生命になるのか。有機物か無機物かどうかという単純な問題だろうか。生命とは不思議なものだ。

>人間が自律した細胞の共生体であったのと同じように、国家もまた意志をもった人間が集まった巨大な生物である。

国家という巨大な生物を制御するものはなにか。アメリカをイラク攻撃へと動かしたものはなんだったのか。人間の相互作用である。脳にあたる政府が国全体を動かした。しかし細胞よりも意識レベルの高い人間を動かすのは難しい、政府への働きかけも大きいだろう。それでもアメリカはイラクを占領した。だれがアメリカを制御したのだろうか。誰も制御できなかったのか。国家というあまりにも巨大な生物の相互作用を理解することは不可能に近い。しかしアメリカは日々活動し続ける。一人の国民ができることはなにもないのだろうか。


「大学」もまた生物である。学生である私は脳からもっとも離れた、手足の先の細胞のようなものだ。大学がどこへ行こうとしても、私には何もできないように思える。指先の細胞に過ぎないんだぜ?しかし細胞の相互作用が意識を動かしている。手の平の相互作用が意識を動かすことも可能ではないだろうか。手の平が腕を動かし脳に一撃くらわせることもできるだろう。
しかしながら私は操られることにあまりにも慣れすぎてしまっている。

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