虚構の世界~昭和42年生まれの男の思い~

昭和42年生まれの男から見た人生の様々な交差点を綴っていきます

生きる意味15~ファイスブック症候群「偽りのタイプスリップ」⑦~

2017-07-27 18:04:12 | 小説
 島崎貴志は、かつて付き合っていた村木ゆかりのフェイスブックをどんな思いで見ていたのだろうか?

「プライドの高い彼女のことだ。きっと、アップされている情報も華美なものなのだろう」

 そう思っていた。

 しかし、よく見ていくと、そこには必要最低限の情報しか記載されていなかった。

 夫のことも、家族のことも、家のことも・・・。ただ、時々、会う高校時代のことだけがアップされていた。

 何の情報もないことが根拠となっていたのかもしれない。

 「幸せに暮らしているんだなあ」

 貴志はそんなことを思った。

 本当に幸せであるならば、幸せであるかのような情報発信はしない。そう貴志は考えていた。

 FBを見て、貴志が学んだこと・・・。それは「ささやか」に生きることがいかに難しいかということ。

 きちんと働き、家族と暮らし、子供の成長を見続ける・・・。一見当たり前の幸せを築くことがどれほど難しいかを学んだ。

 ギャンブルに翻弄されている人生、「今日はいくらもうかった。この調子で月100万円目指すよ」と豪語している50歳の無職の男性。彼は若いころは、夜の商売をして、一度はかなりの収入を得ていた友達・・・。しかし、店の閉店後、人生はギャンブルに・・・。


 年不相応な服装に身を包み、街を歩き、夜の街で若い男性と騒ぐ写真をアップしているかつての高校時代のマドンナ的な存在だった女性。男性からチヤホヤされた経験が忘れられないのだろうか。いまだにかつての幻影を追い求めながら生きている。乱れな男女関係の狭間で生きている雰囲気が漂っている。

 人間の欲はすごい。お金、地位、名誉、セックス・・・。どれだけの人が欲にまみれた人生を送っているのだろう。

 

 貴志は、ささやかだけれど懸命に働いて、家族を守っている。

 そんな人生を送ることの難しさが50代のフェイスブックからうかがえるのである。

 人間として誠実に生きることがどれほど難しいことか・・・。

 

生きる意味14~ファイスブック症候群「偽りのタイプスリップ」⑥~

2017-07-27 08:37:50 | 小説


 村木ゆかりのFBはどうだったのか。写真で見る彼女はセレブな雰囲気と51歳とは思えない美貌とスタイルだった。

 ただ、貴志が気づいたのは、ゆかりが高校の同窓会に参加している写真だった。

 彼女は、同性からは嫌われるタイプであった。だから、学生時代の友達も少なかったと記憶している。
そんな彼女が東京で行われている同窓会の幹事をしている写真があった。

 
 「こんなことをするタイプではなかったのに・・・」

貴志はそんなことを思った。

 結婚はしているけれど子供はいないのかなあ・・・
 地元に帰ってきたいのかなあ・・・・・
 

 そんなことをふと考えていた・・・

生きる意味13~ファイスブック症候群「偽りのタイプスリップ」⑤~

2017-07-27 08:29:45 | 小説
 

 石田 力也 50歳。彼のFBを見ていいるとある思いを直感的に抱いた。

「無理しているなあ・・・」

 犬を散歩している姿・・・。
 高級居酒屋で飲んでいる様子・・・
 独身生活を満喫している文言・・・

 全て自分の誇大広告のようだった。

 力也は、若いころからそのような習性があった。

 「俺はアメリカで一人で独学で英語を身に付けた。俺のはブロークンだけれどな・・・」

 そうやってよく自慢していた。

 あれから20年・・・。

 誇大広告と虚言癖のようなものは変わっていないなあと貴志は感じていた。

 自分のことをアップすればするほど、

「自分は満たされていないんだ」と表現しているようだった・・・。


生きる意味12~ファイスブック症候群「偽りのタイプスリップ」④~

2017-07-27 08:16:38 | 小説


 フェイスブックで若いころに付き合っていた女性を見つけた時に、どんなことを思うだろうか。

幸せになっていてほしい・・・
不幸になっていてほしい・・・

 その思いの別れ道は自分の幸福度のバロメーターによるのかもしれない。

貴志の友人で石田 力也という男性がいる。父が市議会議員をしていて、会社も経営していた。親の七光りで彼も海外に留学するなどしていた。しかし、20代の後半から、力也は働かないで、親のビルを譲り受け、その管理をしながら生計を立てるようになる。

 貴志からすると、うらやましい人生に思えた。たいした働きもしないで一生を過ごすことができる力也の生きざまは、何だか勝ち組のようだった。

 しかし、偽りの暮らしは、破綻する。

 今、力也は、トラックの配送の仕事をして生計を立てている。

 貴志も力也とはもう20年ほど会っていない。

 しかし、このFBで彼とも再会することになる。