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アルゴリズム

 エジンバラ大学のクリス・ビショップ教授(コンピュータ科学)は「コンピューティングは、過去2世紀のあいだに物理学と化学が作り出した変化と同じくらい深く、私たちの社会を変えようとしている」*01と指摘します。私たちの生活の中でデジタル技術の影響を受けていない領域はほとんどなく、それどころか、その革命的な変化を受けていない領域もほとんどない、というのです。そしてそれを可能にしている基本概念が「アルゴリズム」ということになります。
 
コンピュータはアルゴリズムによって動いています。アルゴリズムは「問題を解決するために必要な手順を正確に規定したレシピ」*02であり、その個々のステップは「絶対的に正確でなければならず、人間の直感や推測を必要としてはならない」*02のです。そして入力が何であれ、それは必ず機能します。このような特徴を持つアルゴリズムによってコンピュータはプログラミングされているのです。
 
コンピュータに特定の問題を解決させるためには、先にその問題を解くための「方法」=アルゴリズムを作らなくてはなりません。それも非常に正確で、機械的なものが必要です。数多くの人々が自らのアイデアをこのようなアルゴリズムによって表現してきた結果、コンピュータは今日の大変革をもたらしたのです。それは“宇宙を創り出した力は数である”というピュタゴラスの確信が、いままさに結実したものであるといえるのかもしれません。


アラン・チューリング(1912-1954)は、人工の知性の可能性を問うチューリング・テストを考案しました。
Alan Turing's statue at Bletchley Park.

 
そしてこのコンピューティングが切り開いて見せる可能性の大きさとその驚異的な発展は、「脳はデジタル・コンピュータに他ならず、心はコンピュータ・プログラムに他ならない」という主張を生み出しました。すなわちアルゴリズムによって人間の知性や感性まで記述できるのではないかという考え方です。
 
アルゴリズムは人間の感性的な部分が一切排除された究極の“数”的論理といっていいでしょう。この合理的で機械的なアルゴリズムによって、その対極にあるとも思われる人間の感性まで記述しようというのです。ピュタゴラスやウィトルウィウスの時代には、その数的論理には“神”のバックアップが必要でした。しかし“神の死”の後、神の領域への到達を目論む人間の密かな野望が、神に代わってこの数的論理に入り込んだといってもいいでしょう。それがこのコンピュータのアルゴリズムなのです。

*01:はじめに/クリス・ビショップ/世界でもっとも強力な9のアルゴリズム/ジョン・マコーミック/長尾高弘訳 日経BP社 2012.07.23 
*02:世界でもっとも強力な9のアルゴリズム/ジョン・マコーミック/長尾高弘訳 日経BP社 2012.07.23 

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