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“言葉”に対応した文字

 世界で最初の文字がシュメールの地に生まれた時、それは「心覚えのための略画」のような絵文字でした。一つの文字がそれぞれ一つの物や生物を表していて、いくつかの絵文字を組み合わせることで一つのまとまった概念を表すことができたのです。
 
絵文字(ピクトグラム)のように物の形と対応し、純粋に一つの概念、イメージを表す文字を表意文字といいますが、表意文字は個別の言語の枠組みを超えて共通のイメージ、共通の概念を指し示すことができる文字でもありました。それゆえ現代の私たちが見てもその文字の意味するところを“理解”することができます。しかしそれはあくまで物の形と対応したイメージの“理解”であって、あいまいな部分が多すぎるものでもありました。楔形文字の登場によって文字はそれまでの物の形のイメージとの対応から切り離され、シュメールの人々が実際に使う“言葉”にひとつひとつ明確に対応するようになります。そしてこのプロセスの中に話し言葉の音だけを文字で表す表音文字が加わることによって、彼らが使う“言葉”はほぼ全て“文字”で表現できるようになったのです。
 
このような文字体系を表語文字といいます。楔形文字とほぼ同じころに起源をもつとされる古代エジプトのヒエログリフや中国の漢字も表語文字です。表語文字は複雑化した人間関係の中で生まれた、複雑化した人々の“言葉”に対応するために、複雑で論理的な文字体系を必要としたことによって、生まれてきたものだったのです。


Egyptian hieroglyphs, which have their origins as logograms

 

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