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ジリオニクスの世界

 ケヴィン・ケリーさんは、ある物が大量に存在すると、そのある物の性質を変えることができる、といいます。「数の多さが違いを生む」*01というのです。その数量の差は、計算機学者のJ・ストーズ・ホール*02さんによれば少なくとも1兆(10の12乗)程度であろうといいます。彼らの経験によれば1兆個という数によって、量的なものだけに限らず、質的な相違が現れなかったことはない、というのです。ケヴィン・ケリーさんはその違いをジリオニクス(Zilionics)と呼んでいます。
 
人間の脳は少なく見積もっても100億(10の10乗、10ギガ)個の神経細胞(ニューロン)で構成されています。さらにその神経細胞同士をつなぐ配線(細胞間結合=シナプス)の数は、1ニューロンあたり数千ともいわれています。すなわち人間の脳神経の配線数は1兆をはるかに超えているのです。人間の脳の中はまさにジリオニクスの世界といっていいでしょう。ちなみに犬のニューロンの数は1億6千万個、猫は3億個といわれています。いずれも脳神経の配線数は1兆を満たしていません。それでも環境世界で存在し、反応し、自分で考え、行動するには十分すぎるほどの知性を持っているわけですが、人間のように自分自身の内部に「意味」を見いだしていく真の「知性」を持つには至っていません。そこには明らかに質の違いがあるわけですが、それは脳の神経回路の数の違い-ジリオニクスが生み出す違い-なのでしょうか。
 
キズメットは現実環境の中で、犬や猫たちと同じように社交性のある“意味ある振る舞い”を生み出すことができます。しかしその内部は真の知性には程遠い状況です。私たちはいずれは人間の脳と同じようにジリオニクスの神経回路をコンピュータの中に構築することができるのでしょうか。


神経回路のジリオニクスの違いが“質”の違いを生む?

*01:ジリオニクス ―超大量の世界―Zillionics/著者:ケヴィン・ケリー ( Kevin Kelly ) 訳:堺屋七左衛門 七左衛門のメモ帳
*02:Beyond AI- Creating the Conscience of the Machine /J. Storrs Hall/2007.05.30

 

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