舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

映画「空白」観てきました。

2021-10-15 23:32:12 | Weblog


10/15(金)、ユナイテッド・シネマ新潟で「空白」を観てきました(先週までイオンシネマ新潟西と新潟南でもやっていた)。







両親が離婚して父子家庭の中学生の女の子がスーパーで万引きをし、店長に見つかると脱走、追いかける店長の目の前で交通事故で死亡してしまう。
娘を失った父親は店長に執拗に粘着し暴走、メディアも店長の過失を過剰に責め立て、人間関係が狂っていく…全体的に重すぎて見るのがキツかったけど、すごい映画でした。

同僚にも娘にも暴力的で高圧的で怒りっぽい「絶対関わりたくないおじさん」を古田新太さんが完璧なまでに熱演し、本当に見ているだけで怖かった。
こんな父親だったら嫌だなあ…という娘の気持ちも分かったし、もしかして娘が万引きして逃げ出したのも、父にバレたら殺されると思ったからではないだろうか…などと考えてしまいました。

父は娘の死後、スーパーの店長や学校を一方的に敵とみなし暴走していく。
娘を想う気持ちは持っているはずなのに、他人を拒絶し怒鳴り付ける態度は、実は娘も傷付けていたよな…と考えてしまうと切ない。

しかもそれが娘の死後、さらに悪化して、それによって事態をさらに悪化させ、結果的に自分の首も絞めてしまっている。
人と人がコミュニケーションを取れなくなることから悲劇は始まるんだな…と考えさせられました。

女子中学生が事故死してしまう場面は、本当に突然事故が起こる描写がリアルすぎて、見ていてかなりショックを受けました。
だからこそ、結果的にその原因を作ってしまったスーパーの店長の、とんでもない苦悩と後悔も、痛いほど伝わってきた、というか、伝わってきすぎて本当に苦しかったです。

そんなスーパーの店長を松坂桃李さんが演じていたのですが、本当にもう人生おしまいだ…みたいな絶望感を表現する演技が凄まじかったです。
店長が悪いわけじゃないと頭では思っていても、自分があの立場だったらそれこそ自殺したくなるほど悩むだろうし、彼が身近にいたら何と声をかければいいか分からないと思います。

しかもテレビが、店長をまるで悪人のように誇張して伝えるから、さらに彼は追い込まれ、本当の気持ちは誰にも伝わらない…
そのテレビを見て、亡くなった娘の父親はさらに激怒、暴走し、さらに店長は追い込まれて孤立していく…という完全な負の連鎖、見ていてつらすぎました。

そんな中、寺島しのぶさんが演じるスーパーのパートの女性は店長の味方になろうとするのですが、どこか偽善的で行動が空回りし、店長にとっては余計なお世話となり、全部が裏目に出てしまうのが、見ていて痛々しい。
また、店長がそんな彼女を迷惑に感じても何も言い返せずに、ひたすら気まずい関係が続くのも、見ていて居た堪れなくなりました。

さらに、事故で中学生を轢いてしまった女性も、苦しんで父親に謝罪するのに、高圧的な父親からは聞き耳を持たれず苦しむ。
そんな感じで、全部の登場人物がまったく嚙み合わずに、不幸がどんどん連鎖していくのは、本当に見ていてきつかったですね…

ただ、田畑智子さんが演じる亡くなった娘の母親であり父親と離婚した前妻とか、藤原季節さんが演じた父親の同僚(漁師)とか、趣里さんが演じた娘の担任とかの、もう絶対に事態は好転しないし、亡くなった人は帰ってこないし、残された人達の苦しみを理解することは無理だと分かってはいても、それでも少しでも分かり合おうとする人達も描かれます。
そういう人達の存在が、離れ離れになっていく人達を辛うじて繋ぎ止め、これ以上の悲劇を防いでいたようにも思えました。

そんな中で、暴走していた父親は少しずつではあるけれど変わっていく様子も描かれ、でもだからと言って、完全には性格が改善するなんてことはない。
最後まで見ても全然ハッピーエンドじゃないけれど、それでも、父親と店長、2人が最後の最後に0.1mmくらいだけ心が近付く、それが辛うじて最後に残されたギリギリの希望のような何かなのかもしれないなあ…そんなことを考えさせられた映画でした。
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