
平川克美ブログから長めの引用。
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一日中、読んでいたのは、『落日燃ゆ』。
再読であるが、ほとんど初見のような
新鮮さで、行を追うことになった。
主人公である広田弘毅は、東京裁判で絞首刑になった七名の
A級戦犯のうち、ただ一人の文官である。
裁判の正当性に関しては、
様々な見解があろうが、
広田という人間が、他の六名とは全く異なった
思想、心情、人間性の持ち主であったことだけは
確からしい。
事実、彼は外交官時代、政治家の時代を通して
一貫して「協和外交」を主張し続けている。
五相会議において、
武断政治を説く皇道派の荒木貞夫陸相と対立して、広田は外交的な解決を主張する。
「開戦の危機というが、いったいどこに戦争の危険性があるのか。
軍部は最悪の場合のみ考えすぎる。むしろ問題は、どうしたら、最悪の場合を来させずに
すむかに在る。つまり、外交が先決であり、何より外交的努力に力を傾注しなくてはならない。」
武断政治、統帥権の乱用、大国の圧力といった
戦前、戦中の空気の中において、
弱腰、楽観主義と謗られながらも、これを曲げることは無かった。
終戦後、広田はよくわからない理由によって戦争の首謀者の一人と看做される。
現在から見れば、広田を戦犯に加えるに足る客観的な証拠はない。
しかし、東京裁判の過程で、弁護人に「無罪」を主張するように諭されて
「戦争について自分には責任がある。無罪とはいえぬ」とこれをはねのける。
その後も、広田は一切の自己弁護を拒んだのである。
彼は戦争裁判によって裁かれるより前に、
どこかで戦争を食い止められなかった自分を裁いていたのかも知れない。
燃え尽きた落日のように、広田はこの世を去っていった。
当今の自己弁護と居直りに終始する、
立身出世主義的、あるいは威信の薄い政治家たちと
この本に出てくる広田弘毅、山座円次郎、尾崎行雄、加藤高明といった
政治家を引き比べてしまう。
政治家に高潔を求める気持ちはないけれど、
今日、ひとりの広田弘毅が政界、官界にあるのだろうかと、思う。
~~~~
城山三郎『落日燃ゆ』を読まずして東京裁判は語れない。
A級戦犯も語れない。ということは靖国参拝も語れない。
俺が靖国参拝賛成派なのは,学生時代にこの本を読んだことが
1つの大きな原因だと思う。
いたく感動したので数度繰り返し読みました。
皆様も是非是非。
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一日中、読んでいたのは、『落日燃ゆ』。
再読であるが、ほとんど初見のような
新鮮さで、行を追うことになった。
主人公である広田弘毅は、東京裁判で絞首刑になった七名の
A級戦犯のうち、ただ一人の文官である。
裁判の正当性に関しては、
様々な見解があろうが、
広田という人間が、他の六名とは全く異なった
思想、心情、人間性の持ち主であったことだけは
確からしい。
事実、彼は外交官時代、政治家の時代を通して
一貫して「協和外交」を主張し続けている。
五相会議において、
武断政治を説く皇道派の荒木貞夫陸相と対立して、広田は外交的な解決を主張する。
「開戦の危機というが、いったいどこに戦争の危険性があるのか。
軍部は最悪の場合のみ考えすぎる。むしろ問題は、どうしたら、最悪の場合を来させずに
すむかに在る。つまり、外交が先決であり、何より外交的努力に力を傾注しなくてはならない。」
武断政治、統帥権の乱用、大国の圧力といった
戦前、戦中の空気の中において、
弱腰、楽観主義と謗られながらも、これを曲げることは無かった。
終戦後、広田はよくわからない理由によって戦争の首謀者の一人と看做される。
現在から見れば、広田を戦犯に加えるに足る客観的な証拠はない。
しかし、東京裁判の過程で、弁護人に「無罪」を主張するように諭されて
「戦争について自分には責任がある。無罪とはいえぬ」とこれをはねのける。
その後も、広田は一切の自己弁護を拒んだのである。
彼は戦争裁判によって裁かれるより前に、
どこかで戦争を食い止められなかった自分を裁いていたのかも知れない。
燃え尽きた落日のように、広田はこの世を去っていった。
当今の自己弁護と居直りに終始する、
立身出世主義的、あるいは威信の薄い政治家たちと
この本に出てくる広田弘毅、山座円次郎、尾崎行雄、加藤高明といった
政治家を引き比べてしまう。
政治家に高潔を求める気持ちはないけれど、
今日、ひとりの広田弘毅が政界、官界にあるのだろうかと、思う。
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城山三郎『落日燃ゆ』を読まずして東京裁判は語れない。
A級戦犯も語れない。ということは靖国参拝も語れない。
俺が靖国参拝賛成派なのは,学生時代にこの本を読んだことが
1つの大きな原因だと思う。
いたく感動したので数度繰り返し読みました。
皆様も是非是非。
貴兄に薦められて読んだのかも。
この小説が名作ということは認めつつも、
他方で広田弘毅が政治家として
どんなことをしたか。
この点、半藤一利が『昭和史』で、
城山が広田を持ち上げすぎだと指摘してます。
具体的には、広田内閣での以下の政策について
「とんでもないことだらけ」と指摘してます。
1.軍部大臣現役武官制の復活
2.ヒトラー・ドイツとの防共協定
3.北守南進政策
『落日…』で描かれている広田の人物像や
エピソードの真偽はともかく、政治家としての
広田を評価するならば、やはり半藤の指摘する
ような視点からの評価が必要なんだろね。
保阪の「『靖国』という悩み」って読んだ?
俺はちょっと、ギャップを感じたわ。
『竜馬がゆく』には多くのフィクションが挿入されていますが,それでもあの作品の価値は落ちないでしょう。それと同列に考えています。
保坂『靖国…』は読みました。読後何も印象が残らなかった記憶があります。ま,人それぞれだね~